カオルくんの闘病記

8月1日(木)

早ければ木曜日の10時30分には、HCUから出て病室に戻れますと聞いていたが、それは本当だった。私が病室に着くと、まさに今戻ってきたところで、婦長さんをはじめ5人がかりでカオルくんの移動をしていた。ベッドに移ったところで「なみえ、いるの?」とカオルくん。気づいてくれた。

朝は気力がなく、ごはんが食べられなかったという。昼から挑戦する。メニューはおかゆでした。おいしい、おいしいって食べてホッとする。

夜、ちづちゃんと話をしていると、M先生が若い医師を連れて回診。ドッキリ。手術後初めてお会いする。緊張。「90%取れましたからね」と、先生。私は深々とお辞儀をする。M先生がカオルくんに、「横向いちゃダメよ。上向かなきゃー」と言われる。ハァー、M先生に会えてホッとした。

8月2日(金)

お昼のおかゆがおいしそうで、本当によかった。

夕方、M先生がやって来て「私、明日から1週間休みますけど、後で今後の治療法などお話ししましょう」と言われる。そして、「カオルさん、がんばって治そうね」とカオルくんに声をかけてくれたのです。M先生〜!! ♪よろぴく。頭の痛いカオルくんは横を向いて「ハイ」と返事するのが精一杯。

8月3日(土)

午後2時ごろ、息子のまあきとようきが病院にやって来た。汗びっしょりになって折り紙を出してテープで貼る。楽しそうにしてる。途中、看護婦さんが来てカオルくんの体を拭くことになり、ふたりは食堂へ。

その後、ベッドで休んでいると、カオルくんの大先輩だというKさんがお見舞いに来てくれる。カオルくんから話を聞いていたので、すぐわかった。Kさんとひと言、ふた言交わすうち、カオルくんは「一番お世話になった人」と言って泣いてしまったのだ。びっくり。カオルくんが泣くなんて初めてだよ。

「よかったじゃない。Kさん来てくれてよかったネ。握手してもらったら」と言い、病室で撮影をする。ありがとうございました!! Kさんをお送りして部屋に戻ると、カオルくん「カッコ悪いけど」と言う。「ちっともカッコ悪くないじゃない。周りをオロオロさせないし」カッコいいよ、カオルくんは。周りが明るくいられるのは、本人が明るいからだよ。

手術後初めての車椅子に乗ってみようということで、それで息子ふたりが待つ食堂へ。きょうは息子たちとたくさん話せた。

8月4日(日)

息子のスイミングの合間、駅近くの書店で“全国の名医”を立ち読み。脳外科の項目でT大病院のM先生発見!! ♪ 悪性腫瘍、免疫治療……となっていて、昭和32年生まれだった。すごいじゃん、やったネ!! M先生♪ 午後2時に病院に着く。そのことをカオルくんに話すと、へぇーって嬉しそうだった。

夜ごはんは、スプーンで器用にすくってひとりで食べた。

8月8日(木)

午後、術後初めてのシャワー。手術前、一度シャワーを浴びたのでわかってはいたが、あれぇ? エプロンずり落ちてビショビショ。カオルくん、便秘のため、おなかポッコリ。妊娠8か月って感じ。戻ってお昼寝。私もベッド脇でお昼寝♪

8月10日(土)

午前11時30分、病院着。
カオルくんの頭痛が治まらず心配だ。昼食後、一緒に高校野球を見る。神奈川代表の桐光の試合、ゼロ行進のまま延長戦。シャワーは何時にする? ということになり、野球を見てるならと、午後2時30分にする。塁に出ても挟まれたり、凡打でお互い点が入らず。と、桐光がランニングホームランで3対0。やったー!! カオルくん、えっ? 泣いてる。涙ぐんでるのでびっくり。闘ってる自分と重なっちゃったの? こんなに見たの初めてっていう涙にびっくり。

勝利ですっきりシャワー。慣れてきて私、濡れずにすんだよ。その後、食堂でしばらく過ごし、術後初めてカオルくんが自分で電話をしていた。

8月11日(日)

息子ふたりを連れて病院へ。ふたりともカオルくんの頭の傷を見ても、びっくりしていなかった。何も言ってなかった。

午後、気分転換に1階まで降りてみた。カオルくんは、あまり気乗りしてなかったけれど、食堂にも行ってみた。相変わらず口数少なくてさみしい。

8月12日(月)

入院以来2回目のお休みとする。しかし様子が気になってたまらない。今日よりリハビリが始まったそうだ。まずは、モノをつかんで穴にいれるなど、手先のリハビリ。

きょう病院にカオルくんを見舞ったちづちゃんが、私にメールをくれた。カオルくんに「なみちゃんが来ないとさみしい?」と聞くと「さみしい」と答えたって。聞きたかったな。

8月13日(火)

午前中、N先生(男性)によるリハビリ。文字を書いた。昼食後シャワー。午後、T先生(女性)によるリハビリで、感覚調べや平行棒つかまり歩き。このT先生は11年前もカオルくんの担当だった。カルテを見て驚く。

8月16日(木)

カオルくんが大好きなサイモン&ガーファンクルの曲を、病院で聴けるようにテープに録音することにした。録音に何度も失敗して、何時間もかかってしまう。午後3時前に病院到着。リハビリ室へ向かう。「自分で歩いてもらわないと」と、先生は意気盛ん。

カオルくんの両親が病院に到着。全員揃ったところで、M先生からの説明となる。まず手術で取れた部分、残った部分を写真で説明。病名は骨が腫、悪性。抗がん剤は「1週間投与の3週間休み」を3セット行なうとのこと。もしかしたら、歩行は無理かもしれないとのM先生の言葉で、カオルくんはかなりショックを受けた様子。

8月17日(金)

何度、この胸の苦しみを味わわなければならないのか。苦しくて苦しくて、朝方うなってしまった。頭も痛い。少し涼しくなったなか病院へ。

普通にお昼ごはん食べ終えていた。

8月20日(火)

リハビリ。カオルくん、平行棒つかまり歩きを8往復。がんばっていて嬉しかった。

8月21日(水)

たくさんの友人が面会に来てくれた。

8月22日(木)

カオルくんの会社のSさん、人事のT課長さんが病院に来てくださり、3人で食堂で話す。おふたりとも話しやすい方でホッとした。医療の給付、休職のこと、復職のことなどいろいろ話してくださった。

リハビリは歩行器を使い、カオルくんは少し歩いたが、リハビリの先生は思案中のようで、あっという間の短い時間。で、もうおしまい? 納得いかなかった。今度は会社のMさんが面会。カオルくんと仕事の話をしていた。

8月24日(土)

昨日は、CT検査があり、その後吐いてしまったと、看護婦さんに聞いた。今朝、朝ごはんは食べられ、大丈夫だったが、お昼ごはんは食が進まず、おかゆはなんとか食べた。

15時すぎK先生が病室に来て、「明日から抗がん剤の投与を開始します。まず1日目は輸液といって、体に必要な栄養分が含まれた水を1リットル体内に流します」と言われる。そして、「薬は月曜から金曜日の5日間、24時間の点滴になります。その後、3週間は何もないので、ご自宅へ帰られても結構です」と言った。

8月25日(日)

きょうカオルくんは、朝ごはんは食べられたようだ(昨夜の夕飯はダメ)。

おかゆと白身魚のソテーのお昼ごはんは、ゆっくりとだがなんとか食べることができた。抗がん剤投与の前にたくさん食べておいてほしかったのに……。シャワーは気持ちが悪くてダメとなった。その後、輸液の点滴を始めた。

8月26日(月)

妹のちづちゃんが、19時15分〜20時45分に面会。私が病院につくと、カオルくんは車椅子に座り、ゆっくりと夕食を食べていた。7割くらい。

私が病院から帰る頃、カオルくんは気分が悪そうだった。

8月27日(火)

病院に着くと、昼食が手つかずのままになっていた。昨夜から抗がん剤の副作用で、嘔吐が始まっていた。動くだけで気持ちが悪いという。午前中、ベッドの上でリハビリ。

けさから目の焦点が合わなくなる。右目が泳いでいる。

8月28日(水)

10時前に病院到着。病室へ向かう廊下でM先生に会う。
会釈だけで終わってしまいそうな先生に歩み寄り「目の動きががおかしいのですが……」と訴えると「腫瘍が大きくなっているのかもしれない。きょう、MRIの検査をしますから」との返事。

昨日の昼の薬は吐かなかったけれど、その後、吐いたという。とにかく水すら口にするのが怖いという。昼食にはまったく手をつけず。
2時前、妹のちづちゃんが来て、ヨーグルトを食べさせると、なんとか食べた。
3時近くMRIに行ったため、ちづちゃんと帰宅。

8月29日(木)

昨夜の夕食は4割がんばって食べたが、吐いてしまったという。今朝は4割食べる。

昼のうどんは、がんばって食べたがすぐに吐いてしまう。朝、M先生が「奥さんいます?」と聞いてきたという。看護婦さんが「薬がよく効いてますよ」という。MRIの結果は悪くなっていなかったということか。夜、頭の水を注射でとったそうだ。

8月30日(金)

昨夜ごはんの2割を食べるが吐く。朝、がんばるも吐く。
昼食はおかゆを離乳食分ど食べる。

8月31日(土)

1クールめの抗がん剤治療は終わったが、点滴を追加。点滴は夕方終了したが採血の結果、また追加。食事はがんばると吐いてしまうらしい。9月より治療のチーム編成が変わり、I先生が離れるそうだ。頼りにしていた先生なのにショック。でも、新しいT先生(女性)は、話しやすかった。

夕飯のおかゆ、大さじに大盛り1杯。ヨーグルトはがんばって食べるも吐いてしまった。
3週間の休みは栄養と水をたっぷりとって、投与の間は無理しないほうがいいね。