手術の経過および抗がん剤治療データ

手術日および時間

7月30日 13時15分から21時35分
※正味8時間20分。ただし、麻酔から覚醒する時間、手術室で待ったので病棟(HCU)へ戻ったのはもう少し後。

手術部位

小脳

病理の結果

芽腫(ずいがしゅ)Medulloblastoma of Csrebellum
※子供に多い腫瘍で、成人にできるのはたいへん珍しい。

化学療法について

薬剤の名称
(1)ラステット(エトポシド;VP16)……腫瘍細胞のDNA切断障害
(2)ランダ(シスプラチン;CDDP)………腫瘍細胞のDNA合成阻害・細胞分裂阻害
(3)イホマイド(イホスファミド;IFM)…腫瘍細胞のDNA合成阻害

投与量
身長・体重から体表面積を計算して、それぞれの使用量をきめます。カオルさんの場合は、ラステット(エトポシド;VP16)112mg、ランダ(シスプラチン;CDDP)37mg、イホマイド(イホスファミド;IFM)1.69mgを1日あたり使用。それを5日間使用。

手術前・手術後のMRI画像


左側が手術前に撮ったMRI(磁気画像診断)画像です。大脳の部分に白く見えるのが腫瘍です。右側は手術後。切除されたところが黒く見えています。右側上部の黒い腔の部分は、10年前にできた腫瘍を切除した痕です。


脳はどんな器官?

脳は頭蓋骨でできた頭蓋腔(ずがいこう)という容器に、脳膜に包まれておさめられています。脳は体重の2パーセントの重さしかない臓器ですが、その脳が生きていくためには、心臓から送りだされる全血液の量の15パーセントを必要とします。また栄養素は、ブドウ糖しか利用できず、しかもそれを完全に利用するためには、呼吸で取り入れる酸素の20パーセントが必要です。

脳は神経細胞の集合体で、 認識、記憶、思考判断、運動や臓器の働きの制御など、生きるためのほとんどすべてを司っています。さまざまな役割を果たす神経細胞が、脳の決まった位置に存在しており、この神経細胞は人間が生まれてから死ぬまで働きます。もしその神経細胞が破壊されると二度と再生しないので、その機能や役割も失われることになります。

悪性脳腫瘍とは?

脳にできる腫瘍は、全身に発生する腫瘍の約10パーセントに相当します。しかし、すべてが悪性ということではありません。現在は、良性のものから、他の臓器にできるがんのように悪性のものまで、20数種類の腫瘍が知られています。

悪性脳腫瘍は、他の臓器にできるがんのように、周囲の組織に浸潤(がん細胞が周囲の組織に拡がっていくこと)しながら発育し、その発育速度が速く、周辺へ転移する可能性があるものを言います。そして、症状が出れば死にいたるという経過を示すもので、脳腫瘍全体の約40%を占めています。

原発性と転移性の脳腫瘍

悪性脳腫瘍には、(1)成人に発生する「神経膠芽腫(しんけいこうがしゅ)」や「悪性星細胞腫(あくせいほしさいぼうしゅ)」(2)小児の小脳に発生する「髄芽腫(ずいがしゅ)」(3)脳が発生するときに、他の細胞があやまって入り、それが腫瘍化した「胎児性がん」や「絨毛(じゅうもう)がん」、さらに(4)血液成分のがんである「悪性リンパ腫」が脳に発生するものがあります。また、まれに良性脳腫瘍が経過中に悪性化する場合もあります。

これらは、いずれも脳に最初に発生する原発性悪性脳腫瘍であり、人口10万人に対して6〜7人程度の発生率です。これに対して、脳以外の臓器に発生したがん、とくに肺がんや乳がんなどが、血液を介して脳の中に転移する腫瘍もあります。これを転移性脳腫瘍といいます。

(参考文献・『がん 予防・検査から手術まで』時事通信社刊)