Vol.25 「デビュタント参加体験記」その7〜いよいよデビュタント当日

日本からのデビュタント3人にとって、泣いても笑ってもどうにもならない舞踏会当日がやって参りました。私にとっても大事な日です。デビューダンスのレッスンから見守ってきた彼女たちが、舞踏会のオープニングセレモニーで踊る姿を見るのは、まるで自分の「娘」たちを送り出すにも似た気持ちなのです(本当の子供を持ったことはございませんが)。

控室の窓から見えた、市庁舎の塔。
ラートハウス(市庁舎)が美しくライトアップされる頃、デビュタントたちは本番の服装(白いドレス・白い手袋・白い靴)で6時に舞踏会会場に集合。これからゲネプロというリハーサルが行われます。関係者のみが入れる開場前、私もマティス先生の取り計らいにより会場入りしました。

デビュタントたちの着替え室であり、クローク兼控室までは、ラートハウスの入口から“裏動線”を通っていきます。途中何か所か案内の紙が貼ってはあるものの少々わかりにくく、ようやくたどりつくと我らが日本人デビュタント3人も到着済み。ところが1人が体の具合が悪いというのです。以前にもデビューダンスレッスン中に不整脈が出て大変心配したことがある、Mさんです。驚いて聞くと何と今回は、「昨日の夕食の中の鶏肉が、少し生だったかも……」というのです! 可哀そうに、今日は薬も飲んだのに何度もトイレへと、すでにぐったりな様子でした。けれども舞踏会はあと数時間後。今日のためにレッスンを一生懸命受けてドレスも日本から持参し、楽しみにしてきたのだから「倒れても絶対に出ます!」の彼女の気持だけが救いなのですが、“保護者”の私としては、大いに心配です。

「ドレスのここ、大丈夫かな?」ゲネプロ(リハーサル)を前に、お互いにドレスチェックです。
控室には続々とデビュタントたちが到着し、着替え始めています。私も王宮舞踏会でデビュタント参加した時に驚いたことなのですが、このような場合、スペースが男女別になっていません。それでも彼らは平気で着替えているのです……複数の男性の近くで下着姿になるなど、日本人女性なら間違いなく抵抗がありますが、若いからなのか、そもそもヨーロッパはそのようなことを気にしない文化なのか? いまだに、答えはわかりません……。

そんな現地デビュタントたちの横で、大和撫子3人はやはりお互いに隠し合いながらドレスに着替えます。すると今度はSさんが、「この数日でサイズが合わなくなっている!」と言うのです……。慌てずに、手持ちの安全ピンを集めて何とか“即席サイズ直し”です。