Vol.23 「デビュタント参加体験記」その5〜体力を使い切ったダンスレッスン

デビュタントたちのレッスンも3日目。午後には、学校を終えたパートナーの男性たちもやってきて、カップルとなって一緒に練習です。まずはポルカ一曲全部を、新しい振り付けで練習。実際の舞踏会では数十組が踊りながら曲に合わせて次々と、列になったり輪を作ったりと形を変化させていきます。それを口頭で説明されながら、形を想像しつつ、3組での練習はなかなか難しいものがあります。けれども「難しい」も「恥ずかしい」も言っている時間はなく、とにかくどんどん覚えていかなければならないのです。「レッスン通訳・兼先生の助手」の私は、急きょカメラウーマンに変身……。勉強熱心なデビュタントの皆さんからのリクエストで、後でホテルの部屋で復習できるようにと、デジタルカメラでダンスレッスンを録画しました。3人分3台。椅子に登ったり場所を移動しながら、大忙しです。

本番を2日後に控えての、デビューダンスレッスンの様子。
ところで2008年は、6月にオーストリアとスイスでサッカーの欧州選手権が開かれるため、失礼ながらオーストリアチーム自体は強くないながらも、前年からすでに結構な盛り上がりでした。そして意外にも、その波及が舞踏会にも……。今回の「花の舞踏会」オープニングでデビュタントが踊るポルカの振り付けにも、サッカーの要素が色々と含まれていたのです。

例えば通常は、デビュタントたちは入場するとカップルで手に手を取って整然と並び挨拶、そしてデビューダンスが始まるのですが、今回の演出はなんと、ピーっという笛の合図でデビュタントの男性たちが、「ワーッ」と言いながら走り込み……さながら、サッカーの“キックオフ”です。途中ではイエローカードが男性のポケットから取り出されたり、さらには女性が自分のパートナーの男性にレッドカードを突きつける……クラシック曲に合わせているとは思えない、そんな振り付けまであったのです。観客には「笑う場所」なのですが、当のデビュタントの皆さん、タイミングを曲に合わせることで頭が一杯、笑う余裕などなく、真剣そのものなのでした……。

途中の休憩もそこそこに、2コマのレッスン後半には少しウィンナーワルツの曲も練習したので、デビュタントの皆さん、へとへとになってダンスレッスン1回目は終了したのでした。舞踏会はすでに、2日後に迫っています。