Vol.33 「歴史息づくお城のプリンセス」その4〜プリンセスのお話

ご先祖の肖像画の前のプリンセスと私。私もワンピースでおしゃれをしてうかがったつもりでしたが、プリンセスには圧倒されました。
数百年に渡りヨーロッパ史の中心であったハプスブルグ家。その末裔であるプリンセス・アニータ・ホーヘンベルグをこれまで、お城に二度、訪問致しました。最初に訪問したときは、お城の中の博物館と祖先の墓所を一緒に見学させていただきました。二回目の訪問時には、イギリスに留学中でたまたま帰国されていたプリンセスのご子息もランチにご一緒していただくという、うれしいサプライズがありました。

プライベートルームでプリンセスが語ってくださったお話は多岐に渡っていました。たくさんの、しかも中身の濃いプリンセス語録の一部を、少しご紹介しましょう。

「私はこの国で、このお城でいろいろな国からの若い人たちの訪問を受け、博物館で歴史のことをお話しします。また、ヨーロッパ・オーストリアの私たちの“生き方、暮らし方”を示していくことを、自分の大切な仕事と思っています」

「学生たちの世代の交流を奨励し、そして若い人たちには、他の文化の人、歴史にもっと興味を持ってもらい、世界に向けて心を開けるようになっていただきたいのです」

「歴史は、それを正しく理解した上で、先祖たちのしたことを判断し、私たちは今後に生かしていかなければなりません」

「その意味でも、歴史を学ぶということは常に、“大きなところ”から、今ある“小さいところ”を学ぶべきなのに、今の教育は小さなところから始まっている。大きな視点を見る目を養っていません。これはとても問題です」

「人間は、野菜ではないから、教育を受けるべきです」

「どんな国も、戦争という過ちにおいては同じことをしてきていると言えます。けれどもそれらがなぜ起こったのかということを知ることが、とても大事なのです。私は自分の子供たちにも、そのような教育をしてきています」

マプリンセスが私にお話をしてくださったお部屋。

「日本の若者たちはあまり歴史には興味がないのですか? 例えば第二次大戦ですらもう60年以上も前のこと。そしてこのお城の博物館はもっと遠い昔の記録が保管されています。けれども歴史には必ず、“必然の帰結”あるいは“因果関係”があるということの認識を、私たちはここで伝えたいのです」

「私が次の世代に伝えていきたいこと、それは“過去に敬意を払うこと、未来を重んじること”です。そうして初めて、“今”から出発することができるのですから」


……歴史は単に過ぎ去ったものではなくすべて、現在に生きる自分たちに繋がっているということを、日常生活の中で私たちはあまり意識していないものです。文章にしてしまえばごく短く、シンプルですが、ご自分の先祖が歴史に密接に絡み合ってきたという事実を考えながらその上に生きてこられたプリンセスならではの、奥の深いメッセージと、受け止めていければと思っています。