Vol.19 「デビュタント参加体験記」その1〜市庁舎で開かれる「花の舞踏会」

ライトアップされた姿が美しい夜の市庁舎。手前の広場ではクリスマス市で賑わっています。
ウィーンの冬は寒く、街をゆく人々は帽子を目深にかぶり、日本のコギャル(ってもしかしてほぼ死語ですか?)のように、短いスカートから素足を出す女性などもちろんいません。かく言う私も東京ではほとんど帽子などかぶらないのですが、ただでさえ寒がりの私、冬のウィーンでは“完全防備”の服装で歩いております……。おしゃれや流行より、まず防寒対策、というわけなのです。

そんな冬のウィーンは舞踏会シーズン。週末ともなると市内のあちこちで舞踏会が開かれますが、数ある舞踏会の中でも美しいひとつといわれているのが、ラートハウスで開かれる「花の舞踏会」です。ラートハウスとは“市庁舎”。100年以上の歴史を持ち100メートル近い尖塔が立つ、ネオゴシック建築様式の市庁舎とはいえ大変美しい建物です。夜になるとライトアップされ、さらにその姿が美しく浮かび上がります。市庁舎前広場は、クリスマス前には毎年クリスマス市で賑わい、冬はスケートリンクが出現。春には大きなスクリーンが設置されて音楽祭が開かれたりなど、市民の憩いの場所でもあります。

クリスマス市でみんなが飲むのが……温めたワイン! ウィーンならではの習慣です。
内部も、オープニングセレモニーの行われる大ホールは、広さこそ王宮のものよりは小ぶりなものの、シックな装飾の内部は美しく趣があります。そこで開催される「花の舞踏会」は、今年で86回という歴史を持つ格式のある舞踏会で、その名の通り、会場の至るところがお花のデコレーションで美しく装飾されます。この舞踏会に今年、日本から3名の女性が「デビュタント」として参加いたしました。

デビュタントとは、貴族文化華やかな中世の頃より、王侯貴族の子女が舞踏会で社交界にお披露目をした、その伝統が受け継がれたものです。共和国となったオーストリアでは、現代でこそ“王侯貴族の”という限定は例外を除きなくなったものの、デビュタントとして舞踏会に参加するためにはやはり、さまざまな資格があります。

それでは次回から日本人デビュタントたちの奮闘ぶり(?)を、素敵な「花の舞踏会」と共に、ご紹介して参ります。