Vol.02 モナコへの道

涼しくなった7月下旬、ウィーンに滞在していた私は、舞踏会当日にニースよりバスでモナコへ向かいました。しばらく走ると、バスが行く道は、断崖の上。頬杖をついていた眼下には、濃い色の海が広がる美しい光景が現れました。

その先には、モナコ。あまりにもたくさんの豪華なクルーザーやヨットが停泊する港などを車窓に見ながら、モンテカルロ地区へ。そこはパリのオペラ座設計者、ガルニエによるグラン・カジノ、贅を尽くしたホテルの数々、超高級ブランドブティックなどが立ち並ぶ、モナコと言えば、のシンボルですね。

それら重厚な建造物の人工的な美しさと、広場の噴水や花壇、背後の山、そして紺碧の地中海などの自然とが調和し、まるで映画のセットかテーマパークにでもいるかのような感覚さえ起こさせる、不思議な空間となっています。

そして夜になると建物は美しくライトアップされ、さらに夢のような世界を作り出すのです。もちろん……モンテカルロは社交界の人びとも多く集まる場でもあります。

モナコ社交界……人口約3万人の中に世界中からの億万長者や上流階級の人たちが集まっているというモナコでは、小さいながらも、よいコネクションができるのだと聞いたことがあります。そしてそんなネットワークを作り、それを楽しむ機会としてのパーティーの最高に位置しているのが、ガラディナー、舞踏会なのです。

夜のオテル・ド・パリ。
F1グランプリで有名なヘアピンカーブを少し上がったところでバスを降り、オテル・ミラボーへ。前回は、モナコを代表する名門ホテル、オテル・ド・パリでしたが、同じくモナコのカジノや超高級ホテルを運営するSBM系列のホテルに滞在することが、私が赤十字舞踏会に参加するにあたっての、条件となっていました。

チェックインして部屋に入ると、すぐに他のホテルに滞在中の、舞踏会へ同行する知人と連絡を取り、今夜の出発時間を打ち合わせて、舞踏会に着るドレスも忘れずにクローゼットへ。それからようやく少しの休憩……ウィーンの舞踏会へ毎年参加するようになってから知った、このモナコでの舞踏会に、参加できることになるまでの、憧れていた数年間に、思いを馳せていました。