デンマークの人は、食べることを何よりも大切にする。人生の大きな節目である洗礼、婚約、結婚などは、必ずごちそうでお祝いをするが、そのときの食事のメニューは、この国の人にとって重大事であるらしい。
たとえば、結婚式。招待された者同士、20年経っても「あのときのデザートは、うまかったなあ」……などと話し合う。
物事の評価は思いっきり“食”に偏り、「あそこの家の葬式は立派だったが、食事がいまひとつなあ……」とか、「美人だけど、料理がへたじゃね」といった会話が、そこかしこで飛び交う。デンマーク人は北欧5か国の中で最も愛想がよく寛大で、食事に人を招いたり招かれたりするのが大好きな国民だという。


アンナさん写真

今回、私たちに自慢の料理の腕をふるってくれるのは、コペンハーゲンに暮らす、フリーランス・デコレーターのアネッテさん。現在40歳で、『ロイヤル・コペンハーゲン』に勤務する夫、と15歳、20歳のふたりの息子がいる。


コペンハーゲンから北に15〜20km。HOLTE(ホルテ)という高級住宅地に、その日、私たちの訪ねた家があった。実はこの家の主、アンドレアス・ミッケルセンさんが、世界的に著名なデザイナーであることを知ったのは、家にお邪魔してからかなり時間が経ってのことである。“アネッテさんの友人の家”といった程度のとらえ方で、気楽に敷居をまたいだ私たちは、一歩家に入った瞬間に「ふつうの家とちょっと違うぞ」と思った。

広い居間の天井には、ピラミッド型の天窓があり、太陽の光が降り注ぐ。部屋から部屋を繋ぐ白木の床の回廊は、壁に絵画が飾られ、ギャラリーのように見える。もともと北欧の人々の、優れたデザインセンスは有名だ。どの家庭でもインテリアに凝ることは知られていたが、この家はそんな一般家庭のレベルを超え、極めて独創的だった。

とても気さくで、少しおちゃめな家主、ミッケルセンさんの正体は、アネッテさんが明かしてくれた。アンドレアス・ミッケルセンさんは、銀製品で世界的に有名な『ジョージ・ジェンセン』の元社長であり主任デザイナー。『ジョージ・ジェンセン』が『ロイヤル・コペンハーゲン』と合併してからは、両ブランドのアートディレクターとして活躍し、時計や食器のデザイナーとして、世界にその名前を轟かせている。

室内
室内

ミッケルセンさんの仕事場兼居間は、天窓がポイント。白木を組んだ屋根はピラミッド型になっており、ミッケルセンさんに言わせると「天からのパワーを授かる造り」だという。右は仕事部屋からダイニングに続く廊下で天窓から光が入り、壁に絵画が並ぶ様子はまるでギャラリーのよう。



ミッケルセンさん自身がデザインしたというその家で、2部屋続きのキッチンは、特に凝ったというご自慢のスペース。「1日のうちで、最も長く過ごす大切な場所だから、いちばん手をかけたんだよ」と、ミッケルセンさん。第2キッチンにも2つのシンクと収納スペースがあり、壁際には超大型冷凍冷蔵庫が据えつけられていた。

食を大切にするデンマーク人にとって、ダイニングルームの重要性もキッチン同様大きいのではないだろうか?その質問をアネッテさんにぶつけてみると、「デンマークには“見た目は味の半分”という言葉があるんです。つまり、盛りつけ次第で料理の味が決まるという意味で、主婦は料理と同じくらい、食卓の雰囲気づくりに手をかけるんです」

食卓には花を欠かさず、テーブルクロスやナプキンをコーディネートする。食器は本当にお気に入りのものを、毎年少しずつ買い揃えてゆく。それがデンマークの人々の暮らしかたなのだと、アネッテさんは言った。


キッチン

設計もインテリアもすべてミッケルセンさん自身が手がけた、デザイナーズ・キッチン。充分すぎるほどの広さがあるのに、隣接してもうひとつ「第2キッチン」がある。外光がたっぷり入る窓と、広い作業スペースが自慢で、ミッケルセンさんは、一日のかなりの時間を、ここで過ごすと言う。


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チーズ

北欧屈指の酪農王国といわれるデンマークの特産品は、合理的で効率のいい農場から生み出される食肉や乳製品。だからこの国の郷土料理は、肉やベーコン、ハムなどの加工品や乳製品をたっぷり使ったものが多い。皮をかりかりに焼いた豚肉のローストフレスケスタイ、合い挽き肉使用のデンマーク風ハンバーグのフリカデラ、レバーペーストなどが美味として有名。





アクアビット

アルコール度42%のアクアビットは、北欧の誇る銘酒で、「生命の水」と言われている。






にしん

デンマークの食卓には欠かせない生のニシン。1尾あたり約300 Kcalの熱量とたんぱく質約32gを含むこの魚は、冬の厳しい北欧の大切な栄養源だ。








舌平目のバターソテー
Sole fish with new potatoes,
green beans and butter gravy


料理イメージ

デンマークの家庭で日常的に食卓に上がるのはニシンやサケ。舌平目は特別な日のごちそうになる。ソールと呼ばれる舌平目は、全体に脂肪分が少なく、ビタミンB2がたくさん含まれている。皮が固いので皮をむき三枚におろして使う。

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