第5回
私は自己破産が可能なのか。
それについては「自己破産マニュアル」的な本を購入しても、まったく分からないままだった。けれど自己破産の手順や方法については、2冊の本を読むことによってかなり理解することができた。

一口に自己破産と言っても、不動産や株などの財産を持っている人がする場合と、財産を持っていない人がする場合ではその手順が変わってくることも分かった。また自己破産は「私は破産者です」という申し立てを裁判所にして、「あなたは確かに破産者です」と裁判所が「破産宣告」することを指し、それだけで借金がなくなるわけではないということも初めて知った。

自分が持っている借金をなくすには、破産宣告されてから1か月以内に「免責申立」というのをして、もう一度裁判所から免責決定を受けなければならない。免責決定がなされて初めて、借金の返済から免れることができるのだ。

私は別に裁判所から「破産者」と宣告されたいわけでなく、借金の返済から免れたいのだから、私が自己破産として認識していることは、どちらかと言えばこの「免責申立」の方だったのである。

多重債務者で、借金の返済が不可能であれば「自己破産の申立」をした人のほとんどが破産宣告を受けられるらしい。そして破産宣告を受けたうちの8〜9割方は免責になると本には書いてあったが、私が知りたいことは「自分はその9割に入れるのかどうか」ということである。

本には300万円以下の借金額では自己破産の前に他の方法(債務整理など)もあると書いてあったり、収入に対し借金額が3倍あれば自己破産できるとなっていたりして、具体的には分からないままだ。

また不動産や証券などの財産を持っていた場合、それらの財産を管理する「破産管財人」という人が間に入り、財産を整理させられるのだが、破産管財人が入るかどうかの目安も曖昧だ。破産管財人が入った場合、管財人に対して50万円ほどの支払いが発生するため、財産が50万円以下ならば管財人は入らないだろうというのが目安と言えば言えるかもしれない。

破産宣告を受けると、いくつかのデメリットもある。
ひとつは弁護士や税理士などある種の資格や、教師などいくつかの職業を失うこと。他人の後見人や遺言執行人、株式・有限会社の取締役や監査役などにはなれず、現在やっている場合は退任事由になる。破産管財人がついた場合は、勝手に旅行をしたり引越しすることができない、などといったいくつかの制限もつく。

他のデメリットと言えば、市町村役場の「破産者名簿」に名前が記載されることと、官報で告知されることだが、これらは一般の人が見ることはほとんどない。しかも資格や取締役・監査人などの失効も破産者名簿への記載も、免責決定が降りた時点でなくなるため、すべての処理が終わる数か月の間の問題に過ぎない。どちらにしても、これらは私にとってあまり関係ないと言えるだろう。

唯一残るのは信用情報機関のブラックリストには5年〜7年間名前が残るので、新しくクレジットカードを作ったり、借金をすることが不可能になるということだけだ。

実はこのことは、私が長い間、自己破産をしなかった理由のひとつでもある。カードを持っている以上、手元に現金がなければ買い物に使ったり、キャッシングしてしまうのだから、カードを捨ててしまえということはいろいろな人から何回も言われていた。しかし当時の私は収入が極端に少なく、借金返済も大変ではあるものの、カードを使わなければ生活が成り立たないという有様だったのだ。

これ以上借金が増えてはいずれ首が回らなくなることは重々承知していたが、その場しのぎであろうとも、キャッシングや買い物などができるカードを失うわけにはいかなかった。

現在電話や電気が止まるまで光熱費の支払いが出来ないのは、収入のほとんどを借金返済に充てているからに他ならない。もちろん、フリーライターという定収入を持たない職業である以上、何かの時に使えるカードを持てないことはきついが、すでに使えなくなっているに等しいカードを持ち続けている意味もない。

何よりも今現在、収入のほとんどを借金の返済に充て、光熱費も家賃も払えない状態では、仮に自己破産しなかった場合にとるべき道が他にあるのだろうか。一番の方法は収入を上げることだが、そんなことがすぐに出来るくらいならば、ここまで借金を重ねることもなかったであろう。

何回も繰り返し本を読んだ私は、自己破産するメリットとデメリットを知って、いずれにせよ自己破産の準備を進めてみようという結論に達した。