
Kimono Master 山龍
|
|
プッチ風ファニーコーディネイト
着物:京鹿の子総絞り・楓(きょうかのこそうしぼり・かえで) 帯:本金本漆暈繝本綴れ・横段(ほんきんほんうるしうんげんほんつづれ・よこだん)
ヴェルサーチ風ゴージャスコーディネイト
着物:本真綿紬だんまる暈かし・蔦(ほんまわたつむぎだんまるぼかし・つた) 帯:本金畔織色駒刺繍・重文雲竜(ほんきんあぜおりいろこまししゅう・じゅうぶんうんりゅう)
エルメス風シックコーディネイト 着物:黄金繭糸唐織放紋着・横段(おうごんまゆいとからおりほうもんぎ・よこだん) 帯:リヨン・ビロード刺繍捻金袋帯(リヨン・ビロードししゅうねんきんふくろおび) |
Kimono Mastar=日本一の作り手の言葉は、やはり説得力が違うのであった。
ヴェルサーチ風かエルメス風か?
こうやって、巷に蔓延する着物選びの間違いを並べていくと、自分も含めて、いかに着物に対する知識に無頓着だったかがわかる。洋服を買うときは、まずファッション誌をチェックして流行を知り、買いたいものをリサーチし、ブランドや色まで絞り込んでショップに行くのに、着物に関してはそれをしない。いや、できないのかな……。「参考になるような本もないし、リサーチしようがないから、脳死状態やな(笑)」
笑いごとではありません! すると、山龍極めつけの、最後の間違いチェックが入った。
その四
「色や、目的もそうやけど、着物を着てどんな風に見えたいのかを、店の人にハッキリいわなアカン」
しかし、それが結構難しいのである。「かわいく」とか「きれいに」などという抽象的な表現では曖昧過ぎるし、ヘアサロンのように、モデルの写真の切り抜きを持っていくわけにもいかない。洋服だったら、アルマーニっぽくとか、ベルサーチっぽくという表現でイメージを伝えられるんだけど、というと、意外な返事が返ってきた。
「それでええよ。ブランドのイメージでいってくれたら、テイストがわかりやすい」
もちろん、洋服と和服では表現する世界観が違うが、ブランドからイメージする雰囲気は、着物でも表現できるというのだ。それではと、今回このコラム用に、『エミリオ・プッチ風ファニー』『ヴェルサーチ風ゴージャス』『エルメス風シック』の3つをテーマにしたコーディネイトをしてもらった。(写真参照)
山龍テイストを踏まえた上でのコーディネイトなので、デザイナーの差ほど極端な差はないけれど、プッチ風は、総絞りの大きな楓の葉がファニーだし、ヴェルサーチ風は、ゴールドの龍の帯がいかにもである。そしてエルメス風は、上質の素材感の漂うシックな世界と、なるほどの仕上がり。特に、山龍の本領発揮の世界といえば、本物の素材と職人の技に裏打ちされたメゾンの逸品志向なので、エルメス風のコーディネイトは、思わず目を奪われる素晴らしさであった。これなら、和風『エルメスを来た女神』も夢じゃない。
しかし、当然、金額もエルメス風、いやそれ以上かもしれないわけで……。
よし! 着物選びの達人を目指して指南を受けつつ、今年は絶対宝くじを買うぞ!
(2007.1.1)
- 第4回 奇跡の着物 >
- < 第2回 呉服屋は怪しい