よりどりみどり〜Life Style Selection〜


スカーフギャラリー

知り合いの家に遊びにいったとき、玄関に飾られた大きな絵が素敵なのに感動したことがある。「誰の絵ですか?」と聞いてみると、それはなんと、スカーフを額装したものだった。近くで見ると、確かにシルクのスカーフ。そういえば、エルメスのショップでは、必ずその年のテーマの柄のスカーフが、白木の額にはめ込まれている。いつも、素敵なディスプレーだなとは思っていたけれど、こうやって自分の家に飾るという発想はなかった。これは、いただき!

エルメスはもちろんのこと、ヨーロッパブランドのスカーフは、芸術的で素晴らしい柄のものが多い。一目見て気に入り、それが似合う服なんて持っていないのに、思わず衝動買いしてしまったものが、ウチにも数枚ある。ときどき広げて、ああ、やっぱり素敵! なんて眺めているのだけだったけど、ついに日の目を見るときが来たのだ。

さっそく床に何枚か広げてあれこれ悩んだ末に、フェラガモのひまわりの柄のスカーフに決めた。落ち着いた黄色と草色のバランスが、グリーンをベースにしたリビングに合うはず。さて、問題はこれをどこで額装してもらうかだ。

額装というのは、絵に精通していない私にはほとんど未知の世界だ。それでも、絵画は額も含めて一つの作品で、そこにはプロの感覚が必要であることや、かなり高額であるということは知っている。しかしどう考えても、免税で2万円で買ったスカーフを額装するのに、2万円以上は絶対かけたくない。かと言って、kinko'sや東急ハンズでやっているような、パネルみたいのは安っぽすぎる。ロートレックやダビンチを飾る、あのオブジェの様なゴージャスな額なんかいらないけど、それなりに素敵な額に入れなきゃ、せっかくのフェラガモがかわいそうだ。

どこか、安くてセンスのいい額装屋はないものかと、人に聞いたりしている内に、そのまま半年ぐらい過ぎてしまった。当初の熱も冷め、スカーフのことなんて忘れかけていたある日、新聞の折り込みチラシに、原宿の額装屋の小さなチラシ広告が入っていた。B5ぐらいの小さなチラシだったので、普通ならスーパーのバカでかいチラシに埋もれて気づかないのだが、そこに掲載されていた、バイオリンの額装が目にとまったのだ。『額屋ロッシュ』というその店は、絵や写真だけでなく、お皿とかバイオリンといった立体物も額装してくれる店だった。どんなものでもご相談くださいというコピー。金額も意外に安い。これこれ、探していたのはこういう店よ!

スカーフを片手に、表参道から少し入ったところにあるその店に行った。小さいけれど、ガラス張りの洒落た店の入り口には、いろいろな額装のサンプルが飾ってある。中は工房のような感じで、モールディングと呼ばれる額縁にする棒がたくさん立てかけてあった。作業をしていた店長らしき方にお願いできるかどうか聞くと、できますよ、と頼もしい返事。

画像1部屋のイメージがグリーンだから、ちょっと濃いめのブロンズ色で縁取れば、柄も引き立つことや、内側にゴールドの細い枠を入れるときれいなことなどを、実際にモールディングをスカーフにあてながら説明してくれた。折じわが目立つので、クリーニング屋で一度プレスしてから張ってくれるそうで、そこまでやってくれて、14000円。安い!! 90センチ×90センチというかなりの大きさを考えると、これは破格だと思う。

スカーフは、引っ張り方が均等でないと、絵が歪んでしまうし、のりで止めると、時間がたったとき変色してしまうということで、額装にはかなり工夫が必要だったらしい。しかし、仕上がりは大満足のものだった。たためばバッグに入ってしまうようなスカーフが、立派な額の中で胸を張っていた。

画像2「もし時間がたってシワが寄ってきたりしたら、いつでも直しますよ」

と、引き渡しのとき店長はプロの顔で優しく言ってくれた。

フェラガモのひまわりは、我が家のリビングにとってもよく馴染んでいる。額縁とのマッチングも素晴らしく、ウチに遊びに来た友達にもとても好評だ。そして、「額装、高かったでしょ?」と聞かれればしめたもの。その値段を言うと、誰もがびっくりし、私はちょっといい気分に浸れるというわけ。

絵画と違って、スカーフアートは気軽に楽しめるからいい。しかも、自分で手塩にかけておめかししてあげれば、愛着もひとしお。さて、クローゼットで出番を待っているエルメスくんは、どんな風にデビューさせてあげようか……。

『額屋ロッシュ』03-5410-8674