よりどりみどり〜Life Style Selection〜


巻き爪にご用心

数日前から、靴を履くと左足の親指がズキズキと痛む。先の細い8センチヒールの靴で、1日中あちこち歩き回ったりしたせいかもしれない。あまり痛いのでよく見てみると、左足の親指の爪の角が丸く指の肉に食い込んで化膿し、指がプクッと赤く腫れていた。ちょっと押しただけで激痛。そうか、この爪の角が肉に刺さっているからいけないんだ。よし、この刺さってる部分を切っちゃえばいいんだな。さっそく私は爪切りを押し当てて、食い込んでいた爪の角の部分を強引に切るという荒療治を決行した。化膿してるところがものすごく痛かったけど、我慢、我慢。爪と指の間にマキロンを流し込み、化膿止めの軟膏を塗り込み、一件落着。

のはずが、翌日になっても、そのまた次の日も、いっこうに痛みが治まらない。それどころか、指はますます腫れ上がり、夜ベッドに入ると、暖まって血行がよくなるせいか、ズキズキして眠れないくらいになってしまったのだ。これは、病院に行くべきか? いや、病院は最後の手段だ。昔、手の指の先が化膿して、ひょうそうになっては大変と病院に行ったことがある。が、「既にひょうそうですよ」と言われ、有無を言わさず爪の間(!)に麻酔の注射を打たれ、爪をばりばりと剥がされた。同じように足の、それも親指の爪なんか剥がされたら、しばらく靴もろくに履けなくなってしまう。

他に方法はないものかと、インターネットで検索してみる。爪とかフットケアとかを探すと、『ドクターフット』という、台湾式リフレクソロジーのクリニックのホームページに、「巻き爪」というのが出ていた。靴で圧迫されて、爪の端が内側に巻き込んでいってしまう症状。これだ! 絶対に間違いない。ん? 「巻き爪」になった場合、爪の角を切ってしまうと、どんどん巻き込んで悪化するので、絶対に角は切らないこと?……早く言ってよ〜! いちばんやっちゃいけないことを、私はやってしまっていたのだった。

そこに出ている治療法が、なかなか興味深かった。治療と言うより矯正。その名も『巻き爪矯正』という。どうやるかというと、爪の先の両端に小さな穴を開けて、超弾性ワイヤーという針金のようなものを通す。つまり、爪をホチキスの針で止めたようにするのだ。そうして、ワイヤーが元に戻ろうとする力で、巻いた爪の端を起こして平らにしていくらしい。

画像1なるほどねえ。シンプルだし、何と言っても痛くなさそうなのがいい。『ドクターフット』の浜松町店は家から20分あれば行ける。おまけに夜9時まで営業していて、年中無休.。真っ赤に腫れ上がった親指が、早く電話しろとばかりにズキンズキン。さっそく電話をすると、運良く1時間後に予約が取れてしまった。痛い指にバンドエイドを貼り、つま先の開いたサンダルを履いてさっそく浜松町へ。『ドクターフット』は駅のすぐ目の前だった。

フットマッサージがメインのクリニックなので、『巻き爪矯正』の施術は奥のほうの、何やらいろんな器具の並んだスペースで行う。呼ばれて行くと、ちょっと高い椅子に座らされた。先生は私の醜く腫れ上がった親指をちらりと見て、「ああ、痛そうですねえ」と、さほど驚いた風もなく言う。

まず、資料用に親指の爪をデジカメで撮影。こんな変形した爪をアップで撮られるのは、例え足の爪でも、ちょっと恥ずかしい。それから、爪を電動ヤスリみたいな機械できれいにして、細いきりでクリクリと両端に小さな穴をあけ、ワイヤーを通し、ワイヤーの先が皮膚に当たらないようにカットしておしまい。あとはそのまま2〜3か月待つだけ。うそみたいに簡単だった。

画像2施術してもらっている間暇なので、いろいろ質問してみた。こんなに化膿しちゃってから来る人っていますか? と聞くと、先生はまたまたさらりとした口調で「もっとスゴイ人いっぱいいますよ〜」と言って、デジカメでいくつかの写真を見せてくれた、中には、爪の両端がみごとに巻き込んで、くるりと「の」の字になっているのも! ホントにビックリだ。こんなになるまで、よく我慢できたと思う。もっとビックリしたのは、施術に来る人が1か月に200人ぐらいうるということ。思わず「うっそ〜!」と叫んでしまった。「1日6〜7人だから、1か月だとそんなもんでしょ」と、相変わらず冷静な先生。地方の人でここに来られない場合は、何人か患者が集まれば、出張で治療に行くこともあるらしい。その名も『グループ治療』。仲良く誘い合って『巻き爪矯正』……ルンルン……悪くないかも。

さてこの矯正、驚くほど効果はてきめんで、あんなに痛かったのに、帰りの電車では、もう全く痛みは消え、爪を上から押してもなんともないくらいになっていた。そして、2日後には炎症も治まり、1か月後には巻き込んでいた部分がちゃんと浮き上がったので、針金を抜いてもらって終了。なかなかドラマチックな体験だった。

画像3手に比べて、靴に隠れてしまう足には、みんなあまり気を遣わない。でも、無様な格好をデジカメに撮られた左足の親指くんの気持ちを思うと、あれから自分の足が無性に愛おしくてならない。今度は、新聞の通販広告欄に出ていた『外反母趾用サポーター』を、是非試してみようと思っている。

『ドクターフット』http://www.dr-foot.co.jp