LADYWEB オーバーエイジの起用法については、どう感じましたか?
KOH先生 ゴールキーパーの曽ヶ端準と小野伸二の2人がオーバーエイジで起用されたわけですが、キーパーにオーバーエイジを起用すること自体は正しかったと思います。ただ、曽ヶ端自身の出来については、もうちょっと安定感があると思っていたのですが。小野については、やはり合流が間際すぎましたよね。それともう1人、高原直泰を起用しようとしていたのですが、コンディション不良で断念しました。結局、高原に代わる選手は選出しないまま本大会に臨んだわけですが、オーバーエイジ候補を高原以外にピックアップしていなかったのか疑問が残りました。 また、アルゼンチンなどがそうであったように、本当に補強すべきだったのは、中盤でボールを落ち着かせられる選手であったり、ディフェンスラインであったりしたわけです。キーパーはともかく、小野と高原のコンビに賭けようとしたのかもしれませんが、適切な選択とは言えなかったかもしれません。また、仮にディフェンスにオーバーエイジを起用したとしたら、じゃ一体誰を起用するのか選択に迷うこともありますよね。ディフェダーは、実は日本の層の薄いところですから。例えば、中澤佑二をアジアカップに出さずにオリンピックに起用したほうがよかったでしょうか? そうしたら、アジアカップの優勝はなかったかもしれません。 LADYWEB では、オリンピックで日本が優勝するために必要なこと、強化すべきことは何でしょうか。 KOH先生 オリンピックで、と言うよりは、U-17やU-20の世界大会を含めて、若い世代の世界大会で優勝を狙うためにどうするか、ということだと思います。今大会を見ても、昨年のU-20ワールドユースを見ても、20歳そこそこで、あるいは10代で、ベテラン顔負けのプレーをする選手たち、決定的な仕事をする選手たちが、世界各国でどんどん出現してきます。日本のほうは、テクニックやスキルのある選手は多いのだけれども、まだまだ場数が不足しているというか、キャリアの差、そこから来る力量差を感じてしまう場合が多いですね。 ユース世代から若年層の計画的な強化というのはたいへん重要な問題で、日本サッカー協会も重点課題として取り組んでいるはずです。いわゆる「79年組」と呼ばれる1979年生まれの世代が、今のところ日本の「ゴールデンエイジ」とも言われていますが、彼らは確かにU-20ワールドユースで決勝進出、シドニー・オリンピックでもベスト8進出、そして2002年のワールドカップでも中核メンバーを構成しました。彼らの世代は、そうした若年層の強化が実を結んだ例であるわけですが、サッカーは世界のどの国もたいへん力を入れて強化している真にワールドワイドな競技です。日本もさらなる強化策が必要と思います。日本がオリンピックでもっと好成績をあげるのは不可能ではないと思いますし、同時に、これまでと同じ強化策では現在のクラスが精一杯とも思えるわけです。 特に日本では、ユース世代に様々な垣根や制約があって、継続的な強化がやりにくという問題が残っています。そうした問題をクリアしていくべく、関係者のさらなる努力を期待したいです。ユース世代を指導する指導者の充実も含めて。そして何よりも選手たちが、もっともっと意欲や野望というか執念を持ってJリーグでも目立った活躍を見せるような、そんな強い意識を持って欲しいなと思います。海外リーグを見ても、どんどん新しいスター、新しい戦力が出てくるじゃないですか。日本のJリーグも、そうならないと。 ただ、サッカーでは頂点はあくまでワールドカップ。オリンピックでの成績を上げるためではなく、ワールドカップを視野に置いた強化がなされていくのが世界のサッカー界だということです。 LADYWEB イタリアのジラルディーノなど、今大会で目立った選手が何人もいましたが、KOH先生が注目した選手はいますか? KOH先生 ジラルディーノはパルマで中田英寿がいた頃にユースチームから上がって出て来たばかりの時期から、私は将来のイタリアのエースストライカー候補だと見ていました。自慢になりますけどね。他にもイタリアにはセリエAでプレーしている選手が多いので、お馴染みの選手が多かったですね。デ・ロッシはローマにいるのですが、得点能力もチャンスメイク能力もあるボランチで、将来イタリア代表の中心になるでしょうね、今大会はイマイチでしたけど。 今大会で目立った選手と言えば、何と言っても得点王になったアルゼンチンの20歳のテベスでしょう。セカンドストライカーのタイプだと私は思うのですが、非常に高い得点感覚を見せつけました。何しろ、あのサビオラをベンチに追いやっての活躍ですからね。ただ、アルゼンチンの試合を見ていると、周りがテベスを上手く使っている感じがしました。やたらとテベスにボールを当てたり預けたりしないで、フィニッシャーとして使いこなしている感じがしました。その成果が得点王に繋がったの思います。マラドーナの再来という声もあるようですが、今大会はそういうチーム理解・意思疎通の中での活躍ですから、本当にマラドーナ並みの個人打開能力があるのかどうかは、これからわかっていくことでしょう。 LADYWEB オリンピックのサッカーは、世界の注目度的にはどうなのでしょうか。 KOH先生 サッカー大国やサッカー界全体からしてみれば、あくまで新しい若いタレントを発掘する場なのではないでしょうか。オリンピックの成績やオリンピック予選の結果でサッカー地図が変わるということは、まあないですね。正直言って、本大会の出場権を得た国の中でも本気度にバラツキが大きいですね。国として、その国のサッカー協会の取り組みとしては、ね。 そんな中で、アルゼンチンは実に効果的なオーバーエイジの補強もして、チーム力は全く抜きん出ていましたね。パラグアイも、本気度が感じられました。まさにその2か国でのファイナルになったわけですが。また、イタリアもピルロをオーバーエイジで加えたりして、それなりに態勢をつくっていたと思うのですが、イタリアの選手たちはどうでしょうか、セリエでの試合のほうが集中力も燃え方も違うみたいですね。 それからピルロですが、もちろん既にACミランのスター選手ですが、オーバーエイジで加わってから周囲と合わせる時間がなかったこともあるのでしょうが、もっとスーパーなパフォーマンスをするのかと思っていた人も多いと思うんですよ。ピルロをトップ下に入れたりしていましたが、オリンピックといえども、トップ下はもっとフォワードを追い越してゴール前に飛び込む動きや、得点能力が求められます。フィジカルの強さもね。その点でピルロは今日風のトップ下タイプではないですよね。ACミランではもう1列低い位置からのゲームメイクの役割を与えられているという意味が、はっきりわかったと思うんです。 日本でもトップ下でゲームメイカーを演じる選手が多いのですが、今やトップ下というのは華麗なゲームメイクよりもゴールのほうを重要視する仕事が求められるわけで、海外へ出ればなおさらのことです。ちょうど今大会の日本チームでもトップ下でプレーした京都パープルサンガの松井大輔がフランス・リーグ2部のル・マンへのレンタル移籍が決まったようですが、松井はテクニックには定評のある選手ですが、さっきも述べたような勝負を決める仕事をする意識、もっと言えば自分がゴールをあげるんだという意識へと脱皮して欲しいなと思います。 |
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