LADYWEB 今度は女子について伺いたいのですが、強豪スウェーデンを倒したし、決勝トーナメントにも進出。かなりの活躍をしてくれたように思いますが、いかがでしょうか。
KOH先生 ええ、世間の話題にもなったし、頑張ってくれたと思います。スウェーデン戦は本当に素晴らしい出来で、あのパフォーマンスは男女にかかわらず、日本のサッカーを体現してくれたと思います。中盤でのプレスから速いボール回し、そして速攻です。 特にスウェーデン戦の前半終了間際に中盤でボールを奪って小林弥生が速いドリブルに入って、そのスピードのまま、右足のアウトで相手ディフェンダーを越える速いスルーパスをピタリと澤穂希に合わせたシーンは、実に素晴らしい、ワールドクラスと言ってもいいプレーでした。澤がゴールを決められなかったんですが。まあ、スウェーデン戦はそれくらい素晴らしいパフォーマンスだったのに、1点しか奪えなかったのはイタかったですね。少なくとも3点は奪えた試合です。 LADYWEB 女子日本代表のよかった点と悪かった点はどこですか。 KOH先生 オリンピック出場を決めたアジア最終予選の北朝鮮戦と今大会のスウェーデン戦と共通して、まずは気持ちの入った集中力の高いパフォーマンスを見せてくれたことがよかったと思います。上田栄治監督の描くチーム戦術がよく浸透して、中盤の底でボールを奪ってサイド攻撃へ展開するスピーディなサッカーが小気味よかったですね。 残念だったのは、2戦めのナイジェリア戦では、そうしたスピーディさが持続できなかったことです。運動量も不足していたかもしれません。ナイジェリアにせめて引き分ければ、グループ分けにも恵まれていましたからグループ1位で決勝トーナメントに進めて、比較的組みし易い相手との対戦を迎えられたのに残念です。結局、優勝したアメリカとの対戦になってしまいましたからね。 LADYWEB 荒川選手や、大谷選手は、日本人にはめずらしくフォワードらしい動きをするフォワードだなと感じましたが、いかがですか。 KOH先生 なるほど、そうかもしれませんね。男子のフォワードにも、ああいった動きをして欲しいということでしょ? ゴールへの執着心が感じられますね。一方で澤がコンディション不良でイマイチだったですね。アジア最終予選後に膝の手術をしたばかりですからね。本来ならば、今大会の澤はスタメンで使うレベルではなかったかもしれません。まあ、精神的主柱という意味もあったのかもしれませんが、澤に代わるトップ下、もしくは3トップにするとか、そういう選択肢はなかったのでしょうか。 LADYWEB 女子の大会では、オリンピックというのは大きな意味があるのでしょうか。 KOH先生 女子にも当然ワールドカップがありますからね。でも、世間に向かって女子サッカーをアピールするためには、オリンピックは意味があるのかもしれません。その点は、男子とは大きな違いでしょうね。今大会で女子サッカーは日本国内でも注目してもらえたのですが、これが日本の女子サッカーの再スタートです。 もちろん、選手も関係者もそのことはわかっていると思いますが、女子サッカーの裾野を広げるためには、ここからがさらに大切になってきます。アメリカ戦を見ても、スコアは1-2ですが、スコア以上の差は大きいと言わざるをえません。今大会ではスウェーデンに勝ちましたが、ドイツもいますし、アジアには中国もいます。どの国とも単純に体のサイズ自体に相当差がありますので、アジア最終予選の北朝鮮戦、そしてスウェーデン戦で見せてくれたような、日本女子サッカー独自のスタイルを模索し創っていくことが必要でしょうね。 LADYWEB 最後に何かありましたら。 KOH先生 最後に、今大会の特に男子を見ていてあらためて思ったのですが、男子オリンピック代表というのはU-23で、それに3名までオーバーエイジを加えることができるのですが、それではチームごと国ごとに取り組みにバラツキが出てしまいます。 サッカーの世界ではU-17、U-20という年齢別世界大会が開催されていて、年齢制限のないフル代表によるワールドカップを頂点に、年齢別・年代別の世界大会の構造が確立されています。だから、オリンピックについては、やはりU-23の世界大会、オリンピックという場で行われるU-23世界大会という風にしてしまったほうが、相応しいのではないかと思うんです。 IOC=国際オリンピック委員会としては、最も人気のあるサッカー競技にフル代表の参加を要望していて、FIFA=国際サッカー連盟としては最高峰の大会はワールドカップである考えに変わりはないですから、代替案としてオーバーエイジを認めることになったわけです。そういうことなら、例えばオリンピックはU-23でなくU-25にするとか、いずれにしても、オリンピックにおけるサッカーは明確な年齢別大会の1つとしたほうが、よいように感じられるのですが、皆さんはいかがでしょうか。 それにしてもサッカーは、有力なチームが数えるほどしかいない競技と違って、とにかく人類最激戦競技。その中で上位に入り、優勝やメダルを獲得するのは、私たちが考える以上に難しいことだと思うんです。もちろん、そんな嬉しいシーンを早く見たい気持ちは誰しもあるでしょうが、一歩一歩階段を苦労しながら昇って行くプロセスを楽しんで、楽しむばかりでなく一緒に苦しんだり、時には悲しんだりして、共に歩んで行くところに喜びがあるのだとつくづく思います。そんな大きな困難があるからこそ、好成績をあげた時の価値はたいへん大きいものになるのだと思います。世間も大きな喝采を送ってくれでしょう。サッカーと付き合い始めると、ほんと一生の付き合いになってしまいます。 オリンピックの話からユース世代の育成の話まで広がってしまいましたが、来年はオランダでU-20ワールドユース選手権が、ペルーでU-17世界選手権が開催されますが、そのアジア予選が9月に開催されます。ユース世代の一層の充実を図るためにも、日本代表には是非とも世界大会への出場権を獲得して欲しいものです。特にU-17アジア予選は日本で開催されます。皆さんも応援して下さい。 |
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