Vol.17 1人からスタートした、お子様フラワーレッスン

子供展示会少しずつ、春の足音を感じる季節となりました。卒業や入学のシーズンも、もうすぐ。新しい世界が広がっていく季節です。新しい扉を開けて、ちょっと背伸びをしながら、少しずつ何かに挑戦する季節、とでもいうのでしょうか。そうです、挑戦というと少し大げさかもしれませんが、私も先日新たな試みをしてみました。それは、お子さまフラワーレッスンクラスの作品展示会をおこなった、ということです。

私は、数年前より、子供たちにフラワーアレンジメントを教えています。子供に花を教えていた同業者の友人が、かねがね「子供の発想力はすごい。子供たちに教えることで、自分自身の勉強にもなる」と豪語しており、私も教えてみよう、と思ったのがきっかけです。正直なところ、はじめは「子供たちが、果たしてどのような作品をつくれるのだろう。子供がつくるフラワーアレンジ?」と半信半疑の気持ちでスタートしたレッスンでもありました。

ところが、どうでしょう。子供たちは、大人の私たちからは想像もつかない視点で花を見つめ、豊かな発想と感性で、夢のある作品を手がけるのでした。そして、レッスン回数を重ねるごとに大きな進歩もみられることから、ぜひ多くのかたに子供たちの作品を見ていただきたい、という思いで作品展を開催するに至ったのです。そして、今回展示した作品は、子供がつくったとは思えないくらいのでき映えで、見にいらした方々はたいそう驚いていらっしゃいました。

初参加者

一番最初に行った、父の日にちなんだレッスン。この時の参加者は1人でした。

思えば、いちばんはじめに子供に花を教えたのは、5年前。当時は、私も、子供への教え方が試行錯誤の状態だったこともあり、父の日にちなんだアレンジを、ママと一緒につくって、パパにプレゼントするというスタンスでおこないました。父の日にちなんだとはいっても、結局はケーキのようにも見えるアレンジをつくったのですが、お子さまから手作りのアレンジをプレゼントされたお父さまは「パパにつくってくれたの〜。」と大感激だったようなのです。そして、レッスンの最初に、お父さまがお子さまを大切に育てているのと同様に、花もすごく大切に育てられている、ということを知ってほしくて、「花はどこから」という、花の生産される様子を書いた子供向けの本を読んで、レッスンを行いました。その時のレッスンに参加したのは、1名。私の友人のお子さま、たった1人でした。真剣な、そして

ちょっと心配そうな顔ものぞかせながら、でも笑顔で花を見つめ、嬉しそうにアレンジを持ち帰った姿は、今でも目に焼きついています。その、たった1人が来てくれたことで、子供のレッスンがスタートし、今に至るのです。そのお子さまは、ご自宅が少し遠いので、その後、数回レッスンにいらして以降は会えなくなってしまいましたが、最初のレッスン人数が、もしもゼロだったら、子供のレッスンはスタートしていなかったのかもしれません。私は、その最初の1人、当時小学2年生だったお子さまに、たいそうな感謝をしなくてはいけません。

あれから、約5年。当初は、母の日やハロウィン、クリスマスなど、行事にちなんだレッスンをおこなっていましたが、現在では、毎月1回ずつレッスンに通っている子供たちがほとんどです。そして、毎回のレッスンで、子供の発想力、そして花を見つめる観察力の素晴らしさを痛感する日々なのです。

カーネーションの葉

カーネーションの葉は、確かに"くるん"としています。

母の日のレッスンで、カーネーションを使った時のこと。「この葉っぱ、くるんとしてて可愛い。ハートにも見えるし、葉っぱと葉っぱがすごく仲良し。」確かにそうです。カーネーションの葉は、品種によって、ハートのように、丸まっているものもあります。大人のみなさまも目にしているとは思いますが、改めてそういわれると、納得なのです。

また、レッスンでは、吸水性スポンジ(アレンジする際に使用する、緑色のスポンジ)を使うことが多いのですが、花を挿す位置を間違えた場合は、1度花を抜いてから、新たな面に花を挿すことになります。再び同じ箇所に花を挿しても、スポンジにあいている穴が広がるだけで、花が安定しないため、茎先とスポンジが上手く接触せずに、花が充分に水分を得られないからです。これは、大人のレッスンでも子供のレッスンでも教えていることなのです。ある日のお子さまレッスンでも、花を挿す位置を失敗してしまった6歳の女の子が、新たなスポンジ面に花を挿そうとしていました。案の定、スポンジの表面には失敗した数個の穴ができ、そこには何も挿せません。そういう場合は、近くの新たな面に葉を挿すなどすれば、失敗した穴がうまく隠せることがあります。ところが、そのお子さまは、こんな発想をしたのです。

子供:「そうだ、この穴は人の足跡で、ここは道。」

(穴がいくつかあいていて、確かに道にある足跡のようなのです。)

私:「道は、どこまで続くの?」

子供:「道の先には、お家があるの。」

大人にはない、この発想に、たいそう驚いた私でした。そして、そのお子さまが仕上げた作品には、大人であればゴミとして捨ててしまうであろう、スイトピーの茎でつくった、煙突のあるお家らしきものが取り入れられていました。

このような発想は、大人には失われてしまったものなのでしょう。知人のジュエリーデザイナーと以前話をしたとき、「自分の子供が書いた絵や工作を見ることで、ジュエリーデザインのヒントとなる発想をたくさん得たことがある。」と言っていました。

子供展示会

最初にレッスンに参加してくれた当時小学2年生だった小さなお子さまも、先日の展示会では、このくらいの目線でアトリエを見つめたことでしょう。

こうして、先日の展示会開催中には、お子さまレッスンを始めてからの、この5年間、子供たちの豊かな発想に感心や感動したこと、そして、たった1人参加してくれたお子さまがいたことが、レッスンの始まりだったことなどを思い出していました。そんなことを頭に浮かべながら、展示会場であるアトリエの入り口をふと見ると、中学生らしき女の子が立っていました。「あれ、誰だろう。」と思いながら近づいてみると、いちばんはじめにレッスンに来てくれた、たった1人の参加者だった当時小学2年生だった女の子でした。私が感謝しなければいけないその女の子には、この作品展示会の案内状を送っていました。でも、それは、展示会を見に来てほしいというよりは、展示会を開催するまでになったのは、「最初に参加してくれた、あなたがいたから。ありがとう。」というご報告をしたくて、ご案内をしたのです。展示作品を見て「やっぱりお花はいいな」とひと言。ここにも、花の不思議な力に魅せられた人がいたようです。

〜 お子さまと一緒にお花をアレンジするときのワンポイントアドバイス 〜

お子さまと一緒に、お花をアレンジしてみましょうか。アレンジといっても、特別な器はいりません。たとえば、小さなコップやペットボトルに数本のお花をいけることからはじめてみましょう。あまり見栄えのよくないペットボトルでも、画用紙か何かにお子さまが絵を描いて、ボトルのまわりに貼ったりすると、オリジナルの立派な器に仕上がりますね。

そうして、何にお花をいけるか決めたら、まずはお花屋さんに行きましょう。お花屋さんで花選びをするのも楽しいですよね。小さな花束になっているものを買うのもよいですが、1本ずつお花を選ぶのも、なかなか貴重な体験ですよ。様々な種類のお花があることがわかったり、同じ種類でも色んな色のお花があることがわかったり、季節を感じたり、そして、色彩の勉強にもなりますね。3本くらいのお花を選ぶのであれば、メインのお花1〜2本に、添えのお花か葉っぱという具合でよいでしょう。

さぁ、お家に帰ったら、早速お花をいけてみましょう。器に7分目位まで水を入れたら、ほどよい長さにお花を切って、器に入れて、はい、出来上がり。初めのうちは、気持ち短めに切って飾ると、器に入れたときにお花が安定しやすいと思いますよ。

水をかえることや、日を追うごとにお花がどうなっていくかの観察も、どうぞお忘れなく。

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