Vol.45 ある“知られざる”舞踏会 その5 雨の中舞踏会に出かけました

滞在していたアパートのリビングに鎮座している、バッファローのブルータス君の顔をご覧ください。コーナーに置かれているランプシェードはアウガルテン、右上にちらっと写っている黒いものは、年代物のシャンデリアです。
ウィーンでも、誰もが参加できるわけではない、特別な舞踏会。念願がようやく叶って、友人の”伯爵”と共に参加させてもらうことになり、いったいどんな舞踏会なのだろう、と私は期待と共に少し緊張していました。

当日はあいにくの雨。その頃、私はウィーンでアパートを借りて滞在していました。それは“伯爵”が紹介してくれたお友達が持っている、普段は使われていないというアパート。街の中心部まで歩いていける便利なところにあり、年代ものの家具が置かれた2部屋で、独立したキッチンもあります。それだけの広さのアパートを所有しながら、ほとんど使っていないなんて、なんと贅沢なのでしょう……。ちなみにリビングルームには、1m以上もありそうなバッファローのはく製が、壁から顔を出しています。

そのアパートから舞踏会へ行く待ち合わせ場所までは、歩いても10分程度でしたが、ドレスを着て雨の中、一人でどうやって行くかを思案していました。一般的には、男性は一緒に舞踏会に参加する女性を迎えに行くのですが、この日”伯爵”は自分のガールフレンドと一緒なので、私は途中で彼らと合流することになっていたからです。そんな私のところへ夕方、別の友人ミヒャエルから電話。彼は今夜、日本人の女性と違う舞踏会へ一緒に行くことになっていたのです。「今日は別々の舞踏会だけれど、楽しんできてね」と私が言うと、彼は、「マキコが一緒でないなんて残念」と言い、何と、今夜のパートナーを迎えにホテルへ行く前に、私をアパートから待ち合わせ場所まで送ってくれるというのです。いつもいい奴……失礼しました。“紳士”なミヒャエルなのです。

アパートを貸してくれていた人の、ウィーン郊外の自宅です。まるでお城のようですね。けれども少し小高いところに建っているので、この雪の中を登っていくのは大変でした。
そんな訳で夜、ミヒャエルが迎えにやってきました。

「マキコ、今夜の貴女のドレスを見せて欲しいな!」
「もちろん」

と、コートを脱いでみせると、

「wow、とっても綺麗だよ」

……ヨーロッパの男性は女性をほめるのが上手、ましてや彼は普段から、会えば必ずほめてくれる人とはわかっていても、そう言われればうれしいのが女心ですよね(この記事を読んでおられる男性諸氏、どうぞ心にお留め置きください……)。

雨の中をわざわざアパートまで迎えにきて、私と“伯爵”たちとの待ち合わせ場所まで送ってくれ、私の両ほっぺにKissKissをして、ミヒャエルは今夜の自分のパートナーを迎えに去っていきました。「お互いに舞踏会を楽しもうね!」と言って。