Vol.07 デビュタントセレモニーの始まり〜優雅なディナータイム

伝統的なフランス式テーブルセッティングです。
アペリティフを飲んだり、フィル・コリンズとツーショット写真を撮ったりしているうちにあっという間に時間が過ぎ……案内されたテーブルに着くと、私が最後だったようです。まず同じテーブルの方々とごあいさつ。今宵、この素敵な時間を共有する方々は……隣に、日本人デビュタントのドレスを担当したHCハウス、カルバンからいらした二人の紳士。某高級女性雑誌の記者とカメラマンの方々、自分の娘の出番までドキドキの、スイスからいらしたデビュタントのお父様(実業家)、などなどです。

デーブルには赤いバラの花びらがたくさん、ランダムにまかれているのも華やかさを添えます。シャンパンがサーブされ、いよいよディナーがスタート……と思っているうちに、気づくとすでにデビュタントのお披露目セレモニーが始まっていました。

フランス語と英語で名前とプロフィールを紹介されたデビュタントが、パートナー(キャバリエ)にエスコートされ、招待客のテーブルの間をファッションショーのランウェイよろしく、拍手を受けながらひと組ずつ歩いてきます。若いデビュタントたちも、この時ばかりは少しはにかみながらも、堂々とした歩きっぷり(?)でした。

ちなみに、このソサエティ・イベントを2か国語で進めている司会者は、フランスでは有名な王室ジャーナリストのステファン・ベルン氏。ヨーロッパのハイソサエティ事情に詳しく、また作家としても最近、モナコ公妃の写真とドキュメンタリーを収めた「グレース・ケリー」を出版したという、マルチな活動をしている方です。

笑顔が可憐で美しいスイスのデビュタント。
さて、我がテーブルの花嫁の父ならぬ“デビュタントの父”は、後半の娘の登場が近付くにつれて、落ち着きがなくなり、きっとお酒も入ったのでしょう、それに伴ってだんだん顔が赤くなっていきました。そのデビュタントは、アンジェル・サンチェスの初々しいマゼンダ色のミカドシルクドレス。「とてもエレガントなお嬢さんですね」とお父様に言うと、照れてはいましたが、笑顔のとてもかわいらしい可憐な娘が、かわいくて仕方がないという父親の気持がこちらにも伝わってきて、ほのぼのとさせられたのでした。

23組すべてのデビュタントたちのお披露目も、次々と進み、あっという間に終了(これでゆっくりと、フレンチのお食事とワインが楽しめます)。

そんな中、今回のパーティでは、少々意外だった新発見もありました。一般に「フランス人は英語がわかるくせに、英語では話してくれない」という認識が広くあり、私も10年前にパリを訪れた時の経験で、そのような記憶が刻み込まれていました。ところが、同じテーブルになったカルバンの方たち(うちひとりは、フランス語圏のベルギー人でしたが)をはじめ、皆さん何の抵抗もなく、私にはいつも英語で話してくれていました。

それどころか、時々フランス語で他の人たちと会話をする時には、「ごめんね、フランス語で話しちゃって」とまで断ってくれたのです。私自身はウィーンでドイツ語に囲まれて過ごすのが普通でしたから、フランス語に囲まれてもまるで気にも留めていなかったのですが、そんな彼らの気遣いあふれる言葉に、かえって恐縮してしまったのでした。 “フランス人の株”が上がったエピソードです。