最近、急に暑くなったり寒くなったりして、季節の変化についていくのが大変である。一番困るのは着るもので、衣替えするには早すぎるし、でも冬物のままでは暑いし、ちょっとずつ春物や夏物を引っ張り出して着ているのだが、久し振りに着る服は、過去のことを思い出すきっかけになる。

最近引っ張り出した7分丈のパンツは、昨年ロスで着ていたものだ。

「もうロス、ベガスへ行って一年か…」

と感慨深げに思い出していて、ふと気がついた。確か私が現在の体重になったのは、ロスでのことではなかったか。前回の連載の最終回は、ロス滞在中であった。兄の家で甥っ子と遊んで走り回ったのがよかったのか、それまでまったく落ちなかった体重が、ヒョイっと落ちた。それが52.5kg、つまり今の体重である。ってことは、私は一年間全く、100gさえも体重が減っていないということである。

改めて考えると、これってあんまりな事実だ。そして、この七分丈のパンツはさらに過去の記憶も運んできた。このパンツ、実はかなり昔に買ったもので、マックスに太っていた3年前の夏は太ももを通過することもできず、衣替えの時期にも登場することなくファンシーボックスの中で眠ったままであった。

それが2年前、連載スタート後一気に5kg以上痩せた私は、その夏、久し振りにこのパンツを履いて、「痩せた」という実感を得たのである。もちろんそれからさらに痩せた去年の私は、同じパンツが緩いという事実に歓喜し、確実に体重を落とした自分に満足したのであった。

しかし今年は、そのパンツが履けることに何の感慨もない。もしもこの一年で3kgでも痩せていれば、恐らく私はこのパンツを、「もう緩すぎる」という理由で捨てていただろう。でも「ちょっと緩め」くらいでは、お気に入りのパンツを捨てるわけにはいかない。

一年間同じ体重を維持しているということは、去年着られたものはすべて着られるけど、着られなかったものは今年も着られない…ということであり、「痩せたら着よう」と思ってしまいっぱなしの洋服たちは、今年も日の目を見ないということだろうか。

「着られる、着られない」に関わらず、古くなったものや、いくらなんでもこの年齢では着られない、と思われるものは処分しなければならず、そうすると当たり前のことながら私の着られる服は大変少なくなってしまう。

まだまだ痩せるつもりでいる現在の私にとって、今のサイズに合わせて服を買うというのは、ハッキリ言って無駄遣いだ。それには本格的な夏を迎える前に、せめて2kgでも痩せて、昔の服を着られる体型に戻り、その段階で洋服を買う、というのが正しい道だと思う。

少々色の褪せた7分丈のパンツも、ユルユルだというくらいに痩せれば、未練も持たずに捨てることができる。

「いい加減、マジで痩せようよ」

鏡に映る、7分丈を履いた自分に向かって、思わず呟いた私であった。