LADYWEB 海外のサポーターについては、どう思われましたか。

KOH先生 数は少ないんだけど、でも熱心に来ておられて。声が大きいですからね、かなりよかったんじゃないですか。すごい熱心ですよ、こんな物価の高い国にあちこち行って。

LADYWEB ホントすごいですよね。新幹線代だってばかにならないのに。今ちょっと話に出ましたけど、チケット問題についてはどうお考えでしょう。

KOH先生 取り仕切ってるバイロムというイギリスの会社が能力不足というのも事実だと思いますし、FIFAが、こんなオリンピックと同じかそれ以上の大会を、バイロム社に1社にコーディネイトさせてるっていうのも信じられない話です。

でも、FIFAやバイロム社の責任というよりも、JAWOCに対して物足りません。誰のためにサービスを提供する仕事をしているのか、という観点が欠落していたのではないでしょうか。JAWOCの姿勢は、ここまでがJAWOCの仕事で自分たちの落ち度はありません、ということのように思えます。ワールドカップは、ワールドカップ日本組織委員会という財団法人に出向してきた人々のルーティンワークの場ではなくて、ワールドカップを観戦する人々のために円滑な運営を行うサービス機関でなくてはならなかったはずです。

韓国のKOWOCの対応がすごく良かったかというと、それは分かりません。例えば、スタジアムではFIFAとの話し合いで、セキュリティのために一部の席を空けているのですが、韓国の試合では、その席を勝手に売っちゃったりしたようです。そういうことは良くないでしょう。ただ、ルール違反と紙一重かもしれないけれども、少なくともKOWOCには、韓国の試合に限って言えば、そこまでしても、観客をスタジアムに入れたいという強い意志があったというのは事実ですよね。JAWOCには、KOWOCと同じことをするべきだったというのではなく、基本的な姿勢として、そういうものが全く感じられない。たいへん残念でした。

セキュリティのためにあんなに席を空けているというのも、確かにビッグマッチではセキュリティのために一部の席を空けます。Jリーグのチャンピオンシップでも、カシマスタジアムで鹿島アントラーズとジュビロ磐田が戦った時など、ジュビロのサポーター席に空席を作っていました。そのために、かなりの席数をロスします。安全のための措置なわけです。

でも、ワールドカップの試合で、あそこまで空ける必要はあるのだろうかと疑問に思いました。今回のワールドカップのために、観客席のエリアとエリアの仕切りを高い柵に付け替えていました。あれを付けているんだから、そこまで空ける必要があったのかなあと思います。それに、セキュリティのための空席とプレス席の拡充があるので正味の席数は何席になります、ということを事前に明らかにしておくべきではなかったでしょうか。私たちは、通常のキャパシティ、観客席数でしか考えることができなわけですから。そこでまた、誤解や意志の不疎通が発生してしまうわけです。その辺もたいへん下手ですよね。

LADYWEB 前回のフランス大会のときにもチケット問題は出ましたけれど、これは毎回のことなんでしょうか?

KOH先生 確かに、各国のサッカー協会に配分しているチケットが売り切れなかったときに、どうするのかという問題はこれからもあるでしょうね。特に今回、開催国が韓国と日本ですから来たくてもなかなか来られないわけで、当然捌き切れないことが想定されたではないですか。私たちは、絶対余るよ、って言い合っていたんですよ。当日売りするのかねえ、って言っていたんです。スタジアムでの当日売りやればいいではないですか。

ネット販売なんてダメですよ。一体どれくらいの数のユーザーが同時にアクセスして来るというのですか?尋常ではないトラフィックを捌くことなんてできるわけないでしょう。途中から「チケットぴあ」で販売するようにもなりましたが、大部分チケットゲッターに渡るだけですよね。それにネット販売にしても「チケットぴあ」にしても、ほんの数カ所しかないチケット受け取りセンターへわざわざ受け取りに行かなくてはならないわけで、明日の試合のチケットを今日販売されても、地元でない限り観に行けるわけないでしょう。逆に都合がついてスタジアムに行ける人はチケットが入手できない、こんな不条理な方法しか提供できないなんて、どうかしています。当日会場売りすればいいじゃないですか。会場売りできないのなら、その理由と折衝経過について明確にすることも怠ってきたと思います。

LADYWEB 韓国は当日売りやっていましたよね。

KOH先生 やっていましたね。それが、ルール違反だったのかどうかはわかりませんけれども、実行力としては、たいしたものですよね。JAWOCの動きは、日本人的というか、お行儀がいいっていうか、とにかく折衝が下手としか思えません。せっかくのワールドカップなのに、たいへん残念でした。JAWOCに文句を言われても困る、という反論がありそうですが、では私たちはどこを頼ればよいのでしょうか。JAWOCしかないでしょう。JAWOCもFIFAとの交渉で苦労したことは想像つきます。でも、それがお仕事なんですから。

JAWOCに関しては、これは笑い話で聞いていただければいいんですけれど、前回のフランス大会のときの組織委員会のトップがプラティニですよね。次のドイツ大会の組織委員会のトップがベッケンバウアーですよね。JAWOCは、サッカーと何のゆかりもない財界の方。ちょっと恥ずかしいです。まあ仕方ないかな日本は。そういう方が入っていただかないことには動かせないんだな、日本では。残念だけどしょうがない。

これまで日本のサッカーというのが、確かにJリーグは10年前に出来たけれども、長年アマチュアで来ているんだということです。日本サッカー界そのものにも、まだアマチュア体質というものが残っているような感じもします。ワールドカップは終わってしまいましたが、日本のサッカー界全体がこれから本当にプロフェッショナルになっていくということだと思うんですよ。日本という国自体が、外交下手と言われます。日本サッカー協会も一緒で、アジアサッカー連盟(AFC)の選挙でもことごとく負けるわけです。FIFAはもちろんAFCの中でも、全然ポストを持っていないのです。韓国はしっかり持っています。ピッチの上でのプレーだけでなく、こういう部分でも、これから国際競争力を付けていかなくてはならないと思います。日本の国そのものと似てますよね。

LADYWEB よくサッカーマニアとかが、「ワールドカップは本当に世界一を決める大会なのか、ヨーロッパ選手権のほうが素晴らしいのでは」とか言っていますが。今後のワールドカップはどうなっていくと思われますか。

KOH先生 非常に鋭いご質問ですね。可能性として、私たちが元気なうちは権威があると思うのですが、おっしゃるとおり、将来的にはちょっと揺らいでくることもあると思います。

フットボールの先進地域であるヨーロッパは、彼らにとっては多分ヨーロッパ選手権のほうが価値が高いのかもしれません。ワールドカップは、もちろん優勝したいとは思っているでしょうけれど、一つの名誉に値するものになっていくのかもしれません。むしろワールドカップは、南米も含めたヨーロッパ以外の地域の選手が「自分を売り込む場」となるのではないでしょうか。もう既にそうですが、これからさらにその傾向が強くなるのではないでしょうか。

もう一つは、各国のクラブチームがどんどん多国籍軍になっていっていて、すごい魅力的ですよね。例えばレアル・マドリッドとブラジル代表が試合をしたら、どっちが勝つか全然わからない。レアル・マドリッドと日本代表が試合をしたら、間違いなくレアル・マドリッドが勝つでしょう。そうすると、例えばレアル・マドリッドVSマンチェスター・ユナイテッドのほうが、クラブチーム、ナショナルチームの区別なく単純に「チーム」としてみたら、今や真の世界一決定戦なのかもしれません。

そういう、クラブ単位で多国籍軍になってきて、ワールドカップのような国別の、国による対抗戦よりも、試合内容がより魅力あるものになってきていることもあります。グローバリズムによってそういう状況がどんどん進んで行くと、国別対抗よりも、クラブ対抗の魅力の方が上回っていく可能性もあるかもしれません。もちろん、ナショナルチーム、すなわち国同士で競う戦いも、これからも十二分に魅力的です。選手たちにとっても、ワールドカップの戦いも、クラブチームの戦いも、それぞれに魅力があり、高いモチベーションになると思うのですが。私たちとしては、その両方を楽しんでいくことができるという、欲張りな喜びを楽しみたいと思います。

LADYWEB ありがとうございました。
(2002.7.5)