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LADYWEB 次は韓国について総括していただけませんか?
KOH先生 今回のワールドカップで、ホームでの韓国の試合を始めて見た人も多いと思います。その運動量とスタミナと最後まで諦めない姿勢に、ビックリしたと思います。私たちは昔から韓国の試合を見てるので驚きはしませんが。もっとも今回のワールドカップでは、これまで私たちが見てきたよりも何倍もテンパッてるのは事実ですけれども。 とにかく韓国は、スタジアム全体が相手チームに対して殺気立ってて、選手たちもそれに押されて、とにかく凄い運動量とスタミナと激しい当たりで、最後まで勝ちにこだわる。なりふり構わず、になれるというか、それは今まで韓国の良さだった訳ですよね。逆にそれをいなすこともできた。ヒディング監督は、うまくそれに乗ったなっていうのがあります。ヒディングが監督になって1年半くらいだと思うんですけど、上手く仕上げて来たなと思います。 それと、約束事をかなり訓練したなっていう感じがあって、決して創造的ではない、というと怒られるかもしれませんが、ボール回しについてかなり訓練してるなっていう感じはします。定型的とは言いませんが、組織的な部分で、選手たちのクリエイティブさに根ざした組織というよりは、韓国の特性に合わせて組織の戦術を持ち込んだというか、それはどちらかというこれまでの韓国には欠けていた部分ですよね。そこを上手く強化してきたということを、見ていて強く思います。韓国の伝統的な特長を生かしたトータルフットボールを、ヒディング監督は仕上げてきたということだと思います。時間もなかったので、突貫工事の部分も大きかったと思うのですが。韓国では「圧迫主義」と言うらしいですが、相手に対して常に3人くらいで囲みに来るというディフェンスもそうです。 今回ヒディング監督は、選手を選ぶにあたって、柔軟性のあるクリエイティブ能力よりも体力重視で選んだと聞いています。日本でも知られている優れた選手が選ばれていなかったり使われなかったりしています。ワールドカップ前にも、かなりパワートレーニング、体力的な訓練をして、さらに体力の向上を図ったそうです。それが如実に顕れたと思います。
攻撃において、果敢に1対1の勝負を挑んでくるところは、素直に評価したいです。日本のフォワードやサイドアタッカーと比べると、その積極性が際立って見えたかもしれません。 もう一つ感心したことは、韓国って伝統的に、地元で戦う時は圧倒的なスタジアムの声援に押されて、相手チームを押しまくるんです。シュートもかなり強引なまでに打つんですけれども、そのシュートが精度が悪いんです。ゴールマウスに飛ばない。それが今回、ショット・オン・ゴールという、枠内シュートの数が相当上位なんです。日本は下位の方です。ゴールの中にシュートを飛ばすようになったのは、急に技術が上がるとは思わないので、落ち着いて打て、というヒディング監督の指導だと思うんですよ。元々、日本の選手よりはシュート力はあるんです。シュート力があるゆえに逆に思い切り蹴ってフカしていたわけです。それが落ち着いて、余計な力を抜いて、枠内に飛ぶようになった。それはある意味驚きでした。 で、韓国が技術的、技量的に大いに進歩したかと言うと、私はそうは思わないです。今大会で、日本はベスト16、韓国はベスト4で、結果として差がつきました。日本と韓国の力関係に関して悲観的なコメントを出す一部のサッカーファンや一般の人も居ますけれども、私はそうは思いません。確かに今回のワールドカップの中で対戦していたら、韓国に軍配が上がったかもしれません。だけどワールドカップが終わって、どの国ももう一度チームを作り直すわけです。そのベースとなる部分には、差ができたとは思わないです。日本の進歩の方向性は全く間違っていません。日本は、もちろん不足している部分は強化していかなくてはりませんが、方向性としては、今までの歩みで進んで行っていいと思います。
ワールドカップにおけるミスジャジは、これまでもよくありました。1986年大会のマラドーナの「神の手」もそうだし、たくさんあります。 今回は、誰もが分かりやすいように、トッティのあれはシミュレーションかどうかとか、ゴール前にオフサイドだったのかオンサイドだったのかとか、ボールがラインを割っていたとか割っていなかったとか、ミスジャッジの部分に指摘ポイント、議論ポイントを絞ってきているから、ミスジャッジの話に集約してきています。そこにポイントを絞ることは、議論を噛み合わせるという点では決して間違いではなかったとは思います。またFIFAも、ミスジャッジで集約させようとしています。でも、多分サッカーをずっとご覧になってきたり親しんできた人からすれば、見ていて気分が悪くなったと思います。ホームアドバンテージの域を超えたものです。日本のTVでピクシー(ストイコビッチ)がいみじくも言った「やり過ぎ」ということです。 ホームアドバンテージということに関しては、もちろんあります。それはどんなスポーツにもありますよね。日本だって、今大会でホームアドバンテージの恩恵を受けています。例えば、ベルギー戦の終了間際に楢崎が相手選手を倒したのは、アウエイだったらPKです。楢崎が相手選手を倒す前に、私は「危ない!」って叫んでいましたけれども。その前に稲本のゴールを取り消されてるというか、シュートの前にファウルのホイッスルがあったらしいんですが、それとイーブンにしてくれたのかな? とも思うのですけれども。 サッカーというのは、レフェリーに凄く権限がゆだねられてるスポーツですから、レフェリーが絶対なんです。ホームアドバンテージは、逆にホームチームに不利な場合もあります。レフェリーが、ホームアドバンテージにならないようにしようと思うあまりに、逆にホームチームに厳しくなったりする場合もあるわけです。ベルギー戦は、どちらかというと日本に不利な判定のほうが多かったですね。その後、稲本の幻のゴールがあって、スタジアム全体がブーイングしましたよね。それで最後を見逃してくれたのかもしれません。あくまで想像、類推ですが。ロシア戦でも前半、戸田が相手選手を引きずり倒しましたよね。あれはアウエイだったらPKかもしれません。 チュニジア戦でも前半終了間際に、戸田が相手選手を倒しました。私はあの時椅子から立ってしまいました。あれはアウエイではPKかもしれないし、アウエイでもPKではないかもしれないです。だからそれくらい日本もホームアドバンテージはもらっています。 でも韓国の試合は、ホームアドバンテージの域を超えています。胡散臭いものが背景にあったのかどうかなんて、そんなことは知りませんし、そういうことを言いたいわけでもありません。でも、何かの力が働いてるんじゃないかと思わざるをえないくらいホームアドバンテージの域を超えたものがあったのではないかと、世界の大勢の人々が感じているわけです。だから、世界のフットボールファンは、フットボールを愛する人々は、悲しんでいたと思います。これは、韓国の勝ち進みにケチをつけようとか、妬んでいるということでは全然ありません。あくまで、世界中の人々が後味の悪さを感じた、悲しみを覚えたということです。 で、そんなのでもイタリアは、残り2分か3分まで1-0で勝ってたわけですよね。イタリアにも勝ち切れなかったミスがあります。ビエリがそれまでに2点は決められていたのに、それを逃してしまいました。それを決めていれば問題なく勝っていたわけです。韓国の同点ゴールの時も、パヌッチがよろめかないで普通にクリアしていれば、そのまま終わっています。スペインだって、延長に入ってからのモリエンテスのシュートがゴールポストの内側に当たっていれば、それで終わりだったわけです。これはアンラッキーとしか言いようがありませんが。 LADYWEB こういうことは毎回あるんですか。 KOH先生 いや、私の知っている限りは、ここまでのものは無いです。アルゼンチンが初優勝した1978年のアルゼンチン大会も、かなり凄かった記憶もありますが。 残念なのは、日本のメディア、特にテレビと新聞ですが、韓国頑張れ、共催国だから韓国を応援しようというのは結構です。同時にやっぱりそういうところも触れざるをえないではないですか。どうしてなのか、全く触れようとしませんでしたね。海外のメディアが騒ぎ始めてからやっと、誤審ということで扱い始めました。誤審はどんなスポーツでもあるじゃないか、というようなことをお書きになる新聞の論説委員がいたり。今回の件は中国や台湾でも問題になっているらしいですし、海外のメディアは日本人の反応について関心を持っていたようです。世界から日本がどう見られてしまうのか、ということもあるのに、その辺りについて何も考えていない感じがしました。 韓国頑張れって一生懸命言うのは結構です。でも同時に、報道機関としてきちんと扱うべきではなかったかと思いました。 もっとも、日本のメディア、特にテレビについては、あれだけ海外からやって来る観戦者をフーリガン扱いしてきて、そのために不自由な思いをしたり不愉快な思いをした外国のお客さんも大勢いるはずですよね。スタジアム近辺では、店のシャッターを早々に下ろしてしまうなんていう、本当に恥ずかしい話もあります。それに対しても、何の責任も罪の意識も感じてないんでしょうね。視聴率を稼ぐことができたから、それでいいのでしょう。 あるライターの方がイタリア戦を見ても、かなりサッカーって激しいんだね面白かった、というようなことを書いておられました。ところが日が改まるにつれて、いろいろなことが段々わかって来られたようなのです。それで、通常のメディアとネットではこんなに温度差があるのか、怖い気がする、と言っておられました。こんなことからも、現代社会の一端が垣間見られた気がします。 |
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