LADYWEB 最近、サッカー文化人のあいだで日本はスケジュールに問題があるのではとの指摘がありますね。

KOH先生 以前からそれはあります。世界的に見たときに、特にヨーロッパの国内リーグは秋開幕ですよね。8月か9月に開幕して、5月とか6月に終わるという。そのスケジュールに合わせたほうが選手の移籍もしやすいんです。だからJリーグの選手がヨーロッパとかに移籍するときは、1stステージが終わって移籍したりしますよね。ところが、あちらではそこはシーズンオフなわけですよ。逆に日本のクラブに海外から選手がやってくるときは2ndステージから来たりしますよね。

それはシーズンが終わって、新シーズンを日本で迎えるということであって、別に2ndステージだから来てるわけじゃないですよね。カレンダーを国際標準に合わせたほうが、もっと交流はしやすいというのはありますよね。

ただ、日本は冬に屋外のスポーツを見に行くという習慣がないですよね。南北に長いですから雪国も多いです。ですから、どうしても冬は閉幕、春に開催ということなんですけど。

もう一つは夏休み。日本の夏休みって、どんな興行も盛り上がりますよね。プロ野球だってたくさんお客が入るし、Jリーグだってよくお客が入りますね。ところがサッカーというスポーツは性質上、夏の試合ってあんまりクオリティの高い試合にならないんです。暑いし、暑いから体力の消耗が激しいし、大味な試合になってしまう傾向があると思うんです。選手の疲労もたまるし、ケガも増えるし。夏はどこのスタジアムも一杯になるから興行的にもクラブの経営的にもありがたいんですが、クオリティ的にはいい試合ではないですね。かといって12月、凍えながら見るのもつらいですよね。新潟とか札幌は雪ですしね。

国内リーグが秋・春の開催でも、たとえばオランダやドイツは結構長くウインターブレイクをとりますよね。日本も、ウインターブレイクを長くとってもいいから、秋・春開催のほうがいいと思います。たとえば、12月初旬から1月いっぱいくらいまでウインターブレイクでもいいじゃないですか。個人的にはそう思いますけどね。

代表の試合も最近はインターナショナルマッチデイ、世界共通にナショナルチームの試合を組みましょうという日に、日本代表の親善試合、テストマッチを行うようになりました。これも、ほんの10年近く前までは全然関係ないときにやってたんですよ。海外から日本人選手を呼び戻しても、送り出すクラブ側は絶対いい顔しないわけですよ。インターナショナルマッチデイだったら、国際サッカー連盟の規定がありますから召集されても支障がないわけですが…。インターナショナルマッチデイでない場合は、海外のチームを日本に呼んでも、メンバー揃ってないわけです。

そんなインターナショナルマッチデイでもない日に日本代表の国際試合を組んでも、実はあまり意味もないことだったわけです。それを日本サッカー協会も努力をして、やっとそういう風にするようになった。Jリーグができて11年ですが、努力をして少しずつインターナショナルスタンダードに近づいてきたんです。それは多くの人たちの努力の成果だと思うんです。

LADYWEB その他で、ワールドカップ予選に向けて、日本代表に不安材料はありませんか?

KOH先生 やっぱり選手層が薄いですね。正しくは、数年前に比べれば選手層は随分厚くなったと思います。今は、たとえば中田がいなくても小笠原がいるし、高原や柳沢がいなくても久保がいる。でも、もっと必要なんです。高原や柳沢、小野、中田…彼らがいなくても、彼らの代わりを務められるバックアップメンバーは充分いるんです。だけど、さらにベンチ外を見たときに、あの選手もいい、この選手もいいというのはいくらでも挙げられますし、実際に彼らを起用しても結構やるでしょう。

ただ、確信を持てない。なぜなら、海外経験はなくても、Jリーグの試合で中盤のゲームメーカーとして素晴らしいプレーをしてくれている、ゴールもワンシーズンで10点ぐらいあげている…そういう選手が少ないからです。試合を見てて、あ、いい選手だな、と思うケースはたくさんあるんですよ。海外のクラブのスカウトも日本の選手をよく見ているようですが、でも獲得しないのは、もうひとつたくましさというか、これは化けるぞ、と思わせるような選手が少ないんじゃないでしょうか。

みんないい選手…だけど、20歳くらいの選手で「もう中田の時代じゃないよ。中田はいらない」と思わせるくらいの選手がいない。でも、海外ではどんどんそういう選手が出てくるわけです。17歳でフル代表デビューしたイングランドのルーニーとか、パルマで中田と一緒にやっていたアドリアーノとか。アドリアーノはまだ21歳なんですけど、既にモンスターなみの選手ですよね。そういう選手が日本はすごく少ない。

たとえばオリンピック代表を見ていても、大久保とか田中とか石川とか、本当にいい選手です。でも、迫力というか実績というか、何かが足らない感じ。いい選手だけど大化けしそうな逸材がいないんです。場数を踏めばもっと伸びたり成長するだろうなあ、と思う選手はものすごくいるんです。だけど、それがJリーグの試合なり、フル代表でもU-22でもあるいはU-20でも、仮にサブメンバーの試合であっても、やっぱりそうだと、やっばりこの選手の可能性はすごいと、われわれに確信と自信を持たせるようなパフォーマンスを見せてくれる選手がほしい。海外ではどんどんそういう選手が出てるんです。

去年のU-20のワールドユースを見ていても、海外の選手たちは全然U-20って気がしないです。海外には10代の終わりから20歳前後で、フル代表のレギュラーをおびやかすような存在が必ず何人もいるわけです。日本代表には、今全然いないですもんね。だからレギュラー安泰ですよね。もちろん、同じようなレベル、年齢でのバックアップ、入れ替えはあるでしょう。でも、世代闘争が少ない。これが心もとない原因です。

ワールドカップ予選でもワールドカップ本大会でも、必ず苦しい時ってあるんですよ。そのときはいつものメンバーでない連中の頑張りとかブレイクが必要なんです。それが、フランス・ワールドカップ予選のときは中田であったし。日本では、窮地に陥ったときベテランが復帰して救ってくれるんじゃないかって風潮はありますが、若い選手が急にブレイクするっていう風潮はないですよね。それが寂しいですよね。

LADYWEB ありがとうございました。ワールドカップ予選は、順当に勝ち進んでほしいですね。