R&Bシンガー兼女優のアリーヤ、若すぎる死

アリーヤ(Aaliyah Dana Haughton)
1st アルバム
『Age Ain't Nothing But A Number』
アリーヤ(Aaliyah Dana Haughton)
2nd アルバム
『One In A Million』
アリーヤ(Aaliyah Dana Haughton)
3rd アルバム
『Aaliyah』
R&Bシンガーとして、3枚めのアルバム『Aaliyah』をリリースし、また女優としては、映画『マトリックス(The Matrix)』の続編にも出演が決まるなど、類い稀な才能を発揮していたアリーヤ(Aaliyah Dana Haughton)。そんな彼女が、若干22歳という若さで、この世を去ろうとは、誰が想像できたでしょうか。もっとも将来を約束されていたエンターティナーの突然の死は、全米メディアがトップニュースで取り上げるほど、衝撃的で、とても残念な出来事でした。

8月25日、人気R&Bシンガー、アリーヤが墜落事故で死亡という訃報が飛び込んできました。私は、耳を疑いました。新曲のプロモーションビデオ撮影のため、バハマ諸島・アバコ島を訪れていた、アリーヤ。撮影後、彼女と撮影クルー一行を乗せたセスナ機は、帰国のためマイアミに向けて飛び立ったのですが、その直後に、機体は炎上し、滑走路の端に墜落したのです。彼女が最後に見たものは、海に沈む鮮やかなオレンジ色の夕陽だったかもしれません。

3rdアルバムが、R&Bチャート2位に輝き、ジェット・リーと共演した、映画『ロミオ・マスト・ダイ(Romeo Must Die)』で、女優としての才能を認められ、『マトリックス(The Matrix)』の続編の出演も決定。順調にスターダムを駆け上がっていただけに、彼女の若すぎる死が、惜しまれてしかたがありません。

彼女のキャリアは順風満帆そのものでした。ニューヨークのブルックリンに生まれた彼女が、デトロイトに移り住んだころから、すでに歌手として歩み始めているのです。6歳の時、名作ミュージカル『Annie』に妖精の役でデビューをはたします。彼女の名前、アリーヤ(Aaliyah)は、アラビア語で、「最高の地位まで上りつめる人」という意味。その名の通り、彼女の運命は、たんなるバックコーラスで終わるようなものではありません。

11歳の時には、ソウルシンガー、グラディス・ナイト(Gladys Knight)と、ラスベガスのショーに出演し、15歳でデビューアルバム『Age Ain't Nothing But A Number』をリリース。シングルカットされた『Back&Forth』『At Your Best』とともに、大ヒットを記録しました。たしかに、彼女が音楽の世界に足を踏み入れることは難しいことではなかったかもしれません。彼女の叔父、バリー・ハンカーソン(Barry Hankerson)が、多くのミュージシャンを抱えるレーベルを設立していたし、そこでR.ケリー(R.Kelly)がプロデューサーについたこもとあります。でもそれだけでは、大ヒットは生まれません。彼女が実力を兼ね備えていたからこそ、なし得たことなのです。「年齢はただの数字にすぎない(Age Ain't Nothing But A Number)」というアルバムのタイトル通り、彼女は15歳とは思えないほど、大人びたセクシーな歌声で、多くのファンを魅了したのです。

R&B界の大物、ティンバーランド(Timberland)らをプロデューサーに迎えた2ndアルバム『One In A Million』も大ヒットを記録。シングル『If Your girl Only Knew』は、200万枚を超える売り上げとなり、R&Bチャートで1位にも輝きます。その後、『ドクタードリトル(DR.DOLITTLE)』などの、サントラに参加してたりしましたが、音楽活動を一時中断。映画『ロミオ・マスト・ダイ(Romeo Must Die)』ではヒロインに抜擢され、『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア(Queen of the Damned)』に出演するなど、女優としてのキャリアも着実なものにしていました。そして、5年経ってようやく発売された、3rdアルバム『Aaliyah』は、残念なことに、彼女のラストアルバムとなってしまったのです。

人懐っこく、無邪気な性格から、“Baby girl”のニックネームで、多くの人に親しまれてきたアリーヤ。雑誌のインタビューでは、自分は家庭的な性格だと答えています。ニューヨークのクラブに出かけたり、マンハッタンのアパートで、兄と一緒にピザを食べ、ビデオを見るのが好きだという彼女。そんなインタビューの中で、今回の事故の前兆かと思えてしまうようなことを話しています。

「よく夢を見るの、自分が鳥のように空を飛び回っている夢をね。でも、その時に何かが私を驚かすと、私はそのまま空高く飛び上がって、どこかへ飛んでいってしまうの…」

監督をやりたがる俳優が多いように、俳優になりたがるミュージシャンも多いもの。ですが、両方の世界で成功をおさめることができた人は、あまりいません。そんな中で、彼女は類い稀な才能を発揮してきました。まだ22歳。もし事故がなければ、ますます大物スターの階段を駆け上がっていったことでしょう。これからのことを思うと、本当に残念でなりません。ですが、彼女はすばらしい作品を残してくれているのです。彼女が自分の名前をつけた3rdアルバム『Aaliyah』は、アーティストとして最高点に近いという評価もあります。このアルバムが、いつまでも、私たちの心に残っていることと、私は確信しています。彼女の名声とともに。

アリーヤの冥福を心から祈ります。
カオリ・ナラ・ターナー
日本人初のメイクアップ・アーティスト・ユニオン正式会員であり、ハリウッドで働くメイクアップ・アーティスト。アカデミー賞受賞作品『アメリカン・ビューティー』や人気テレビ番組『アリー・myラブ』などで活躍する他、後進の日本人の指導にも精力的にあたっている。