『X-ファイル』FBI捜査官の気になる今後

ハリウッド
テレビの人気シリーズ『X-ファイル』で、情熱的なFBI捜査官フォックス・モルダー役を演じている、ディビッド・ドゥカブニー。テレビの中で見せる、あの厳しい表情からは想像もできないほど、プライベートの彼は、ごく普通の2歳の娘を持つ父親なのです。そして、娘と過ごす時間を、もっとも幸せと感じているのです。

オフの日には、ロサンゼルス周辺で競馬に興じたり、ショッピングに出かけたり、会合に顔を出したりして過ごすディビッド・ドゥカブニー。白のTシャツに黒のジーンズ姿の彼は、ど派手な私生活をおくるハリウッドスターのイメージとは違っています。

ニューヨークで育ち、プリンストン大学で英語学を専攻した彼が、『X-ファイル』に出演したことは、かなりエキセントリックな選択だったかもしれません。ただそれ以上に、彼の演技は、エイリアンの存在がかすむほどエキセントリックだったとも思えます。『X-ファイル』の中で強烈な存在感を示した彼の元には、多くの映画会社からのオファーが殺到しました。最近、彼が主演し話題となったコメディー映画『エボリューション』でも、その存在感は強烈でした。監督も彼の演技力を高く評価しています。

そんな彼にとって、今なにより大切なことは、97年に結婚したティア・レオーニ(『ジュラシック・パーク3』に出演)と2歳の娘と一緒に過ごすことだそうです。彼の妻のティアも、彼同様に脚光を浴び始めた映画スターですから、お互いが多忙であっても、彼らは娘のために、できるだけ普通の生活をおくることを心がけています。ティアがニューヨークにいる時は、彼も時間を作り、ニューヨークにいるように努めています。77番街のスターバックスに娘と一緒に行き、温かい豆乳を一緒に飲む。そして、行き交う人々に手を振って挨拶をする。そうした時間を本当に大切にしているのです。

『X-ファイル』で掴んだチャンスを足がかりに、これから彼がどんな活躍をしていくのか…、私はとても楽しみにしていました。ところがそんな期待を裏切り、彼は『X-ファイル』を除く、すべてのドラマを降りてしまったのです。そして他の番組には、ごくたまにゲスト出演者として登場するのみとなってしまいました。

彼がドラマを降りてしまった原因は、現在、彼が原因不明の副鼻腔炎(蓄膿症)の疑いがあり、検査が必要となったためと発表されました。ただ鼻がつまっているという以外には、精神的にも、肉体的にも健康だという話なので、本当にそれだけの理由なのだろうかと、私としてはとても不思議なのですが……。ふだんの彼は、ヨガやボクシングで体を鍛えているそうなので、おそらく体のこと以外が理由なのでしょう。

ディビッドは、シリーズ番組に出演し、忙しくすることは、彼にとって、タイムカードを押して毎日会社勤めをするようなものだと考えているようです。たぶんそうした仕事のしかた、暮らしかたに魅力を感じていないということなのでしょう。

彼は今後、どのような活躍を見せてくれるのでしょうか。『X-ファイル』のモルダー捜査官のイメージが強烈すぎて、それを払拭できるのかと、心配する声もあります。でも彼は、自分のイメージが定着してしまったとは思っていないようです。また定着したからといって、それと無理に闘っていこうとはしていないようです。イメージとは、そう簡単に変わるものではありません。また、イメージチェンジのため、無理にテイストの異なる作品に出演し、失敗した俳優たちも数多くいます。

それは、時間が解決してくれるもの、と彼は考えているようです。また、イメージチェンジできるかできないか、ということより、彼がその仕事に魅力を感じるかどうかのほうが、彼にとっては大事なことのようです。ディビットは、こうもいっていました。

「自分で脚本を書いて、演出することを考えているんだ。たぶん、それが今の自分にとってもっともよいのではないかな」

『エボリューション』で彼の演技がすばらしかったように、コメディーを演じることにも、彼は喜びと憧れを持っているようです。今後の彼は、世間のイメージとは関係なく、自分が魅力を感じた仕事だけに取り組み、着実にキャリアを重ね、存在感をアピールし、そして大切な家族と多くの時間を過ごしていくのでしょう。
カオリ・ナラ・ターナー
日本人初のメイクアップ・アーティスト・ユニオン正式会員であり、ハリウッドで働くメイクアップ・アーティスト。アカデミー賞受賞作品『アメリカン・ビューティー』や人気テレビ番組『アリー・myラブ』などで活躍する他、後進の日本人の指導にも精力的にあたっている。