ハリウッドが悪戦苦闘している、「体重コントロール」

ハリウッド
ハリウッドスターが、日頃から細心の注意を払っていることのひとつに、「体重のコントロール」があります。それは、私たちが普段、体重を気にするのとはわけが違います。スターがスターであるためには、そのプロポーション、均整のとれた肉体を維持することが、必要不可欠なのです。「太ってしまう」ということは、彼らにとって死活問題。そのため常に激しい体重との戦いをしているのです。

『恋におちたシェイクスピア』で主演女優賞に輝いたグウィネス・パルトローは、新作映画で体重300ポンド(約137kg)もある女性の役を演じることになりました。そこで彼女は、役柄になりきるため、ある実験を試みたのです。映画で実際に身につける衣装を着たまま、ニューヨークの有名ホテルに入っていき、人々の反応をうかがったのでした。

「それは、とても深刻で、とても悲しい、驚くような経験でした…」

グウィネス・パルトローは、このように語っています。ホテルのロビーで、かのオスカー女優が、まったく無視されただけでなく、あからさまに嫌悪の目を向けられたのです。また、親切心から彼女を見ないようにしている人々もいました。そうすることがかえって、太っている人をますます孤独に追いこんでしまうことに彼女は気付き、とても心を痛めたのです。「太る」ということが、どういうことを意味するのか、彼女は身を持って体験したのでした。

ずっと体重が変わらない女優として有名なのが、ジュリア・ロバーツ。そんな彼女が、作品の中で、60ポンド(約27kg)も体重の増えた役を演じることがありました。衣装に工夫をして、さらに特殊メークを施すことになりました。メークアップアーティストが、彼女を“変える”間、「少し眠っていては?」と勧めた時、ジュリアはこう答えたそうです。「もし眠って、起きたら体重が60ポンドも増えているようなことがあったら、これから私は、一睡もできなくなるでしょうね」と。

ハリウッドのスターにとって、たとえ役柄のためとはいえ、「太る」ということが、精神的にも肉体的にも大きな負担となっています。こうした悩みは、多くのスターが抱えていることであり、トレーナーの指導によるダイエットを行ったり、低カロリー食を食べたりして、つねに体重と格闘しているのです。また、誰もが生まれながらのスタイルのよさを備えているわけではありません。努力を重ねて、今の容姿を作り上げた人もいます。

ジャネット・ジャクソンは、子供の頃、兄のマイケルに、「お前はロバのようで、太すぎる」とからかわれるほどでした。デビューしてからも彼女は丸々と太っていたのです。その後、1日900kcalの食事と、ボクササイズ、ジョギング、腹筋運動などを行うことで、今の均整のとれたプロポーションに得ることができたのです。ブラッド・ピットの妻、ジェニファー・アニストンも、人気ドラマ『フレンズ』に出演する前までは、パッとしないスタイルだったのですが、厳しいエクササスズと、低脂肪の食事をとることで、30ポンド(約14kg)の減量に成功しています。

スタイルのよさと優美さでトップに躍り出た女優たち、例えば、ジェニファー・ロペスやケイト・ウィンスレットなども、体重を落とすことに絶えずプレッシャーを感じています。それは、私たちの想像を超えるものなのです。

ジェニファー・ロペスは、つねにスタイルをチェックされることに疲れ果てて、「もう、たくさんだわっ!」とヒステリックになったことがありました。おかげで、あっという間に彼女の曲線美が失われてしまったのです。さいわい、トレーナーの指導により、ダイエットと、定期的なエアロビクス、ウェイトトレーニングに励むことで、元のスタイルを取り戻しましたが、今でも「朝は卵の白身だけ、昼はエビやカニ類、夜はサラダ」という食事を強いられています。

こうして、多くのスターたちは、悪戦苦闘しながら、体重をコントロールし、今の地位を維持しているのです。スタイルを崩してしまえば、俳優としてのキャリアまで失ってしまいかねません。ハリウッドでは、「太る」ということは、ガンで死ぬことや、親の死よりも恐ろしいことだと言う人もいます。だた、スターだからといって、太るということがけっしておかしなことではありません。けれど、スターであるために、彼らは日々体重を、さらには自分をコントロールし続けているのです。

最後に、ジュリア・ロバーツ、ドリュー・バリモア、ミシェル・ファイファーなどのインストラクターを務める、フィットネス・トレーナーであり栄養学者でもある、キャシー・カエラーの体重コントロール法をご紹介しておきましょう。

正しく食べるための7つの規則

1. 9対1の原理。毎日の食事の90%は、脂の少ないプロテイン(たんぱく質)、例えば魚介類、骨なしのチキン、豆類、それに炭水化物を含んだ穀物、果物、野菜、玄米、それにジャガイモを摂る。後の10%は何でも好きなものを、好きなときに食べる。

2. 明るい色の食べ物、例えば赤、黄色やグリーン等を毎日どのくらい食べているか考えてみる。そういった色の食べ物を毎日5〜7種類摂るようにする。よく考えてみれば、決して難しいことでなく、毎日摂っている果物や野菜で充分だとわかるはず。

3. 時々は、思い切り食べたいものを食べて結構。「金輪際ファーストフードやジャンクフードに手を出さない」などと考えないこと。欲望を押さえつけることは、ただ事態を悪化させるだけ。ただし思い通りの食べ方をするのは、特別の機会だけにする。

4. もし、この「特別な機会」を守れないときは、食べないこと。言い替えれば、添加剤や防腐剤が多く含まれる食品、例えば冷凍食品(特に夕食用のもの)、袋詰のクッキーやクラッカーなどは避けるべき。

5.ただノンファット・スナックというだけで、選ばないこと。そういったスナックには、糖分が多い。もし、本当にチョコレートクッキーが食べたければ、本物の素材を使ったものを選ぶ。

6.カロリー計算をしないこと。それは欲求不満を招くし、物事をネガティブに考えるようになるし、時間の無駄にしかならない。数字を計算することに時間を費やすのは、自分がダイエットをしていることをもう一度再確認し、脅迫観念にとらわれるだけ。

7.炭水化物や、乳製品といった限定された食品をとるな、という強制的なダイエット法は避ける。こういったダイエット法で、スリムな体を維持できたという証明はない。長い間にこういった方法は、健康を蝕んでいくし、好きな食べ物をまったく拒否することは、自分の健康のリズムをアンバランスにしていくだけ。

容姿を保つ4つのステップ

1. もっとも基本的な方法は、心臓を働かせること。1マイル歩き、1マイル走り、さらに1マイル歩く。これを1週間に4〜6日行うこと。できれば40分以内にこのセットを終わらせるように。

2. 週に3回、大きな筋肉を動かす。足の両面、二頭筋、三頭筋、胸、肩をたたくように刺激を与える。これらを行うには、力はいらない。腕立て伏せ、懸垂、深呼吸、それに膝曲げで充分。

3. ストレッチ。2.で行った運動の後、ヨガに似たストレッチを30秒から1分行うだけで、体の柔軟性が保たれる。

4.机にかじりついてばかりでなく、立ち上がって歩くだけでも効果がある。例え、レギュラー的に運動ができない場合でも、1日のルーティンワークの中に動くことを入れ込むだけで、骨や筋肉の衰えを防ぐことができる。また、1日の終わりに1回10分を3回、早足で歩くことができれば、よい運動だといえる。
カオリ・ナラ・ターナー
日本人初のメイクアップ・アーティスト・ユニオン正式会員であり、ハリウッドで働くメイクアップ・アーティスト。アカデミー賞受賞作品『アメリカン・ビューティー』や人気テレビ番組『アリー・myラブ』などで活躍する他、後進の日本人の指導にも精力的にあたっている。