Vol.29 クリスマス、そして年末に思う

アドベントアレンジ10月末にハロウィンが終わるとすぐ、街ではクリスマスのイルミネーションが始まりました。アメリカでは、感謝祭(Thanksgiving Day・11月第4木曜日)の後からクリスマスの飾りつけをする、というのが定番のようですが、最近では、それも少しずつ前倒しになっている、というのを聞いたことがあります。また、ドイツでは、待降節(Advent・降臨節ともいわれ、11月30日にいちばん近い日曜日)からクリスマスの飾りつけをするとのことで、4本のキャンドルを立てたアレンジを飾り、クリスマスまでの4週間、毎週1本ずつ、キャンドルに火をともすようです。ドイツに長く住んでいた私の友人は、日本で11月初旬から始まるクリスマスイルミネーションを見て、「アドベントはまだまだなのに……」と驚いておりました。

花の業界でも、モミやヒバなど、クリスマスならではの葉の出荷が、年々早くなっている気がします。10年以上前は、11月後半にならないとクリスマスを思わせる葉を入手できなかった気がするのですが、今年は、街のクリスマスイルミネーションのごとく、11月の初めには、クリスマスを思わせる葉が何種類も市場に並んでいました。12月初めには、クリスマスリースのレッスンがあり、またギフトとしてリースを承っていたので、徐々に葉を仕入れ、リースづくりに専念しました。

リース

上品なキラキラ感を感じさせるリース

例年、モミの葉をメインとしたリースをつくることが多かったのですが、今年は、モミだけではなく、葉が細くてグレーがかったブルーアイス、やや厚みがありながらも少し柔らかな感触のブルーバード、そして、グレーの実がアクセントとなるジュニパーなど、数種類の葉でつくりました。リースは手作りなので、同じ種類の葉を使っても、仕上がりが少しずつ違いますし、取り入れるオーナメントやリボンの色によっても、かなり印象がかわってきます。年ごとに、印象の違うリースをつくりたいので、オーナメントやリボン選びには余念がありません。松かさひとつとっても、大きさや形、色など多種多様です。縦長なもの、白っぽいもの、そして、ゴールドやシルバーにスプレーしてあるものなど、さまざまです。毎年、リースを華やかにはしたいのですが、やはり自然に近い色合いの松かさや、シナモンなどをオーナメントにすることが多かったのですが、今年は上品なキラキラ感が漂うグラスボールやリボンを仕入れてみたところ、レッスンの生徒さんにも好評でした。

クリスマスレッスンでは、リース、ツリーアレンジ、キャンドルアレンジをお教えしたのですが、年々リースの人気が高まってきているように思います。つくるのは少々大変なのですが、おそらく、もちがよく、仕上がった時の充実感が味わえるので、みなさんおつくりになりたいのだと思います。日本では、リースというと、まずクリスマスのリースを思い浮かべると思います。海外で、リースというと、クリスマスのリースは勿論ですが、主なものとして、葬儀用のリースがあります。以前、ドイツを旅した際、偶然、葬儀の場面に出くわしたことがありましたが、赤い色の大きなリースを供えていました。日本ですと葬儀の色としては考えられないような、とても華やかな印象の、大きなリースを飾っていました。亡くなった方が好きだった花や色などでつくることが多いようで、ドイツでは、花のマイスター試験の課題の一つにリースも含まれているくらいのようです。リースは、始まりも終わりもないため、永遠という意味があります。定かではありませんが、お葬式の時、リースを供えるのは、亡くなった方の永遠の命を表す、ということのようです。

知人へのお供え

大輪のトルコキキョウ、ラナンキュラスやカラーなど、洋花でつくったアレンジ

年末のこの季節は、テレビなどで、今年亡くなった方を特集する番組などがあります。スタジオ内には、白っぽい花が飾られていることが多く、海外のように華やかな色ではありませんが、故人が好きだった花が飾られていることもあるようです。私も、よくお供え花を依頼いただくのですが、亡くなった方が好きだった花でアレンジをつくれないかというご相談をいただくこともあります。なんとなく寂しい気持ちになってしまうようで、今までお供えのお花についてはお話しなかったのですが、最近依頼を受けたもので、とくに印象に残ったものがあるので、記してみます。

ひとつは、白に淡いピンク色を入れたアレンジです。あまり寂しくならないように、とのご依頼でした。お届け先の方が偶然私の知人でしたので、配達にうかがった際には、なんと申し上げてよいか、目に涙を浮かべてしまいましたが「きれいなアレンジをつくってくださり、ありがとうございます」とのお言葉をいただきました。このところ、真っ白な花でというご依頼が以前に比べて少なくなってきた気がします。長生き社会となっていることから、「大往生だったので、寂しくないよう淡い色を入れて」などのご依頼も多いですし、また、以前は、「亡くなったばかりなので真っ白いお花で」というご依頼も多かったのですが、最近は、身内だけの家族葬なども少しずつ増えてきて、喪中葉書などで訃報を知る場合も多いようです。そうすると、亡くなってから日数も経っているので、真っ白でなくても、というご依頼が多くもなるようです。また、私にご依頼くださる方は、洋風な印象の花で、いわゆるお供え花という雰囲気ではないものが希望、という方が多く、その時のアレンジもそのようなご依頼で、白とピンク色の洋花でつくりました。

かわいらしいお供え

天国への門をイメージしてつくったお供え花

そして、もうひとつは、50歳代でお亡くなりになった方へのアレンジ。とてもかわいらしい印象の方だったのと、お亡くなりになるには早すぎるお年なので、寂しい印象にならず、どちらかというとかわいらしい雰囲気になるよう、そして、小さめのアレンジで、というご依頼でした。どのようにしようか、迷ったのですが、少し暑い時期だったので、なるべくもちのよい花でと思っていたところ、きれいなカーブを描いた、たいへんよくもつデンファレを入手できたので、天国への門を思わせるよう、デンファレをアーチ状にアレンジし、かわいらしく仕上げました。

クリスマスの話からお供え花へと話がかわり、喜怒哀楽の「喜」と「哀」が一緒に来てしまったような話題となってしまいましたが、喜びの時も、哀しみの時も、いつも近くには花があるのだな、と思います。それもやはり、花には不思議な力があるからなのでしょう。


〜年末にアレンジなどを依頼する際のポイント〜

12月は、どのお花屋さんも大忙しの季節ですね。クリスマスリースなどの依頼は、11月後半位に、余裕をもってお願いしておくのがよいと思いますよ。思い立った時にはもう12月で、慌てて依頼するということもありますが、リースは、材料の準備もさることながら、アレンジに比べてつくるのに多少時間もかかりますから、花束やアレンジのように、花屋さんを訪ねてすぐにつくってもらえるものではない、ということを、頭の片隅に入れておいてくださいね。また、年末にお正月花を依頼する場合も、少し余裕をもって、という具合です。おまかせということであれば、ある程度大丈夫だと思いますが、年末は、花の値段も高くなりますし、希望のものが必要な場合は、あらかじめお花屋さんとよく相談して、というのがよいと思いますよ。

PAGE TOP▲