Vol.03 クリスマスが待ち遠しくなるリース、アレンジ

モスベアー11月に入ると、街にはクリスマスの飾りが見られるようになります。10年くらい前までは、12月の足音とともに、クリスマスの飾りつけをしたものでしたが、最近の日本では、ハロウィンが終わると、クリスマスシーズン到来という雰囲気になってきました。私がホテルで花の仕事に携わっていたのも、やはり10年くらい前ですが、11月31日の夜中に、ロビーやレストランに生のモミの木を搬入し、オーナメントで美しく飾り、館内に飾るアレンジメントもクリスマスを意識するようなデザインにしていました。1日違うだけなのに、12月1日にはまるで別世界のように見えたのを思い出します。その日、私たちは朝から再び仕事でヘトヘトでしたが、そんな夢のように生まれ変わった館内を見て、ホッとしたものです。そして、12月25日の夜中には“約4週間”の役目を終えたモミの木を撤去、お正月のお花に入れ替えという慌ただしい状況でした。

“約4週間”と書いたのにはちょっとした意味があります。日本では、クリスマスといっても本来の意味が忘れられがちですが、クリスマスはイエス・キリストがお生まれになった日。キリスト教では、クリスマスの約4週間前に、アドベント(降臨節:11月30日に最も近い日曜日)があり、イエス・キリストの降誕を待ち望む期間として知られています。そしてこの期間には、4本のキャンドルを立てたアドベントリースをテーブルに飾り、日曜日ごとに1本ずつキャンドルに火を灯していく、というのがドイツを始め、ヨーロッパ等では習慣となっているようです。火を灯すキャンドルが、1本ずつ増えるとともに「いよいよクリスマス!」というワクワクした気持ちも増していく、なんて素敵な習慣なのでしょう。

アドベントリース

アドベントリース

日本人にとって、「4」は少々縁起の悪い数字ですが、アドベントリースに立てるキャンドルの数は3本でも5本でもなく4本であり、それはきちんと意味のある本数なのです。また、私がホテルで花の仕事に携わっていた頃には、12月初めからクリスマスの飾りつけを始めていたというのも、じつはアドベントを意識した、意に添っていたことといえるのかもしれません。

さて、花に関連したクリスマスというと、ドアにかけるリースをまず思い浮かべるのではないでしょうか。生のモミを使ったオーソドックスなリースはクリスマスならではのもので、なんといってもモミ独特のよい香りを思い出さずにはいられません。リースは始めも終わりもない永遠の環を表すことから、葉の先端の向きは時計回りでと聞いたことがあります。

最近はモミだけでなく、さまざまな素材のリースを見るようになりました。私も以前『花時間』という雑誌に、花や実でつくる、様々なタイプのリースを掲載したことがあります。リースを約4週間飾って、クリスマスまで美しく保たせることを考えれば、やはりモミを代表するグリーンのリースということになるのでしょうが、花でつくるリースはエレガントで豪華。実でつくるリースはナチュラルで存在感がありますから、飾る期間は短くても、短期集中型的な飾りかたもあるのかもしれないと、その雑誌の仕事を通じて思うようになったりもしました。

また、ここ数年大変身近になってきたプリザーブドフラワー(生花に特殊な加工を施したもので、直射日光や湿気を避けて上手に保存すれば、1年程度そのままの状態を保つもの)のリース。ギフトとして依頼を受けることが多いですが、きれいな状態で保管され、「翌年も飾っていただけるとよいなあ」と思いながらつくっています。

パープル系のクリスマスアレンジ

パープル系のクリスマスアレンジ

そして、クリスマスカラーといえば、赤とグリーン、そしてゴールドやシルバーが定番ですが、パープルや淡いピンクなども意外と素敵なクリスマスカラーになります。

パープル系は大人っぽい雰囲気になり、小さなアレンジであってもダスティーミラー(シロタエギクともいわれ、葉がギザギザしている植物)等、シルバー系のグリーン等とあわせると、とても綺麗だと思います。12月にはアトリエでクリスマス特別レッスンをおこないますが、今年はパープル系をテーマカラーとしたリースと、キャンドルアレンジをお教えすることにしました。毎年、クリスマス特別レッスンは、どのような内容にしようか本当に色々と試行錯誤するところですが、今年はメタリックな濃いパープルの器を探しあてたことから、円錐型のキャンドルを立てて、細めのハンギングリースを吊し、お花をアレンジするキャンドルアレンジにしてみました。リースはモミでつくるオーソドックスなものですが、こちらもやはりパープル系を取り入れて、幻想的な雰囲気に仕上げます。パープルはクリスマスカラーとしては少々馴染みのない色かもしれませんが、レッスンにいらっしゃる方には、ご自身ではなかなか思いつかない組み合わせを味わっていただきたいとも思っています。

ピンク系クリスマスのツリーアレンジ

ピンク系クリスマスのツリーアレンジ

淡いピンクは少しキュートでエレガントな雰囲気になります。淡いピンクのクリスマスというと、私にとってはバレエの“くるみ割り人形”が目に浮かびます。クリスマスシーズンに必ず上演される演目で、主役である金平糖の精の衣装が淡いピンク色であることが多いから、何となく連想するのかもしれません。淡いピンクは、シルバー系とあわせても、もちろんよいですし、ゴールドや茶系とあわせても、コントラストが美しいと思います。茶系が多く入ると、少しアンティークな雰囲気が強くなります。そのあたりの色の入り具合で、随分印象が変わります。

また、ここ数年ヨーロッパでは黒もクリスマスカラーとして登場しているようで、私も少しトライしようと思いましたが、まだ上手く取り入れられずにいます。でも、これも“花の不思議な力”を借りて、今後トライできる日がくるのかもしれません。

クリスマスに関する花の話題はつきませんが、やはりこの季節には、クリスマスらしい花が身近に存在すると、より一層気持ちが高まることと思います。ご自身作のリースやアレンジなら、また格別です。そして、今年のクリスマスは、さまざまな場所でどんなクリスマスカラーが使われているか、また、リースにも注目したりして、何かと忙しいこの時期を花の力で楽しくお過ごしください。


〜クリスマスフラワーに関するワンポイントアドバイス〜

12月はクリスマスに限らず、御歳暮などをはじめ、贈りものをする機会が多いことと思います。気温も随分低くなり、花にとって優しい気候になってきましたから、きっとクリスマスらしいお花のプレゼントは、喜ばれることでしょうね。リースであれば、クリスマス間近より、ある程度早めの時期にプレゼントすると、より一層喜ばれると思いますよ。お花がメインのアレンジメントであれば、クリスマスに近いほうが、よいかもしれませんね。

また、子どもたちにとってもクリスマスはワクワクする出来事ですから、プレゼントする場合は、先方の家族構成等も考えてどんなクリスマスカラーの花にするかを選ぶのもよいでしょう。子どもたちはやはり明るい色が嬉しいのでは。そして何か目で見て楽しくなったり、子どもがアレンジに何かをほどこせる(例えば、アドベントカレンダーの要素をふくんでいるアレンジとか……)も楽しいのかもれませんね。ご年配の方は、意外と赤を好む方が多いように思います。でも、いちばん大切なのは贈る気持ちですから、Merry Christmasの心を忘れずに。

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