Vol.02 花嫁とともに作り上げるウエディングフラワー

爽やかな秋の日々ですね。秋といえば何を連想されますか。スポーツ、芸術、食欲!? さてさて、花の世界では……ウエディングの秋というところでしょうか。秋は気候も穏やかですし、祝日も多いから、ウエディングシーズンとして最適なのかもしれません。

ウエディングの花といえば、真っ先に思い浮かぶのが花嫁のブーケ。ところで、花嫁がブーケを持つようになった由来はご存じでしょうか? ヨーロッパではその昔、男性がプロポーズをする際に、野の花で束ねた花束を贈って女性に結婚を申し込んだそうです。女性は、返事が「Yes」なら花束の中の一輪を抜き取って男性の襟元に挿します。これがブーケ(花嫁が持つ花)とブートニア(花婿の襟元に付ける花)の始まりです。だからブートニアには、ブーケと同じ種類の花を使うというのもよくわかります。

そして、この由来ゆえなのでしょうか。ヨーロッパでは結婚式当日、花婿がブーケを花屋さんまで取りにいって、花嫁に渡すことも多いようです。でもブートニアはブーケから抜き取った花を襟元に挿すのではなく、花屋さんが新郎の襟元に付けられるよう作ったものをブーケと一緒に渡します。私が以前、ドイツの小さな町の花屋で手伝いをした時も、結婚式当日に花婿がブーケを取りにきていました。海外でも場所や状況により違うとは思いますが、そういうブーケ本来の意味を大切にしているであろう習慣を見て、心がホッとしたのを覚えています。“花嫁・花婿”とは上手い表現をしたもので、ウエディングドレス姿の女性にはブーケが本当に似合いますし、ブートニアを付けた男性もなかなかよいものだな、と思います。

ブーケ&ブートニアさて、前回フラワーギフトのお話をした際、お花のご依頼時には依頼主の希望をうかがいながら、こちらがアドバイスやアイディアを差し上げ、アレンジや花束の仕上がりを決めていくと申しましたが、ウエディングフラワーの場合はそういった打ち合わせがより一層重要となり、1回のみならず数回におよぶ場合もあります。そのため花嫁と一緒になにかを作り上げているように思えて、結婚式当日花嫁がブーケを持った姿を見ると、ひとつのことを一緒に作り上げてきた達成感にも似た、なんともいえない嬉しい気持ちになるのかもしれません。

昨年の秋、ウエディングドレスショップからのご紹介で、ある方からブーケ等々のウエディングフラワーをご依頼いただきました。ホテル内のチャペルで挙式、そしてやはりホテル内のレストランでの披露宴でした。当初、依頼を受けていたのは挙式用の白いブーケと披露宴お色直し用の色ブーケ、挙式の際のブライズメイド用ミニブーケ、ご両親様への贈呈花束でした。ブーケは、お好みを聞きながらドレスとのバランスを考え、そしてなによりも花嫁の愛らしいお人柄が出るようにと、アドバイスして決めていきました。

さて、贈呈花束を決める過程で「本当はお二人が作った花束がご両親様もいちばん嬉しいんでしょうね」という私の一言から、花嫁と花婿がプリザーブドフラワーアレンジを作って差し上げよう、ということになりました。私のレッスンのもと、お二人が心を込めて仲良く作っていた姿は、見ていて本当に微笑ましかったです。

披露宴のゲストにお渡しした一輪花

披露宴のゲストにお渡しした一輪花

そして、もうひとつ。「ゲストの方々も楽しめて、会場内もちょっと華やかに微笑ましくなる花のアイディアがあればよいのですが」とおっしゃった二人に、私が提案してみたことがあります。それは、披露宴会場の受付でゲストに花を一輪ずつ渡し、男性ゲストにはその花を胸ポケットに入れていただいては、ということ。きっと会場内も華やかになり、男性ゲストも意外と嬉しいのではと思っての提案でした。海外では花婿付添人が襟元に花を付けるので、そのことにも少し由来しますし、受付も華やぎサプライズにもなります。そして、女性ゲストにはコサージュのようにするなり、髪につけるなり、お好みにあわせていただければと、思ってご提案しました。

結婚式当日は、おおげさではないけれど、要所要所にささやかな花のアクセントが効いた1日となったようで、後日送って下さった挙式と披露宴の写真には……まるで物語を見ているかのように、その日の様子が伝わる写真の数々。その中には胸ポケットに入れた花とともに、笑顔が一杯の微笑ましい男性ゲストたちの写真も。使ったのは“ハロウィン”という名のバラ。この季節になったら、ゲストでいらした方々にも、お二人の結婚式でのことを思い出していただけるとよいなと思います。

私が大切にしていることは、依頼主が望む通りのことだけを実現するのではなく、そこになんらかのプラスαを加えることができればと常々思っています。例えば、「ブーケはこういうもので、贈呈花束はこの花でお願いします」「わかりました、ではそれにてお作りします」という依頼のされ方、作り方もあるかと思います。でも、星の数ほどいるフローラルデザイナーの中から、私を選んでくださったお客様には、「こういうお花もあるし、こういう方法もあるんですよ」と私なりの様々なアイディアを提案できる、でも押しつけでない話しやすいフローラルデザイナーでありたい、と思います。

お母様が庭で育てていたバラを思わせるブーケ

お母様が庭で育てていたバラを思わせるブーケ

今までウエディングフラワーをご依頼くださった方々には、それぞれ思い出があります。お母様が庭で沢山のバラを育てていて、庭にあったものと同じような種類のバラで作ったブーケを持ちたいとおっしゃった花嫁。見せていただいた庭の写真には、愛情込められて咲いた見事なバラが、まるで花嫁を思わせるように写っていました。結婚式当日、バラのブーケを持って、嬉しそうにしている花嫁の笑顔が素敵だったことはいうまでもありません。

またある時は、数か月後に日本で挙式をするからと、遠くニューヨークで私のホームーページをご覧になり、依頼してくださった花嫁もいました。打ち合わせはすべてメールでじっくりと、途中で花嫁のパソコンが壊れて大変だったこともあしましたが、だからこそ挙式当日は感動の初対面でした。またある時は、挙式の時の美しい写真をアルバムにしてお礼にいらした花嫁。そして、挙式準備中に購入した美しいウエディング雑誌を「よかったらどうぞお使いください、お役に立てば幸いです」の一言を添えて送ってくださった花嫁。思い出したらきりがない程です。

きっとこれも“花の不思議な力”があるからこそ、花嫁と一緒にウエディングフラワーを作り上げていこうという原動力となり、それゆえの思い出やご縁につながったのだと思っています。


〜ウエディングフラワーについてのワンポイントアドバイス〜

フラワーギフトの時と同様、感性の合うデザイナーにお願いできることがベストですね。ホテルやレストランですと、会場提携の花屋さんのみへのお願いとなる場合も多いとは思いますが、会場装花も持ち込みが可能なところもあるようですよ。それから、お花は季節もの。旬の花は品質が良く季節感も出るのでお薦めです。バラのように一年中出回っている花も多いですが、この季節にしか手に入らないというものがあります。もしも「ブーケにはどうしてもこのお花で!」という深い思いの花があるなら、事前チェックをして挙式の季節を決めるということも必要かもしれませんね。ちなみにラナンキュラスやチューリップ等の春の花なら1〜3月頃がいちばんきれいです。

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