せっかく、奮発して揃えた大切な着物。できることなら、長く大事に着ていきたいですよね。それには、着た後のアフターフォローが大切です。今回は札幌の呉服店、いとうやの若女将・伊藤さんにいろんな着物のポイントを教えてもらいました。
着物のお手入れ方法ですが、食べ物をこぼしてしまったときなど、着物をすごく汚してしまった場合は、すぐにお店に出して、専門の人に見てもらったほうがいいです。でも、普段の場合でしたら、まず脱いだ後、襟元や袖口など汚れやすいところに、市販の揮発性の染み取り剤をやわらかいガーゼに浸したもので、こすったりせずに押し当てるように汚れを移します。汗はのちのち変色して染みになったり、カビてしまう原因になるので、一見汚れていないようでも、着物を着たらタオルを濡らしてきつく絞ったもので、こまめにふき取ってください。それから着物の湿気を逃がす感じで、風を通すように1〜2日部屋にかけて陰干しをしてから、畳んでしまいます。また、あまり着物を着なくても、1年に1回は風を通して陰干しをしたほうが、より長持ちします。
よく着物のTPOを聞かれますが、最近は「この着物でここへ行ってはいけない」ということは少なくなっているように思います。強いて言えば、「紋」を入れた着物は格式が上がるので、どんな席でも出られる礼装になります。本来は5つ紋が礼装ですが、今は大抵ひとつ紋をつけられることが多いです。紋がついていないから改まった場に出られない、ということはありません。ただ、紋がつくだけで、同じ訪問着でも格式が上がるんです。紋は地域でいろんな入れかたがありますが、結婚している方は旦那様の家の紋を、独身の方は実家の紋を入れる場合が多いです。ところが、今は自分の好きな紋をつけることが認められるようになってきました。独身女性でしたら、とっておきの着物に「これが私の紋」と自分の気に入った紋をつけてみるのもいいですね。
着物は、その種類によって着る季節があります。5月後半から6月は単(ひとえ)、7・8月は絽(ろ)や紗(しゃ)などの薄ものを、9月はまた単で、10月以降は袷(あわせ)を着ると、一般的には言われています。けれどもこれは、着てはいけないというよりも、暑い時期に厚い生地の着物や冬の柄は変でしょう? ということなんです。根本はそういうことなのですが、現代の気候は以前と異なって、ゴールデンウィークともなるとだいぶ気温も高くなります。そういう暑いときに、まだ5月上旬だからと無理して袷を着るよりも、基本をわきまえた上で、あえて単を選んでもいいと思います。逆に夏でも今は冷房が効いていますし、車で移動するためほとんど外へでないからと、袷を着るかたもいらっしゃいます。着物の知識として、知っておいたほうがいいこともたくさんありますが、基本的に洋服のときにおかしいと思われることは、着物でも変だということです。それでも「この時期にこの着物を着てもいいのだろうか…」と、心配になったら、年輩のかたや呉服屋で相談されるといいですね。しきたりにこだわって、着るのをためらうのはもったいないこと。まずは気楽にたくさん着て、着物になじみ、着物のおしゃれを楽しんでください。