2003年3月3日

花粉症の季節である。私は数年前にアレルギーのパッチテストをした結果、ダニとハウスダストに対するアレルギーがあると診断された。つまり花粉に対するアレルギーはないわけである。

でも、この季節、いつもよりクシャミが出ることが多く、心なしか目の周りが痒い。クシャミをするたび、「花粉症じゃない?」と周囲から言われるが、「パッチテストしたけど、花粉症は大丈夫だったよ」と頑固に言い張る。

ダニとハウスダストのアレルギーを持っていると、季節の変り目など、空気が変わる時に鼻炎の症状が出る。埃っぽい、きちんと片付けてないような場所に行くとクシャミが止まらない…というなことではなく、例えばホテルなど、普段と違う場所に泊まると、夜中にクシャミが止まらなくなり、安眠できないことが多い。今の時期は確かに花粉症の季節だが、「季節の変り目」でもある。だからクシャミが止まらないことがあるのだ…私はそう思うことにしている。

花粉症は突然なることもあるというから、もしかしたら私はすでに花粉症なのかもしれないが、絶対にそれを認めない。根拠は「パッチテストをしたから」という一点だけである。

これと同じで、私は仕事に関しても「締め切りを守れなかったことはない」と思い込んでいる。厳密に言えば、この原稿だって、すでに締め切りから2日も経っているので、「守れなかったことがない」というのは真実ではないのだが、少なくとも依頼された原稿を書かずに終わったということはない(そんなことをしたら、二度と仕事がもらえなくなるから、当たり前なのだが…)。

時には、明日が締め切りという段になってもまったく言葉が出てこなくて、「今回は間に合わないかも!」と思うことがあるが、その時必ず、「イヤ、私は今まで、書けなかったことなど一度もない」と自分に言い聞かす。その根拠は、「今まで必ず最後には、書き上げて原稿を渡してきた」という一点だけである。

こういう「自分を信じ込ませる」「自分を励ます根拠を持っている」というのは、実はダイエットにも非常に関わることなのではないかと、最近思うようになった。

以前、この連載で「体重を発表する1週間の最終日に必ず体重が元に戻るのは、マインドコントロールをしているからだ」というようなことを書いたことがあるが、ようするに「私はいつも、最終日には体重が戻っているんだから、今回も大丈夫だ」と自分に言い聞かせていたということだ。

仕事ではないのだが、以前、「小説を書いてきたら、見てあげる」と、大手出版社の編集長に言われて、執筆に取り掛かったとこがある。その時、大手出版社の人に見てもらえるというプレッシャーからか、結局書き上げることができなかった。

それまでにも習作を何本も書き上げており、「書こうと思ったら、出来はともかく、必ず書き上げることができる」と信じ込むことで書き続けていた私にとって、「書き上げられなかった」という事実は重く、その後しばらく習作すら書くことができなくなってしまった。

同じ時期にプライベートなことで問題を抱えていて、そちらに気を取られてしまった…というのも理由のひとつだったかもしれないが、理由はともあれ問題なのは、私自身が「約束していたのに書き上げられないことがある」と、その後ずっと思い込んでしまったことだ。

今まで自分が支えにしていた「絶対に書ける」という自信がなくなり、「また前みたいに書けないかも」と思うことで、余計に書けなくなってしまうのだ。

先週、「甘いものが食べたい」と書いたが、気が付くと、「最近の私は甘いものが食べたいのだ」と、常に思っている自分に気が付いた。それは身体が欲しているというより、そのように思い込んでいるだけなのではないか? そう気が付いた瞬間から、嘘のようにあまり甘いものを欲しいと思わなくなった。

停滞期が続き、「もうこれ以上痩せられないかも」と思ってしまったら、多分、本当に痩せられない。「今までも、確実に体重が落ちたのだから、これからも落ちる」そう自分に信じ込ませることが、ダイエットを成功させるコツなのだと、近頃本気で思っている。