こんなことを自分の口から言うのもなんだが、まだこんなにも太っていなくて、最大の武器である「若さ」を持っていた頃、私はそれなりに「チヤホヤ」されていた。特別な美人でなくても、若いというだけでチヤホヤしてもらえる日本において、私も当然のようにそう扱われていたわけである。
あれから十数年、年齢と比例するように体重も増やしていった私は、「女は見た目だ!」と言うことを、身を持って学ばされた。イヤ、正確に言うならば、「女は見た目がよくないとダメだ」という価値観を持っている人が多い…という事実を学んだのだ。
もちろん、その頃持っていた若さという武器をなくしたことも一因かもしれないが、太り始めてからというもの、どれ程屈辱的な言葉を言われたことか! チヤホヤしてくれていた人が、普通になるのは仕方ないとしても、まともに女性として扱わなくなる人までいたりして、私のプライドは何度もぶっ壊された。
特に腹が立つのは、「お前さ、少しは痩せれば彼氏ができるよ!」などと言われることだ。私がいつ、彼氏がいないって言ったんだよ! って話である。
「彼氏いるの?」「ううん、今はいない」
というような会話の後の発言ならともかく、なぜか最初から私には彼氏がいないと決めかかったその発言! 屈辱だ! 上司に言われたら、セクハラで訴えられるような言葉ではないか。特に年齢が上がると「彼氏」が「結婚」に変化する。私は結婚を否定するものではないが、基本的に結婚をしようというつもりがない。これから「赤い糸」で結ばれた人と出会うこともあるかもしれないから、断言はしないけど、多分このまま結婚しないだろうと思っている。
それは、「結婚できない」のとは違う。現実に私にプロポーズする人がいるとかいないとか以前に、私は「結婚する気がない」のだ。これは私の人生観であり、生き方の問題である。そんな大切な問題を、「痩せたら結婚できる」「太っているから結婚できない」などという低次元な問題で語ってほしくない。
女性がひとりでは生きていく術のなかった時代ならいざ知らず、美しく着飾って「結婚」することに意義があるなどという感覚は、結婚している女性に対しても失礼じゃないか。じゃ、何か? 太っている人は結婚できないのか? 結婚とは、見た目だけが問題なのか? それとも「お前みたいに性格が悪い女は、せめて見た目をよくしろよ」という意味が言外に含まれているのか? お前は何様なんだ! 人のこと言える贅肉か!!
と、思わず興奮してしまうような屈辱を、何度も味わってきた。しかも、現実にデブな私が「結婚できなんじゃないの、しないの」と言ったところで、それは負け惜しみと受け取られてしまう。悔しい〜〜〜〜!
女性が誰でも持つ「美しくなりたい」という願望の中には、男の視線、という理由も確かに含まれているだろう。それだけが理由の女性も中にはいるかもしれない。しかし、「美しくなりたい理由」は、絶対にそれだけではないはずだ。ダイエットする理由を「健康のため」だけだというのは、それはそれで嘘かもしれないが、自分を磨いて女としてステップアップしたい気持は、世の中に女性しかなくても残るものじゃないのか?
そうでなかったら、結婚して子供も生んだにも関わらず、スレンダーな体型を維持して、バッチリメイクで決めている最近のお母様方の存在は、不気味ではないか。「女は見た目」という価値観がまかり通るこの日本社会において、持って生まれた顔と若さはどうしようもないけど、せめて見事ダイエットを成功させ、「結婚? する気ないのよ」と言っても負け惜しみにならない女になってやる!