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夕食











朝食





トロッコ電車





欅平





黒部渓谷





柳河原発発電所





お土産

法要が終ると、すぐに親族の家に向かった。そこから歩いて5分のところにあるお墓にお参りし、さらに歩いて5分のところにある海を見に行く。振り返れば後ろには「シロウマ」、前方は日本海、「小川」という名の大きな川が流れていて、非常に素晴らしい場所にお墓は建っていた。その海岸は翡翠が取れることでも有名で、「翡翠っぽい」と思われる石を、どうぞ拾って行ってくださいと言われた。

当たるかどうかはセンス次第…なんて言われたのだが、私にはどれが翡翠なのか全然わからず、適当な石を拾って持ち帰ることにする。故人の思い出話をしつつ家に戻って一休みし、その晩泊まる宿に移動していよいよ「お清め」という名の「宴会」の始まりである。富山の名物は出なかったが、カニもあるし刺身や茶碗蒸、焼き魚、煮魚、鴨など海の幸が盛りだくさんの懐石料理だ。しかも時刻は6時。駅弁を食べた切りの私のお腹は、次なる食べ物を待って多いに興奮していた。

しかし、先に述べたが出席者は全員50歳以上。中には98歳の方までいるという中で、当然のことながら末席に座る私は「接待係り」である。自分で言うのも何であるが、私はそういう時、自ら動くことを得意としている人間だ。「ではまず献杯から」という言葉と同時に立ち上がり、ビールの栓を抜いて走り出す。席に戻って私もビールを注いでもらい、「献杯」という発声の言葉で一口ビールを飲んだら、再び立ち上がって全員のグラスにビールを注ぐ。一通り回って席に着き、カニを一口食べて周囲を見渡すと、すでにグラスが空いている人がいるので、またまた立ち上がってビールを注ぎまくる。

そんなことをしているうちに、最初は「みかんさん」と呼んでいた親戚の方たちも「みかんちゃん」から「みかん!」になり、座敷の間を走り回って酒を注ぎ、写真を撮り、カラオケを入れていたら、全然食事を摂れないまま、宴会が終ってしまった。皆口々に「若いのに何て気が聞く娘ッ子だ」と褒めてくれたが、ほとんど残った自分のお膳を見て、一人ため息をつきつつ宴会場を後にすることになった。確かにダイエッターとしては、「宴会」であまり食べられないという状態は正解かもしれない。しかも走り回ったお陰で汗までかいているくらいだったから、成果は上々とさえ言える。

しかし! いくら法要のためとは言え、「旅行」だよ! 精神的故郷「富山」だよ! 昼間は普通の駅弁だよ! 
「少しは食わせろ!」と心の中で怒鳴ったのは言うまでもない。
けれど、大変お世話になった方の三回忌で、褒められるほどの働きをしたので、お腹は不満だったが精神的には満足だった。これで精神的にも不満だったら、絶対にその後食べていたと思うが、心身のバランスが取れていたため、何とかお腹をなだめることができたのだった。

翌日は同行した5人だけで前日の宴会場へ行き、豪勢な朝食でスタートした。釧路も広島もバイキングだったが、今回はお膳料理で、焼き魚、温泉玉子、茶碗蒸、そして白いご飯もあるのに何故かうどんが出てきた。昨夜食べられなかった分、残さず食べてしまった。刺身がないのが残念だったが、満足である。

故人の親戚はすでに帰ってしまったので、後の時間をどう使おうと私たちの自由だと言う。帰りの電車は午後3時だし、皆「せっかく富山に来たのだから、どこか見たい」と言うと、黒部渓谷まで車で30分。しかも渓谷内を走るトロッコは11月一杯で終るので、この時期に見るのは最高ですよ! と地元の人に勧められ、そこへ行くことにした。

トロッコ乗り場は宇奈月温泉にあった。「宇奈月温泉って富山なんだ」と無知ぶりを発揮し、長蛇の列に並んでチケットをゲットし、「右側の景色がいい」と聞いたので、走って右側の席を確保してトロッコは出発した。山間の中を行くトロッコから見る景色はとてもキレイで、紅葉の時期ならばさぞや見応えがあるだろうと思われたが、残念ながらすでに紅葉は終っており、しかもやけにトンネルが多い。普通の車両には窓がないのだが、私たちが乗ったのは「リラックス車両」とかいうもので、しっかり窓が付いていて寒くない。私はトロッコの何とも言えないリズムにつられ、いつしか眠りこけていた。

そして気が付くと終点の欅平である。何のために走ってまで右側の席を取ったのやら……と、走らずに右側に座ったおじさん軍団に冷やかされてしまった。とんぼ返りで宇奈月温泉に戻らなければ、帰りの電車に間に合わないということで、欅平の展望台で少々美景を堪能し、再びトロッコに乗る。

「みかんが寝ないように、普通車両にしたぞ」
と言われてトロッコへ行くと、行きと違って空いていたため、私たちの貸し切り車両であった。もちろん窓などなく、寒風に晒されるので寝るなんてトンでもない状態である。行きはまったく見ていなかったのでわからなかったが、ささやかながら紅葉も残っているし、ダム建設の時の名残がいくつもあって、確かに観光名所なのだ。貸し切りということもあって、私は思わず「風の中のす〜ばる〜〜♪」などとアカペラで歌い、朝から飲みまくりのおじさん軍団から、「いいぞ〜!みかん!」と喝采された。まるっきり宴会のノリだ。

宇奈月温泉に着くとすでに昼食の時間を過ぎていた。とりあえず駅前の売店と食堂が一緒になったような店に入る。「富山だからマス寿司が食べたい」と思ったのだが、それだけではつまらないのでウドンにする。とてもまずかった。一切れづつ頼んだマス寿司もまずかった。やはり観光地で観光客用の店で「美味しいもの」を期待するのは間違っているのだと痛感。マス寿司は駅でも売っているが、私は以前、叔父から「マス寿司の上手い店」があると聞いていたので、お土産はぜひその店の物を買おうと、わざわざ叔父に電話をして、その店のことを聞くことにした。するとその店は富山駅の近くにあり、駅売りはしていないという。何だか美味しいものにはつくづく見放された感じの今回の旅行だが、どうしても食べたくてマス寿司を買い、やはり名物のホタルイカとかまぼこも購入して、ようやく帰路に着いた。

宴会では食べられなかったとは言うものの、2日目には朝からたらふく食べ、昼も文句を言いつつウドンとマス寿司を食べ、最後に東京駅で夕飯まできっちり食べた私は、家に着くなり洋服を脱いで、体重計に飛び乗った。釧路、広島ではほとんど変化がなかったが、今回は「ちょっと食べ過ぎた夜」の体重になっていた。

「宴会で飲み食いできなかったのになぜ?」
と体重計に向かって問いかけたが、理由は明白である。だって3食しっかり過ぎるくらい食べたのだから。本当に旅行というのは日常から切り離された感覚になるので恐ろしい。もちろん、日常に戻ってすぐ、体重も戻したことは明記しておく。

それにしてもせっかく富山に行ったのに、朝食以外はほとんど「美味しいもの」を食べられなかったのは残念である。それとも、ダイエッターとしては「もったいないから食べちゃおう」と思えないほうが幸福なのか。複雑な思いにかられる「富山行き」であった。