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広島風お好み焼き





















地図によれば歩いてもいける感じなのだが、せっかく買った一日乗車券を無駄にしたくなかったので、一駅だけ路面電車に乗り、近くで下りた。そして喫茶店に入ってコーヒーを飲み、ついでに「お好み村で、お勧めの店ってありますか?」と定員さんたちに聞いてみる。そこのお店にいたのは若い人ばかりで、全員が「Hというお店がいいですよ」と言うので、そこに行くことにした。

「お好み村」というくらいだから、お好み焼きの屋台がずらりと並んでいるとか、アーケードの中にお好み焼き屋がいっぱいあるという雰囲気を想像していたのだが、実際には一軒のビルの2階に、たくさんのお好み焼き屋があるだけだった。反対に言うと、ビルの2階にあるだけだというのに、なぜかその路地の入り口に大きな看板が出ていて、かなり「観光用」という感じがした。勧められたHという店はすぐにわかったが、考えてみれば、ひとりでお好み焼き屋に行くというのは初めての経験で、一枚丸ごと食べるなんてことも、したことがない。どのくらいの量を頼めばよいのか、見当もつかないので、結局一番ノーマルな「広島風お好み焼き」というのを頼んだ。そこのお好み焼きは、特別おいしくもまずくもなかった。ひと言で言うなら「普通」。
やっぱり、広島に行ったらお好み焼きでしょ!
と行く前から楽しみにしていたので、何とも言えない気分だ。本当ならビールでも飲みながら食べたいところだが、グッと堪えて、ただひたすら大きなお好み焼きを食べ続けた。結局その日は、原爆関係とお好み焼きのみで終ってしまった。JRに対する怒りのお陰で、あまり食べなかったので、少なくとも結婚式用に持ってきた服が入らないことはないだろうと、そちらの面では安心して、私はいつもより早めに寝ることにした。

次の日はとてもよい天気で、ホテルの窓から見える景色も素晴らしく、とても気持ちがよい。朝食は弟夫婦とホテルで一緒に摂る約束をしていたので、早い時間にラウンジへ向かった。またまたよくあるバイキング形式だったが、つい先月、釧路で「もったいないから食べよう」とバカなことをして反省したばかりの私は、普通の量に抑えることに成功した。すこしキツ目のスーツが、苦しくなっては困るのだ。

私は4人兄弟の3番目だが、上の二人は海外在住のため、我が家からは両親と私のみが出席し、奥さんのほうもご両親と兄上だけ。それに弟の仕事仲間がふたりと、計8人しか列席しないので、私が立会人を務めることになっていた。両家を代表して立会人をするのだから、できるだけ格好よくありたいと思うのは当然であろう。式の準備のため式場に向かう弟たちを送り、私と両親は少し余った時間で「縮景園」に行くことにした。広島藩主の別邸だったと言うそこは「幾多の美しい景色を縮めて表現した」という名前の通り、とても静謐で、趣きのある場所だった。もしも広島へ行くことがあったら、ぜひ行くことを勧めたい。

美しい景色の中ですっかり心穏やかになった私たちは、いよいよ今回のメインイベントである結婚式へ。数年前にできたばかりというその教会は、「結婚式用」であるため、とにかく万事がイベント風だ。写真を撮る場所も何か所も決まっていて、式の最初から最後までプロのカメラマンが撮りまくってくれる。姉や兄もすでに結婚しているが、弟の結婚というのはなんとも感慨深いもので、10年付き合った女性が誓いの言葉で涙ぐむのを見て、思わずもらい泣きしてしまった。

式の後、再びホテルへ戻り、8人だけでお食事会となった。中華のフルコースである。普通の披露宴の場合、大抵フレンチか和食、中華のフルコースで、最初にシャンペン、それから白ワイン、赤ワイン、さらにビールと、それも長い時間をかけて延々飲み続けることになる(飲まなければいいんだけど)。けれど今回はさほど長い時間ではないし、最初にシャンパンは出たけど、後はビールだけ。しかも披露宴とは違うので、主賓の挨拶とか友達の歌とかもなく、ただ普通に食べるだけである。私は奥さんの兄と、弟の仕事仲間に挟まれ、順にビールを勧められるという恐ろしい席に座ってしまったが、気を使って会話を弾ませることに力を入れていたら、食べるのが遅くなり、最後のほうの料理は、ほとんど一口か二口食べるだけになってしまった。お蔭様で、食事会が終った時には、あまり満腹状態ではなく、とても料理が美味しかっただけにかなり悔いは残ったが、ダイエッターとしては幸いだった。

出だしから躓き、ろくに観光もできず、修学旅行生に揉まれ、「お好み村」は観光客用であまり美味しくないと弟の嫁に後から聞かされ、一日乗車券は無駄になり、中華のフルコースもすべて平らげることができなかった。けれど、原爆資料館ではさまざまなことを考えさせれ、小説の舞台となった地を生で見ることもでき、結婚式では涙し、素晴らしい景色を堪能した。それにホテルの中華も、残してしまったけれどとってもとっても美味しかった。最後にはお嫁さんの母親からもみじ饅頭をいただいて、後日食べたらそれも美味しかった。

そんな悲喜交々な旅行から帰ってみると、まったく体重に変化はなかった。披露宴に出席したり、旅行へ出たりすると1kg以上太るのが当たり前の私にしては、快挙である。怒ったり泣いたり感銘を受けたり気を使ったりと、精神的に忙しかったのがよかったのかもしれない。でも、今度はゆっくり広島観光をしてみたいなぁと、切に願っている私である。