L.A、ベガス、ロンドンに続き、今度は北海道の釧路に二泊三日で行ってきた。私の知人が、釧路に知り合いがいて、毎年同じ時期に「お呼ばれ」していると聞き、今年初めて参加させてもらったのだ。

ダイエットをしていてとても辛いのは、忘年会や新年会、誕生日といった「イベント」の時である。周囲は皆飲んだり食べたりしているのに、自分だけガマンしたり、相手は好意で勧めてくれているのに断ったりするのは、とても心苦しい。それらはすべて、「ダイエットの敵」とも言える「誘惑の時間」だと思うのだが、それと同じくらい辛く、ダイエットを忘れさせるくらい誘惑されるのが「旅行」ではないだろうか。

L.Aでは兄の家ということもあり、規則正しい食生活は乱されず、甥っ子と遊んでカロリーを消費した。ベガスはダイエット塾の七尾先生が一緒だったため、外食ばかりでも「ドカ食い」などできず、しかもあちこち歩いたのでやはりカロリーを消費する。ロンドンでは監視もおらず、外食ばかりだったが、とにかく一日中観光して、やたらに歩いたせいか、あまり太りはしなかった。

そして今年初の国内旅行である。北海道には札幌と小樽に以前行ったことがあり、地理に弱い私は釧路も札幌みたいな町なんだろうと、何となく勝手に思っていた。

ロンドンの時と同じく、一緒に行く人は皆、ゴルフ三昧なので、私は昼間、一人で釧路観光ということになるだろう。夜はあちらの人が接待してくれるというので、せいぜい昼間歩き回って、カロリーを消費しておかなくては! と私は気合を入れた。

ところが、である。釧路の町そのものは決して観光地ではなく、「釧路観光」といえば、摩周湖とか阿寒湖とか屈斜路湖とか湿原とか丹頂鶴とか、とにかく自然のものばかりで、それらはとても一人で歩き回って見られるものなどではなかったのだ。なので、あちらの方が私専用に車を用意してくれて、私は一日中、車に乗って摩周湖から屈斜路湖へ向かったりすることになったのである。これではほとんどカロリーを消費することなどできない。ただひたすら食事のポイントを抑えるのみである。

ところが、私の「案内役」を勤めることになった男性は、徹底的に接待することに決めていたらしい。観光地に行けば、どこにでも「揚げイモ」とか「トウモロコシ」とか、「ソフトクリーム」とか、とにかく「北海道名産!」みたいなものがやたらめったら売っている。摩周湖に行けば、「ここのパンは美味しいですよ」とパンを渡され、屈斜路湖では「やはりひとつくらい揚げイモ餅を食べましょう」と言われ、釧路に着いてから半日の観光でパン、イモ餅に続き、トウモロコシ、温泉玉子を買ってもらった。私は、大変失礼と思いつつ、買ってもらったそれらを一口だけ食べて、あとは袋に入れて持ち帰ることにした。

大体が、釧路に着いてまず、昼食を摂っているのである。仮にポイント数のことを考えなくても、全部食べることなどできやしない。9月の頭だというのに釧路はすでに15度くらいしかなく、しかも雨が降っていてとても寒かったのだが、大自然の中で食べるトウモロコシや温泉玉子は、何だかとても美味しく感じる。

「霧の摩周湖」と言われるが、その日は霧が晴れて、摩周湖もとてもキレイに見えた。
「摩周湖がキレイに見えるなんて、運がいい」
なんて言われると、気分も良くなって、ついでに気持ちも大きくなって、「せっかく北海道まで来て、太ることを気にして食べないなんて、もったいない」という気がしてくる。

これが旅行先の恐ろしい「誘惑」である。ここで私が誘惑に負けず、とにかく食べないようにしたのは、夜の宴会のことを考えていたからだ。毎年釧路に来ている人によれば、宴会ではカニとか刺身とか、とにかく海の幸が「これでもか!」っていうくらい出てくるという。その席で多大なガマンを強いられるくらいなら、この「間食」をガマンした方がマシだと思ったのだ。

果たして夜の宴会は、ものすごかった。イヤ、基本的には東京で食べる懐石料理と内容は変わらないのだが、二人につき1匹のカニが出た。しかも私と一緒に食べるはずの人は、
「私はいつでも食べられるから、みかんさんどうぞ」
と言って、ほとんど手を着けない。

さらには現地の人が皆同じことを言って、カニ味噌がいくつもいくつも回ってくる。それ以外にも刺身、魚の煮物、サンマの握りなど、新鮮な海の幸がどれもこれも美味しそうな顔をして、テーブルに並んでいる。カニのポイントはさほど高くはないのだが、それにしても1匹食べるのはどうだろうか。そして、懐石料理のメニューとはまったく関係なく、トウモロコシの山が4皿も出てきたのには度肝を抜かれた。

一人前の懐石料理を食べる上に、トウモロコシまで追加されては、どんなにポイントが低いものばかりでも、明らかに食べすぎである。その上、お酒も勧められる。

私は前もって、一緒に行く人たちに「私はお酒があまり強くないってことにしてね」と頼んでおいた。一緒に行った人たちは、もちろん私がとってもお酒に強い事を知っている。でもって、一緒に行った人たちはお酒が飲めない。
「私より、みかんが強いから、彼女に飲ませて」
なんて暴露されては、たまったものではないからだ。

その約束は、きちんと果たされ、誰も私に無理やりお酒を勧めるようなことはなかった。しかし、私自身、お酒が嫌いじゃないのである。しかもお酒のツマミには最適なものばかりが並んでいるのである。ここでガマンするのは、大変辛いものがあった。お酒を飲まない人にはまったく理解できない辛さだと思うが、「美味しいものとお酒」というのは、本当に「至福の時」なんである。

それでも私は、これをグッとガマンした。それはロンドンで思わず飲みすぎたという失敗があったからだ。短期間に同じ失敗を繰り返すのは、あまりに愚かである。もしもそれがなければ、多分私は食事の美味しさに我を忘れ、ガンガンビールを飲んでいただろうと思う。本当に意志が弱いのである。

早い時間から宴会が始まったので、二次会でカラオケに行っても、終ったのは10時頃だった。ホテルに戻った私は、いつもよりゆっくりお風呂に入り、ベッドの上ではあるが体操をし、あまりすぐ寝るようなことはしなかった。ホテルには体重計がないので、どんな結果になっているかわからなかったが、とりあえず大きな「誘惑」はされなかったことで、自分的には「よくやった」という気分だった。
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摩周湖