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コベントガーデン










コベントガーデン











全粒粉パン








トラファルガー広場
『マンマ・ミーア』の劇場付近で昼食を摂ることにした私は、「手軽に食べられる、安いお店」を探した。劇場の近くは渋谷や銀座のように栄えたところで、食事ができるお店も多いのだが、そのほとんどはオープンカフェで、先ほどの店同様、全粒粉のサンドイッチがメインのようだ。他には「Italian」という看板が目に付く。私はよさそうなお店を見つけてはメニューを確認したのだが、どれも日本の感覚で言ったらとても高い。いくら旅行中とは言え、貧乏旅行なのであまり昼食になどお金を掛けたくないのだが、サンドイッチと飲み物で軽く1500円を超える値段なのだ。結局私は、『Pizza Hat』に入ることにした。そこなら大して高くないだろうと思ったからなのだが、スパゲティを食べようとして注文したつもりのグラタンと、セブンアップのスモールを注文して、1400円ほどだった。何のための『Pizza Hat』だよ! と頭にきつつ、観劇に行く。

『マンマ・ミーア』はロンドン発のミュージカルで、全曲アバのヒット曲を使用している。小学生の頃アバファンだった私は大興奮で、今度は『オペラ座の怪人』を観るため、地下鉄でふた駅のところを踊りながら歩いた。多分、傍目にはかなり異様に写ったと思う。

皆と合流して、観劇前にイタリアンレストランで食事を摂った。ここでもワインを一本空ける。連れの中にはミュージカルを初めて観るという人もいて、観劇後は感想を言い合いながら再びビールを飲んだ。

次の日はバッキンガム宮殿や大英博物館を見て回り、昼食は公園で売っていた全粒粉のサンドイッチとコーヒー。とにかく売っているサンドイッチは全粒粉のものばかりで、白いパンにはお目にかかれないのだ。

3時に『ライオンキング』を観るために皆と合流した。日本でも観ているが、もしも誰かに「1本だけお勧めして」と言われたら、私は迷わずこの作品を推すというくらい、素晴らしいミュージカルで、一緒に観た人たちも大興奮して喜び、踊るように日本食の店に行く。高級鉄板焼き屋でフルコースを食し、ビールを飲み、ステーキまでも頬張って、かなり満腹になった私は、それでもこう考えた。「だって今日は、相当歩いて、カロリーを消費しているから大丈夫」と。泊まっていた家には体重計がなかったので、私は勝手にそう考えて、安心していたのだ。

次の日もさまざまなところを見て回った。観劇の予定もなかったので、朝10時から夕方の6時まで、昼食の時以外はずっと歩いていた。昼食は駅に隣接しているデリカで、またまた全粒粉のサンドイッチだ。どんな種類の店を覗いても、全粒粉ばかりである。

そして夜。再び皆揃って日本食の店に行く。いわゆる居酒屋のようなところで、刺身やサラダ、揚げ物など、日本で飲みに行った時と変わらないメニューが並ぶ。最初に一杯生ビールを飲み、それから日本酒に移った。ロンドン最後の夜である。私はダイエットをスタートしてから初めてというくらい、酔った。そして家に帰ると、知人がまたまた高級ワインを振舞ってくれる。酔っ払った私は、「控えめに飲もう」などという気持ちはまったく吹き飛んで、久し振りに思い切りビールを摂取してしまった。

次の日も出発ギリギリまで観光し、昼食は露店のような店でロンドン名物のジャケットポテト(ベイクドポテトにチーズを乗せた物)を食べた。ニューヨークなども露店が多いが、大抵ハンバーガーやホッとドックなどジャンクな食べ物が主で、そういった意味でも、ロンドンの食事は質素なイメージだ。『ケンタッキー・フライドチキン』も見かけたが、店の表にチキンの写真は出ておらず、サラダバーのポスターが張ってある。特に「ダイエット」を意識しなくても、基本的に低カロリーのものばかり食べているのかもしれない。

とにかくひたすら歩き、ひたすら食べて飲んだ4泊6日のロンドン旅行はこうして幕を下ろした。機内食もしっかり食べた私は、帰宅するとすぐに体重計に乗った。500g増えていた。こんな食生活をして500gしか増えなかったことに安堵し、荷解きもせず、「ロンドン打ち上げ」と称する会に向かった。一緒に行った人たちと、お寿司屋に行く約束をしていたのだ。そこでもビールを一杯飲んだが、食事は控えめにした。なぜなら、たった500gしか太っていないというのに、洋服が苦しかったからだ。もしかしたら、まだ数字に出ていないだけで、私の体は太る方向に向かっているのではないか。そう思ったからだ。

そしてロンドンから戻ってすぐに、二日続けて仕事の人と会食があり、「懐石料理の二連発、お酒付き」という恐ろしい行為をした結果、なんと2kgも体重が増えてしまったんである! 久し振りに見た「55」という数字。200gづつ、控えめに減らしてきた体重が、10日間で一気に増えたことに、私はつくづく自分の肉体の「太りやすさ」に腹が立った。間違いなく、太った原因はアルコールである。けれど、アルコールを毎日飲んでも、外食がほとんどであっても、太らない人は存在する。

けれど私は、外食が続いたり、アルコールを毎日摂取すれば必ず体重に現れる体質なのだ。その証拠に、「55」という数字に焦って、その後、かなり食事に気を付けて、アルコールを一切摂らなかったら、1週間もしないうちに元の体重に戻すことができたのだ。1年間のダイエット生活の中でも、お酒を飲むことはあったが、何日も続けて飲んだりはしなかったし、おつまみにもかなり気を使っていたからこそ、体重に影響することがなかったのだということを、私はすっかり忘れていたのだ。

そして「飲んだ分、歩いたから大丈夫」、「連載中も飲んでいたけど太らなかったから平気」と、自分に都合のいいように考えて、その場の楽しさに任せ、好きなだけ食べて飲んだ結果が、これなのだ。

連載中、目標は達成しなかったものの、大きなリバウンドもなく、一応順調に体重を落とすことができた私は、「自分が太りやすい体質である」ということに対する認識がなくなってしまっていた。今回はすぐに体重を戻すことができたが、もしもその後も会食の予定などが入っていれば、そのままどこまでも太っていたかもしれない。どんなに開放的な気分になっても、どんなに楽しい場であっても、自分の体質を心に刻んで、摂生できるようにならなくてはと、自分の弱さを改めて認識した私は、そう決心した。

もしかして、イギリスの人って、サプリメントやダイエット食品に頼らず、アメリカ人よりずっと意志の強い国民性なのかもしれない。