野茂、イチロー、松井など、日本人選手の活躍により、一段と注目されるメジャーリーグ。連日、スポーツのトップニュースとして、報道される盛り上がりようです。一度でいいから、メジャーリーグの試合をこの目で見てみたい! そう思う人は多いのではないでしょうか。ならば、行ってみましょう。1か所にいながらにして、いつくものチームを見ることができる。選手との距離が近くて、サインを直接もらえる。そんな嬉しいことが実現可能な、スプリングトレーニング(春季キャンプ)に! ファンなら、一生に一度は行ってみたいという、“春季キャンプ地めぐり”の楽しさを紹介するため、LADYWEB.ORG編集部が、アリゾナ州フェニックスを訪れました。

スプリングトレーニングとは

日本のプロ野球同様、メジャーリーグでは、レギュラーシーズンが始まる前に、どのチームもスプリングトレーニング(春季キャンプ)を行います。広いアメリカ50州の中でも、キャンプ地はフロリダ州、アリゾナ州のたった2州。どちらも、キャンプが行われる2月中旬〜3月でも、温暖ですごしやすい気候の場所なのです。

フロリダでは、松井(秀)が所属するヤンキース、松井(稼)が所属するメッツ、野茂、石井が所属するドジャースなど、18チームがキャンプをはり、グレープフルーツリーグと呼ばれています。アリゾナは、イチロー、長谷川が所属するマリナーズ、高津が所属するホワイトソックス、大塚の所属するパドレスなど、12チームがキャンプをはり、カクタスリーグと呼ばれています。カクタスとは、サボテンのことです。

今回取材してきたアリゾナの場合、州都であるフェニックス周辺に9チーム、南に約95マイル(152km)ほど離れたツーソンで3チームがキャンプを行っています。それぞれのキャンプ地には、メインとなる球場の他、3、4面のサブ球場があり、もちろんどれも天然芝のグラウンド。こうした、充実した設備の中で、メジャーリーガーは練習をしているのです。

キャンプ地をめぐる

メジャーリーグでは、2月中旬からキャンプが始まりますが、野手組は、バッテリー組より1週間遅れてキャンプインします。そして、野手組のキャンプインから1週間もしないうちに、オープン戦が始まるのです。日本とは違い、キャンプイン前に体が出来上がっていることは当たり前ですし、試合の中で各自調整していくというスタイルだからこそ、すぐにオープン戦が始まるのです。

オープン戦は、グレープフルーツリーグ、カクタスリーグ、それぞれのリーグ内で行います。試合は、ほぼ毎日ありますし、他チームとの試合ではなく、紅白戦が行われることもあります。マリナーズvsカブスといった、レギュラーシーズンでは、実現しない対戦を見ることができるのも、オープン戦ならでは。アリゾナでは、各チームのキャンプ地がそれほど離れていないので、レンタカーを借りるのがいちばん効率的です。または、「私はマリナーズだけが見たい」というのであれば、スタジアム周辺にホテルも多くあるので、そこに長期滞在して、じっくり見てみるのもいいかもしれません。とくに、アリゾナ州ピオリアは、マリナーズとパドレスが同じ場所でキャンプを行っているので、イチロー、大塚を見たい人には最適です。

また、各キャンプ地マップ、スタジアムへのアクセス、オープン戦スケジュールなどが掲載されている『Baseball Yearbook Spring Trainig』は、キャンプ地をめぐるのに大変便利です。見つけたら、ぜひ買っておきましょう。

いざ、オープン戦に

オープン戦が行われるスタジアムは、日本でいうところの地方球場ですので、それほど大きくありません。今回訪れた、ピオリアスタジアムも、スコッツデールスタジアムも、7000〜8500席(+芝生席)しかありませんし、スコアボードもスコアのみを表示する、いたってシンプルな球場です。スピードガン表示もありません。

それでも、晴れ渡った青空と、見事な天然芝のグランド。それだけでも、まず感動を覚えます。さらに、バックネット裏以外の内野スタンドには、ネットが張られていないので、とても眺めがよいのです。ボールが飛んで来て危険かもしれませんが、ファウルボールはもらえるので、グローブを持参して、キャッチを試みましょう。見事ダイレクトチャッチをすると、周囲から賞賛の拍手がもらえます。

また、なんといっても、選手と近いというのが、とても魅力です。日本の主な球場と違い、座席の最前列はグラウンドと同じ高さになっています。ファウルゾーンも広くないので、手を伸ばせば届きそうなくらい、選手を近くに感じることができます。

ここで、観戦にあたって、準備しておくとよいものをご紹介します。まずは、ボールとペン。これはサインをもらう時に必要です。オープン戦では、選手にサインをもらえるチャンスもあるので、ぜひ用意しておきましょう。ボールは、スタジアム内のグッズショップでも売っています。次に、双眼鏡。憧れの選手をよく見たいという人には必需品です。カメラ。スター選手を間近で撮影できる、絶好のチャンスです。日焼け対策。3月といえども、日差しは強烈です。日焼けをしたくない人は、帽子やサングラス、日焼け止めクリームで、紫外線対策が必要です。最後に、チームについて勉強しておくこと。例えば、毎回イチローが打席に入るわけでもありませんし、野茂がまったく投げない試合もあります。いくら野球が好きでも、知らない選手ばかりでは興味も半減してしまいます。事前に、ザッとでもチームの情報に目を通しておくことをお勧めします。

憧れの選手から、サインをもらおう!

オープン戦のいちばんの魅力は、なんといっても、選手との距離が近いこと。間近で見ることができるだけでなく、緊張感のあるシーズン中と違い、選手も気軽にサインに応じてくれるのです。とくに、試合前はサインをもらう絶好のチャンスですから、なるべく早めにスタジアムに入っておきましょう。プレイボール直前は、スタジアムへの道も渋滞しているので、サインどころか、試合にも遅れてしまうかもしれません。

サインをしてもらうのは、色紙ではなく、ボールやグッズが基本です。まっさらなボールとペンを準備し、内野スタンドの最前列(とくにベンチ上)、ブルペン、サブ球場への通路で選手を待ち構えます。オープン戦のスタジアムは、どこでも移動可能ですから、試合前は自分の席とは関係のない通路の最前列にいても問題ありません。個人的な感想としては、ビジターチームのほうがグラウンドにいる時間が長いので、狙い目かもしれません。ただ、必ずしもスター選手がすぐにやって来てくれると限りませんので、いろいろな選手からサインをもらってみましょう。そのためには、チームの選手について、あらかじめ勉強しておくことが大切です。

もちろん、サインがもらえるだけではなく、間近で写真を撮ることもできるし、声をかけることもできます。それがレギュラーシーズンとは違った、オープン戦ならではの雰囲気なのです。私は、イチロー選手がサインをしている群れの渦中に飛び込んで撮影を敢行したのですが、モミクチャにされて、ピントが合いませんでした。でも、手を伸ばせば触れるくらいの距離にイチロー選手がいることに感激しました。

スタジアム全体から感じられるメジャーリーグ

オープン戦といえど、プレーをしているのは、全員メジャーリーガー。随所に、メジャーならではのパワーとスピードを目の当たりにすることができます。また、試合前のアメリカ国歌斉唱や、7回表終了後の「Take me out to the ball game(私を野球に連れてって)」の合唱などは、メジャー観戦気分をグッと盛り上げてくれます。

さらに、「これがメジャーリーグなんだ」と感じさせてくれるのが、観客の雰囲気です。ピーナッツを食べたり、ビールを飲んだり、わいわい騒いでいるように見えても、彼らはちゃんと試合を見ています。一球一球に一喜一憂し、素晴らしいプレーには、心からの拍手。本当に野球が好きなんだということがよくわかります。その他、ピーナッツやホットドックを食べてみたり、グッズショップをのぞいてみたり、ぜひ、あちこち見て回ってください。スタジアム全体から“メジャーリーグ”を感じることができるはずです。

サンフランシスコ・ジャイアンツがキャンプを行う、スコッツデールスタジアム。






シアトル・マリナーズ、イチロー選手。






サンフランシスコ・ジャイアンツ、ボンズ選手。






メジャーリーグのスタジアムは、こんなに選手との距離が近い。






ベンチ上で、サインをもらおうと、待ち構えるファン。






サイン攻めにあうイチロー選手。彼の人気は、本当にすごい。






スタジアム内で売られているグッズ。

写真撮影/LADYWEB.ORG編集部・Yutaka Ishiyama 写真提供/フェニックス観光局、スコッツデール観光局