6月30日に閉幕した日韓共催のワールドカップは、私たちに多くの感動とその魅力を伝えてくれました。なぜサッカーがこれほどまでに世界の人々を熱狂させるのか、今回の開催を通して初めて、その理由を実感された方も多いと思います。また、初めてその魅力に触れたからこそ、のめり込んだからこそ、ワールドカップをもっとよく知りたいという読者の方も、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、ワールドカップの余韻が冷めやらぬ今、今回の大会について、KOH先生に総括をしていただきました。心に残ったあの試合、深く知りたいあのプレー、そして誰もが疑問を感じたチケット問題や、韓国戦ミスジャッジ疑惑など、LADYWEB編集部の質問に、KOH先生が明解かつストレートに答えてくださいました。

LADYWEB 今回のワールドカップは、今までのワールドカップに比べて、どうでしたでしょう?

KOH先生 特にヨーロッパのチームにとっては不本意な大会だったと思います。ヨーロッパのチームは、5月15日くらいにスケジュールが終わって、5月15日はチャンピオンズリーグのファイナルだったのですが、それからワールドカップまで、2週間くらいしか期間がなかったわけです。
普段ならばワールドカップは6月の中旬から始まるんですけども、今回は梅雨の時期だから前倒ししたんです。だから、事前の準備が充分できなかったし、疲労も取れていないし、気候にも慣れていない。選手の怪我が多いのも、そのせいだと思います。

LADYWEB セネガル、トルコ、アメリカなど、決勝トーナメントに残ってきたチームに新しい顔ぶれがありました。その一方で、フランス、ポルトガル、アルゼンチンなど、優勝候補と言われながら決勝トーナメントに残れないチームもありました。決勝トーナメントに残ってきたチームの質などは、いかがですか?

KOH先生 セネガルとトルコについては、セネガルは初出場ですし、トルコは2回めの出場ですが、48年ぶりの出場なので、初めての出場みたいなものですよね。彼らは非常にいいサッカーをしていたという感想があります。もちろん、ベスト8に残る価値のあるチームだったと思います。
セネガルは、去年の秋、フランスで日本と戦って2-0で日本を下していますから、セネガルは、なかなかいいよ、というのを知ってる人も多かったと思います。でも、トルコがここまでいいチームだとは思っていなかったのではないでしょうか。そのトルコに日本が負けたわけで、日本の皆さんはガッカリしているところもあると思うのです。ブラジルとかイングランドに負けたのだったら溜飲も下がるのでしょうけれども、ダークホースというか無名のトルコに負けたということで。

アメリカについても、アメリカには4大スポーツがあって、サッカーは決してメジャーではないのですけれども、凄くいいチームですよね。アメリカと日本が戦ったら、たぶん五分五分くらいじゃないでしょうか。アメリカではサッカーはメジャーではないと言いましたが、母親と子どもの間では、相当人気が高いみたいですけどもね。
そういう面で、セネガル、トルコ、アメリカがベスト8に残ったことについて特に違和感は無いです。むしろヨーロッパのチームが、コンディションの不具合とかで、敗退してしまったのが残念ですが、彼らのコンディションが良よければ、もっと凄い試合になったのではないかと思います。

逆に、アルゼンチンが優勝候補の1つと思っていたのに、スウェーデンとイングランドに決勝トーナメント進出を阻まれてしまいました。初戦は素晴らしいパフォーマンスに見えたのですが、その後全体的なテンションが上がっていかなかったのか、実力を発揮できなかったように感じます。チームづくりや戦術にも疑問を感じました。

ポルトガルについても、本来は当然、決勝トーナメントには残るチームだと思うのですけれども、やはり事前準備が非常にぬるかったと思うのです。彼らは事前キャンプをマカオでやっていたのですが、確かにマカオは昔ポルトガル領で、事前キャンプはやりやすかったと思うのですが、ワールドカップ開幕の前日に韓国入りしたんですね。ポルトガルからすれば、マカオも韓国も同じ様な地域だと考えていたんでしょうけど、私たちからすればかなり違いますよね。

そんなあたりも、事前準備、事前調査が不充分だったのではないかと思います。案の定、初戦でアメリカに思わぬ敗戦を喫してしまいました。それが、ポルトガルのつまずきの始まりだったと思います。

LADYWEB 王者フランスは、どうしちゃったのでしょうね。

KOH先生 最初のセネガルの試合が鍵だったと思うんです。0-1で負けたのですが、あれはどっちに転んでもわからなかったのではないでしょうか。あの試合については、フランスは不運だったと思います。ゴールポストにも幾つかのシュートが嫌われているし。ジダンがいなかったことは関係ないですよ。優勝したフランス大会の時だって、ジダンは2試合くらい出場停止で出ていないですからね。あの試合でもし勝ててたり、もしくは引き分けていれば、フランスの結果は全然違っていたと思います。

で、その次の試合でウルグアイと0-0で引き分けてしまいました。かなりフランスは頑張ったのですけれども勝ち切れなかったので、かなりショックだったのではないでしょうか。3戦めのデンマーク戦は、ジダンは出たけれども、なんかむしろ周りが「ジダン、なんとかしてよ」という感じで、ここ数年見てきたフランスチームには思えなかったですね。

ただ、最初から不安だったのは、最終ラインがかなり高齢化していたことです。相手のスピードについていけないと思うんです。で、オーバーラップもないから、好調時のチームのやり方を再現することはできませんでした。
それから、ボランチの位置に入るピレスが怪我で来ていないですよね。私はピレスが来なかったのは非常に残念でした。ビエラも1人で頑張っていましたけれども、ちょっと荷が重かったですよね。