自由にボールと戯れる、これがサッカー上達の秘訣

今回の相談者は、千葉県鎌ヶ谷市の松本俊子(仮名・32歳)さんです。

松本 「私には8歳になる息子がいるのですが、息子の通っている小学校は、とてもサッカーが盛んなんです。そこで、うちの息子もサッカークラブに入れようかと思っています。本人もサッカーに興味があるらしくて、とてもやりたがっているんです」

KOH先生 「それはよいことだと思います。息子さんご自身もやりたがっているのなら、ぜひやらせてみてはいかがですか」

松本 「ただ、サッカーは何歳くらいから始めたらよい、という基準みたいなものがあるのでしょうか? 小学校入学と同時にスタートしている子も、ずいぶんいるようですが…」

KOH先生 「サッカーは、何歳から始めたらよいということは、まったくないと思います。今からでも遅くはありませんし、逆に、小学校に入学してからでなければ、始めてはいけないということもないですから」

松本 「それなら安心して息子にサッカーを始めさせられますね。小学校に入学したら、すぐ始めないとダメなのかと心配していました」

KOH先生 「息子さんぐらいの歳でしたら、サッカーをするというよりは、まずは普段からボールと遊ぶ、ボールに慣れるということが大切ですね。サッカーは手が使えないスポーツです。つまりボールを触ってはいけないということなのですが、それ以外なら体のどこを使ってもよいわけです。ですから、足はもちろんのこと、足だけではなく全身を使って、ボールと遊んでみる。そうした遊びの中で、ボールタッチに慣れることがすごく大事なんです」

松本 「そうなんですか。知りませんでした」

KOH先生 「日本人もサッカーのボール扱いは上手なんですが、海外のサッカー選手のプレーにはかなわないところがあります。単純にボールを落とさないように突く、ボールリフティングというのですが、それなら日本人もきっと負けてないでしょう。でも試合の動きの中で見られる、やわらかく正確なボールタッチの技術は、海外の選手のほうが圧倒的に上手なんです」

松本 「サッカーを始めたら、まずはリフティングがたくさんできるようになることが大切なのかと思っていました。それよりもまず、ボールに慣れることと、体全体でボールを扱えることが必要なんですね」

KOH先生 「そうです。海外の選手はみんな、子供のころから体全体を使ってボールと遊んでいます。そうすることで、ボールを自由にコントロールできる感覚が自然と身についてくるんです。日本人の場合は、そういうことをやらないか、いきなりリフティングから始めてしまうことが多いんですね。またリフティングの回数だけにこだわってしまう…」

松本 「それは、サッカーが生活の一部みたいになっているような国と日本のような国の、文化の違いというか、環境の違いみたいなもの…」

KOH先生 「そういうことです。ですから息子さんには、ぜひボールと遊ぶところから始めさせてみてください。サッカーの練習という意識でやるのではなく、自由に遊んでみればよいと思います。例えが悪いですが、イヌやネコがボールと戯れるような感じで。でも本当にそのくらいの感覚で、サッカーボールとも遊ぶことが大切なんです」

松本 「それでは、うちの息子もサッカーボールで遊ばせてみます」

KOH先生 「小学生は4号球というボールを使うんですが、それが重いようでしたら、もっと小さくて軽いボールでもかまいません。とにかく上手にやらなくてもいいですから、ボールを突いてみたり、ドリブルをしてみたり、寝転がって触ってみるだけでもよいですから、ボールに親しんでみてください。足だけでなく、全身を使ってね」

松本 「わかりました。他にやっておくことはありますか?」

KOH先生 「ボールに慣れてきたらでよいのですが、たまには、テニスボールでやってみてみるとよいですね」

松本 「テニスボールでですか!?」

KOH先生 「そうです。これは小学生でも、中学生になってからでも、よい練習になりますよ。日本でそこそこの選手でも、テニスボールで上手にリフティングできる人は少ないくらいです。サッカー経験者もやってみると、自分がどれだけ下手かわかりますよ。当然テニスボールは小さいですから、正確に、しかも繊細に触れないと、思ったようにはまったく扱えません。やわらかいボールタッチの感覚をつかむには、とても効果的なんです」

松本 「サッカー上達には、いろいろな方法があるんですね」

KOH先生 「サッカーの神様ペレが、サッカーが上手になる秘訣は何かと聞かれた時は、かならずこう答えているんです。『サッカーを恋人だと思いなさい』と。
これは小さいお子さんには適切なアドバイスではないけれど、ボールと仲良くなって、サッカーを好きになればよいのだと思います。そのためにはまず、ボールといろいろ遊んでみる、これをやってみたらよいのではないでしょうか」

(2001.10.19)