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5月22日に新潟で行われたペルー戦、そして27日に東京で行われたUAE戦、ワールドカップ・アジア最終予選のアウェイ2連戦に向けたテストマッチに連敗するとは、誰も思わなかったでしょう。キリンカップでの2連敗は何と、ワールドカップ出場など夢のまた夢だった1992年以来のこととか。テストマッチなのだからそんなにセンシティブになる必要もないのですが、逆にテストマッチだからこその相手にあの内容では、6月3日のバーレーン戦・8日の北朝鮮戦への不安もつのろうというものです。 今回はワールドカップ予選最大のヤマ場に臨もうとしているA代表について不満をぶつけて、ストレス解消しておきましょうか。 ●試合が「つまらない」んですけど… 前回のこのコラムで予想したとおり期待は空しく終わり、ジーコ監督はいつもとまったく同じ顔ぶれしか選出しませんでした。「つまらない」というのはそれもありますが、今回の2連戦は試合自体が面白くないし、楽しくありません。見るべき所はまったくなく、見る必要もなかったという印象です。唯一、大黒将志(ガンバ大阪)をようやくスタメンで90分使いましたが、今のチームではせっかくスタメンしても大黒がかわいそうです。 端的に表現すれば、ピッチの中に日本選手の数が少なく感じられます。チームとしてのボール回しや選手間の動き・連動性において基本的な形(やり方)ができていないことがわかります。形にはまっていればよいということではありません。形はまる・はまらない以前に、まずはチームのベースができていないということです。まるでチームがドタバタしてJ1最下位レベルかJ2下位レベルに低迷しているチーム並み、といったら言い過ぎでしょうか(怒られそうですか?)。だから、攻撃の型がないという一部の記事も正しいけれども正しくない。攻撃どころかチーム全体のベースが不明確なのですから。 ●いつからこんな風になってしまったのか…? 昨年アジア・カップでも優勝したチームが何故そんなに不安定になってしまったのか、不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。が、実はジーコ監督就任以来、A代表はこんなモノだったんです。だから私たちは、「たかがキリンカップ」にわざわざ来日したペルーとUAE相手の2連敗に、驚きはありません。いつかはこうした形で表れると思い続けてきましたら。ただ、そのタイミングは非常に良くないですよね。何しろ、よりによってワールドカップ予選最大のヤマ場直前になって露呈されるのですから。今さら監督を替えるわけにはいきません。ジーコの「悪運」に頼るばかりです。なんなら、ジェフ千葉のオシムにチームに随行してくれるよう頼みますか? ジーコがめざしている(イメージしている)フットボールは「ポゼッション・サッカー」らしいとのことですが、仮にそうだとしたら、実に前近代的な「ポゼッション・サッカー」ということになります。日本代表チームにおけるある種の伝統は、中盤での組織的プレスとショートカウンターでした。現チームでは、それは既に完全に忘れ去られた感があります。仮に何とかワールドカップ出場権を獲得しても、日本のA代表チームは少なくとも何年も後退したことは間違いありません。 まあ、プロフェッショナルなコーチ(監督)ではないジーコでなくても、一人の監督に3年も4年も任せるのは得策でないのかもしれません。だいたい、何がしかの成果(結果)らしきものが就任2年後くらいに出て、その後はさらに一段階アップするどころか下降線をたどるのがいつものことのように思えます。 ●ワールドカップ予選は大丈夫なのか… まず「決定力が問題」などといわれていますが、このチームでは相手を崩してのゴールというのはほとんど期待できないと考えましょう。攻撃は「遅い」ですし、「確率と精度の低いサイドからのクロス」しかないですからね。ドリブラーもいないし、2列めから飛び出すシャドーストライカーもいませんし。もはや研究し尽くされた中村俊輔を中心としたセットプレーがマグレ当たりするかどうか、それに「すがる」ことにしましょう。(爆) また、キリンカップ2戦の失点シーンについて「一発のカウンターにやられた」などといわれていますが、実はそれはまったくの的外れであることが明白です。特にUAE戦についてはビデオを何度か見直してみても、相手中盤の攻撃の起点(ないしはボールホルダー)に対してプレスをかけず、日本の最終ラインはズルズル後退。それでも味方の人数が相手よりも多ければゴールを破られる(シュートまで持っていかれる)危険性は少なくなるでしょうが、相手と同数以下の場合はどうしたってあんな風にボールを回されてシュートを打たれる確率が一気に高くなるものです。ボールを保持して前を向いている側のほうが圧倒的に有利なのですから。ただし、これは現チームの致命的欠陥。昨年のアジア・カップでも実はそうだったのです。バーレーン戦・北朝鮮戦では、ハーフウェイラインを越えて自軍エリアへ入ったところで相手と数的に同数以下にならないことを90分間祈っていましょう。(爆) ジーコはUAE戦後の記者会見で「ワールドカップ出場を願うのなら、選手たちを励ましてやって欲しい」などと言ったとか。そんなこと、今さらジーコに言われる筋合いはありません。多分、そんなことしか言うことがなくなったのでしょうね。いちばん深刻なのはジーコの精神状態かもしれません。でも、高いギャラを取っているのですから最後に気力を振り絞って貰わなくては困りますよ、ジーコさん。 ●もはや達観(?)した心境… そんなわけで、もはや現A代表チームには何も期待しません。ピッチ上で展開されるパフォーマンスに見るべきものがなくても結構。まあ私なら、今からでもスペインから大久保嘉人(マジョルカ)を急遽呼び寄せますけどね。 ですが、ワールドカップ出場権は絶対に獲得してもらわなければ困ります。6月3日(4日の深夜)と8日はTVの前で静かに、開き直ってA代表の戦いを見つめることにしましょう。10年間のJリーグの実に様々な面における苦労・努力・苦心・蓄積の底力を信じて。そう、ワールドカップ予選は結局はその国のサッカー全体の底力が問われているのであり、日本サッカーのベースは紛れもなくJリーグなのですから。数え切れないほど多くの人々の努力と願いがJリーグの維持と歩みをもたらしてきたのであり、それこそが選手たち、そして私たち代表チームのバックボーンになってくれるはずです、必ず。それを淡々と信じるだけです。 ところで、A代表のことばかりに話題が集中していますが、6月10日からオランダでU-20ワールドユース選手権も開幕します。こちらも大熊監督のチームマネジメントが何とも理解不能ではあるのですが、地元オランダ・オーストラリア・ペナンと同組になったU-20日本代表のグループリーグ突破を期待しています。平山相太や森本貴幸あたりばかりにメディアの関心は集中しているようですが、私はもっともっと期待している選手が何人もいます。それに、アジアサッカー連盟に加入することが決定的なオーストラリアとの対戦は注目です。2010年のワールドカップのアジア予選では強敵となるオーストラリアのU-20なのですから、非常に関心をそそられます。皆さんも、そんな視点からもU-20ワールドユース選手権をご覧になって下さい。 次回は晴れ晴れとした気持ちでこのコラムが書けることを願いつつ。(2005/5/29) |