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マスコミにも「負ければ日本サッカー再び暗黒の時代へ…」などと煽られた10月13日のアウェイでのオマーン戦、日本は1−0でモノにし1試合を残して一次予選突破を決定しました。 まだ一次予選なのに何をそんなに慌ててるんだという向きもあったのですが、何しろ一次予選はグループ1位しか最終予選に進めないというレギュレーション。しかも、勝点で2チームが並んだ場合は、当該チーム同士の対戦成績(ホーム&アウェイ2試合での戦績およびトータルスコア)で勝ち抜けを決定する、というレギュレーションだったからです。 日本は2月のオマーンとのホームマッチで1−0というスコアでの勝ちでしたから、もしこの試合に2点差以上で負けるようなことがあるとオマーンにグループ1位を譲ることになるという状況。最終戦にオマーンが取りこぼしをすることは考えにくく、まさかの一次予選敗退が現実のものになってしまう状況だったのです。 もし0−1で負けた場合は当該チーム同士の対戦成績もスコアも全く同じになりますので、今度は総得失点差での勝負になりますが、0−1で負けるとオマーンに総得失点差で1ポイント劣ることになり、最終戦でオマーンを上回る大量得点をあげない限り、やはりまさかの一次予選敗退となってしまう…なんで一次予選からこんなことになっちゃったかというと、オマーンが全く取りこぼしせずに追いかけてきたばかりか、日本と全く遜色ない総得失点差をキープしてきたこともあります。要は2月のホームで1−0のスコアしか残せなかったことが問題を大きくしたわけです。 私の言うとおり(?)(Interviewコーナー「W杯アジア一次予選目前! 日本代表に不安材料はない!?」をご参照下さい)最低でもホームで2点差で勝っていれば、オマーンにアウェイとはいえ3点差で負けることは考えにくく、皆でこんなに日本から「念を送る」必要もなかったわけです。 オマーンには7月のアジア・カップでも大苦戦の末に1−0で勝利を収めました。オマーンは確かに急速に力をつけてきていますけれども、そうは言っても、客観的に自力を比較すれば本来やられるわけはなく、本当はここまでハラハラする必要はないはずの相手。まあとにかく、何が起こるかわからないアウェイマッチ。さすがに私もいささかキンチョーしてTVモニターの前に陣取りました。 今回は、そのオマーンのマスカットで行われたワールドカップ・アジア一次予選のオマーン戦の通信簿です(フォーメーションは3−5−2=トップ下を置いた3−4−1−2です)。 ゴールキーパー:川口能活(ノアシェラン) 5.5点 *実はそんなに危ないシュートはなく、アウェイでシャットアウトしたのですから及第点をあげたいところですが、1点リードした直後に相手フォワードと競り合ったボールをハンブルし、そのボールをシュートされたのは大減点。ゴールマウスに田中誠がちゃんとカバーに入っていてくれたから助かったものの、あれは冷や汗もの。所属クラブのデンマークでの川口の状況はほとんど知らないのですが、アジア・カップ後にトップリーグの公式戦ではプレーしていないと思われるので、実はこの試合で1つはポカするのではないかと心配してたのでした。その通りになるんですもん。 3バック右:田中誠(ジュビロ磐田) 6.5点 *試合序盤に相手右サイド(日本の左サイド)深い位置からの大きなクロスに対して走り込んで来た相手フォワードについていけず(ついていかず)すんでのところでスライディングで合わされそうになった(ミートできずにゴールキックになりましたが)シーンは、ヒヤリとしました。元々スピードがあるほうではないですからね。川口のポカを防いでくれたので、その分をプラスさせていただきます。あれは完全に1点失うところでしたから。 3バック中央:宮本恒靖(ガンバ大阪) 6.0点 *相手フォワードのスピード勝負になると勝ち目はないので少し心配していたのですが、カバーリングに徹した感じで、落ち着いていてミスもなかったように思えます。ただ、高さもある強力なセンターフォワードが相手の場合や、相手チームが極限のパワープレイを挑んできた場合は、正直心もとないです。 3バック左:中澤佑二(横浜Fマリノス) 7.0点 *この日も日本ゴール前に立ち塞がる「厚い壁」で、ヘッドでのクリアも強く安心して見ていられます。今の中澤の存在が、「偶然の失点」の可能性を未然に防いでくれていると言えるでしょう。 右ウイングバック:加地亮(FC東京) 6.0点 *意外にも(?)破綻なく、攻撃への意欲も見られた感じがします。相手が三都主のいる左サイドの裏を突こうとしていたのかもしれないので、そのお陰で(?)助かったかも。加地を応援している方には申し訳ないのですが、1ついいプレーをした後のホッと一安心したようなたたずまいが、私は好きではありません。 中盤底:福西崇史(ジュビロ磐田) 6.0点 *今回の試合で中盤の底は福西と小野で間違いないだろうと思っていたので、こりゃ相当中盤の攻防で苦労するかもしれないなと思っていたら案の定、前半は中盤の深いエリア(日本の最終ラインの前)の広大なスペース(最終ラインが慎重さのあまりに深く位置取りしすぎたこともあります)で相手にいいようにボールを拾われて、これが長く続くとさすがにヤバイと心配していたのですが、その後は相手チームも疲れてきたみたいで助かりました。後半には中盤のスペースを一人で埋めるポジショニングに、反撃に出ようとする相手チームをいなすようなボール回しを見せて、また1つ力量を見せてくれた気がします。ただ、簡単にボールを失いがちなのは何とかして欲しい。 中盤底:小野伸二(フェイエノールト) 5.5点 *風格ある存在感だったけれども、相手チームの試合序盤の攻勢に押されて真価は発揮できなかったかも。オランダでエレガントにプレーする小野からしてみれば、こんなクラスの相手に何で振り回されなきゃいけないんだ、こんなところでやられてたまるか、とでも言いたげな憮然とした表情(…に私には見えました)が印象的でした。 左ウイングバック:三都主アレサンドロ(浦和レッズ) 6.0点 *三都主の裏を狙ってこられるのはわかっていたはずで、それ故に随分自重した感じ。このクラスの相手なら、三都主でも守備を意識すれば何とか格好つくものですね。1点取った後は、相手のプレッシャーも減り伸び伸びとプレー。終盤には結構その存在が効いていたかも。 トップ下:中村俊輔(レッジーナ) 7.0点 *鈴木のゴールを生んだクロス…小野のセットしたフリーキックに瞬時にスペースに走りこみ、マークしてきた相手2人をフェイントで交わしての正確なクロスは見事。全体的にも、さすがにイタリアのセリエに2年もいればこれくらいはキープしてくれるのか、という感じ(もっとも、試合終盤には相手選手が密集しているところにドリブルで突っかけてボールを奪われるシーンもありましたけど)。随分成長した逞しくなったなどとTVではコメントされていましたが、もうちょっと早くこのレベルに達してくれてよかったのではないでしょうか。ともあれ、今の日本A代表のゴールチャンスはほとんどが俊輔絡みであるのは事実です。 フォワード:高原直泰(ハンブルガーSV) 5.0点 *ゴールチャンスは3回、しかも相手チームからのプレゼントのようなボールだったのに決められず。私は試合前から、きっと高原を使うだろけどスピードとシュート力のある玉田のほうがよいんだけど、と思っていましたが、それは試合中に確信に変わりました。楔(くさび)にもなってくれないし、味方にリターンするボールはよくないし、縦に抜けるスピードもないし、足下の技術はこの程度でしたか。 フォワード:鈴木隆行(鹿島アントラーズ) 7.0点 *前半はポストプレーも満足にできなかったのですが、値千金の決勝ゴールで高得点は当然。それも、俊輔のクロスに対して、うまく間をとって相手ディフェンダーの後ろから高い打点でズドン。ダテに2年間ベルギーで過ごしてないといったところでしょうか。鈴木は代表Aマッチで大事なゴールを毎年(1つ)決めてきました。2001年のコンフェデのカメルーン戦でのゴール(2ゴール)然り、2002年のワールドカップのベルギー戦でのゴール然り。この試合でも実は鈴木がポイントゲッターになるかもしれないと思っていたのですが、今年の7月に鹿島アントラーズに復帰してから結構ゴールを決めているので、「大事なところ(だけ)での鈴木のゴール(?)」の神通力は大丈夫かと心配もしていました。ジーコ監督が「フォワードの軸は鈴木」と発言したようで、その発言について少なからずのサッカーファンが「エ〜ッ!?」「ナンなんだよう〜!」ってな感じでひっくり返っていましたが、確かに献身的に楔(くさび)になってくれる存在であり、相手ゴール近くでファウルをゲットしてくれる存在でもあり(一時はいかにもファイル下さい、的な動きが目について気になっていましたが)、大事なゴールを1年に1つ決めてくれる存在でもあり、現在の日本A代表にとって大事なフォワードであることは間違いないでしょう。「フォワードの軸」なんて言葉を使うから、サッカーファンの「エ〜ッ!?」を生むんです。「軸」という言葉はあまりに重いタームですから。もっとも、ジーコ本人がポルトガル語でどういう表現を使ったのかわかりませんが。 途中出場:玉田圭司(柏レイソル) <採点なし> *ロスタイムに鈴木に替わって数分プレーしただけなので、採点なしとさせていただきます。 ジーコ監督 6.5点 *試合前日に「私をもっと信用して下さい」みたいなことをおっしゃったとか。申し訳ございませんが、信用はいまだにできません。今回は気候に慣れるためにも中東で合宿するのかと思っていたら、直前まで日本で合宿を行っていたおかげで台風遭遇でオマーン入りが遅れるなど、相変わらず「大丈夫かよ〜」と嘆かせてくれるアリガタイお方です。とは言え、とにかく大一番に最良の結果を残したのですから、今回はこれ以上の文句はあえて言いません。 試合内容 6.5点 *日本が先制すれば、そこでこの試合は終わる(この試合の意味で言えば、一次予選突破は間違いない)と思っていたので、前半はスコアレスで進め後半初めに先制するという理想的な展開になりました。先に失点することは避けたかったわけで、試合序盤の押されっぱなしの状況も、慎重な試合運び故の現象と考えたいと思います。しかし試合内容は、はっきり言って悪い! です。まるでアジア・カップの再現のようなチームパフォーマンス。中盤スカスカで組織的なプレスはなくなってしまい、これは日本のサッカーではありません。ある種マッタリと時間を使いながら勝ちをモノにするスキルや逞しさを身につけつつあるのかもしれませんが、それとこれとは別です。それでも6.5点をつけたのは、大一番にキッチリ(引き分けではなく)勝って見せてくれたから。でもこのままじゃあ、試合内容が7点以上になることは絶対ないでしょう。それに、このクラスの相手なら(贅沢な注文かもしれませんが)アウェイでも2−0のスコアで勝てるようになって欲しいです。まあ、高原が1ゴール決めていれば2−0になったのですが。 ![]() しかし、現地でこの試合の取材にあたっていた報道陣の方々の戦前の予想は、ほとんどが悲観的なものだったとか。どうしてそうなんですかね、プロの目というのは備わっていないのでしょうか。今や本当の「見る目」というのは、既存メディアの報道陣ではないのかもしれませんね。 さあ、来年はいよいよアジア最終予選です。最終予選は一次予選を勝ち抜いた8か国が4チームずつ2グループに分かれて戦います。各グループ2位まではワールドカップ出場権を獲得し、3位同士がプレーオフを行いその勝者が北中米・カリブ地区4位との最終プレーオフに臨みます。 とりあえずはグループ最下位にならなければ次のステージへの道を断たれるわけではないので、一次予選よりは「安全」なレギュレーションと言えるでしょう。ジーコ監督がオマーン戦の前に、アジアのトップクラスのチーム(国)がたった1度の敗戦でワールドカップへの道を閉ざされる一次予選のレギュレーションは見直したほうがよい…などと発言したようですが、それには私も賛成です。もっとも、アジア・サッカー連盟からしてみれば、こんなに各グループが一次予選から接戦になるとは思ってもいなかったでしょうから。それだけ、特に中東の新興国…オマーンをはじめ、バーレーン、ヨルダン、レバノンなどの急速な台東が目覚ましいということでしょう、アジア・カップでも見られたように。 最終予選は当然にして、どの試合も一次予選以上に厳しい戦いとなります。現在明らかになっている日程は、2月9日・3月26日・3月30日・6月4日・6月8日・8月17日のようです。グループ3位同士のプレーオフは9月3日・9月7日のようです。非常に短いインターバルでホーム&アウェイの移動が何度かありますし、日本は6月8日の試合の翌週からドイツで開催されるコンフェデレーションズ・カップにアジア・チャンピオンとして出場しなければなりません。非常にタイトなスケジュールとなります。 最終予選のグループ分けの発表は12月です。どんなチーム(国)と同じグループになるのか、もうそこからドキドキが始まります。 ではまた。(2004/10/17) |