このままでは危ない! ワールドカップ予選、シンガポール戦出場選手の通信簿

3月上旬に行われたアテネ・オリンピックのアジア最終予選では、U-23日本代表は苦しい戦いを勝ち抜いて、オリンピック出場権を獲得しました。スリリングな展開になりましたね(サッカーでは、ワールドカップが最高峰の舞台。オリンピックはU-23、つまり23歳以下でチームが構成されることは、もうよくご存じのとおりです)。

バーレーン、レバノン、UAEの中東3か国と争った最終予選は、グループ分けが決まった直後は「比較的楽なグループ」という声が多かったと思います。それだけに、思わぬ苦戦を強いられた印象を持つ方が、少なくないでしょう。でも、アジア最終予選は、どのカテゴリーでも(フル代表=ワールドカップ予選でも、U-20でも、U-17でも)そういうもの。いつも書くように、サッカーについてはどの国も絶対譲れないのです。FIFA(国際サッカー連盟)の発表するランキングの順位など、何の関係もありません。1つ間違えば、絶望の罠が待ち構えている…そんなシビアな、唯一結果こそが求められる戦いなのです。

さて、2006年のドイツ・ワールドカップに向けたアジア一次予選。2月18日にオマーンとのホームゲームを大苦戦の末に試合終了間際のゴールで1-0で振り切り、勝点3ポイントを得た日本A代表(フル代表)は、3月31日にアウェイに乗り込んでシンガポールと対戦しました。

過密スケジュールや赤道直下の暑い気候などのハンデはありますが、それを差し引いても、また、現在のA代表のチーム力(チーム完成度の低さ)を差し引いても、それでも3-0くらいでフィニッシュするだろうと思っていたのですが、ナンと、一度は同点に追いつかれて、ようやく2-1で振り切るという、予想外の展開となりました。
今回は、そのシンガポール戦出場選手たちの通信簿です。

ゴールキーパー:楢崎正剛(名古屋グランパスエイト) 5.0点
*失点したシーンの相手のシュートは止められないもので仕方ないのですが、ディフェンスラインとの連携もバタバタ。何しろ、この相手にゴールを与えてはいけないと思います。

右サイドバック:加地亮(FC東京) 5.5点
*前半は積極的な攻撃参加で存在感を示しましたが、決めるべきシュートは決めていただきたいです。失点したシーンは、軽いプレーで競り負けたので減点。

センターバック:坪井慶介(浦和レッズ) 5.5点
*特にミスもなかったけれども、特に良かったプレーもありません。どうも、いつもそういう感じ。それは安定感とは言わないと思います。

センターバック:宮本恒靖(ガンバ大阪) 5.0点
*シンガポールの積極性の前にバタバタしてしまって、見てる側はヒヤヒヤもの。ラインの押し上げもなく、よくない出来。クロスをヘッドで合わせそこなった場面もガッカリ。

左サイドバック:三都主アレサンドロ(浦和レッズ) 5.0点
*ドリブルにキレやスピードを求めてはいけないみたいですね。この程度なら、他にもっとチームに役立つ良い選手がいるはずです。サブメンバーでキープしておくというので、よいのでは?

ミッドフィルダー(2.5列目):稲本潤一(フルハム) 5.5点
*スタメンで使わなくてもよいから、稲本の攻撃力を生かす別の使い方を考えませんか。今の使い方は、実に中途半端に思えます。もったいない。

ミッドフィルダー(2.5列目):小野伸二(フェイエノールト) 6.0点
*中盤の4人の中では、唯一ハイレベルなプレーを見せてくれた気がします。後半は失速した感じがありますが、もう攻撃の起点は小野にしたほうがよいのでは?

ミッドフィルダー(2列目):中田英寿(ボローニャ) 5.0点
*効果的なプレーはほとんど見られず。際どいシュート1本だけ。

ミッドフィルダー(2列目):中村俊輔(レッジーナ) 4.0点
*度々ボールは失うし、シュートも決められず、セットプレーでも役に立たず。むしろ、起用するほうの判断を疑います。

フォワード:柳沢敦(サンプドリア) 4.5点
*動き出しの速さやスペースを作る動きが特長だったのですが、それも影を潜めてしまったのでしょうか。昨年秋のヨーロッパ遠征での2試合連続ゴールも、もはや遠い思い出。

フォワード:高原直泰(ハンブルガー) 5.5点
*先制ゴールはあげたけれども、幾つもの決定的なチャンスを逃す。

途中出場:藤田俊哉(ジュビロ磐田) 6.5点
*後半20分過ぎに中村に替わって出場(この日最初の選手交替)して、まさかのドローの危機を救ってくれました。2列目から飛び出す藤田のようなタイプは絶対必要。ヨーロッパ組4人の中盤だと、それがありません。

途中出場:鈴木隆行(ゾルダー) 6.0点
*後半20分過ぎに柳沢に替わって出場。確かに最前線を活性化させました。ただ、スーパーサブというほどの威力はないので、スタメンで行けるところまで行くという感じで使ったほうがよいのでは? 

途中出場:玉田圭司(柏レイソル) <採点なし>
*後半30分過ぎに高原に替わって出場。出場時間が短いため採点なし。本山(鹿島アントラーズ)をベンチメンバーから外したくらいだから、よほど好調なのかと思っていましたが、確かにキレのある動きを見せてくれました。今後も呼ぶんでしょうね?

ジーコ監督 3.5点
*今回も、選手交替は不的確でもなかったと思います。それ以前に、スタメン起用の判断が全く不明。とにかく、もう任せるべきではないというのが私の結論。

試合内容 <採点なし>
*ひとことで言って、酷い試合。よって採点なし。


試合序盤で、シンガポールの選手たちと比べて、日本の選手たちが“スター揃い”なのはよくわかりました。でも、まるでオールスター戦のような花試合に出場しているかのよう。はっきり言って、こんなパフォーマンスではドイツへ行くことはできません。むしろシンガポールの選手のほうが、日本に一泡吹かせてやろうと、気持ちの入ったプレーでした。監督を代えて、チームづくりをやり直すことが必要と断言します。

確かにまだ一次予選です。でも、一次予選はグループ1位だけが次のラウンド(最終予選)へ進出するのです。一次予選で1位にならなければ、そこで全てが終わりです。そうなってしまわない前に、できるだけの手は打たなくてはならない…もう、そういう段階に来ていると思いますが、いかがでしょうか。(2004.4.2)