9月10日のインターナショナルマッチデイに、日本のフル代表は新潟スタジアムでセネガルと対戦しました。この試合、セネガルはディウフがいなかったとはいえ、早めに来日して日本で合宿を行うなど準備万端。現在の日本代表の力量を判断し、なおかつワールドカップ・アジア予選を展望する上で、格好のテストマッチと楽しみにしていました。アジアでもサウジアラビア、イラン、クウェートをはじめとする中東の国々は、身体能力も高く、堅いディフェンスからの速攻を得意としていますから。 日本は、ドイツの高原直泰が召集に応じませんでしたが、イタリアから中田英寿、中村俊輔、柳沢敦、イングランドから稲本潤一を招集し、この一戦に臨みました。スタメンは、先月のナイジェリア戦から2トップが柳沢と大久保に替わっただけで、あとはまったく同じ。それにしても、イタリアのセリエAの開幕ゲームで途中出場ながらよいパフォーマンスを見せた柳沢を、またわざわざ召集する必要があったのでしょうか。柳沢にとって非常に重要な時期だけに、所属するサンプドリアでのポジションを確たるものにするためにも、本来ならば召集しないで所属チームの練習に専念させてやる配慮が欲しいところです。 結果は、立ち上がり6分にセットプレー(コーナーキック)からヘッドで決められたゴールをはねかえせず、0-1の敗戦となってしまいました。この失点の場面、昨年のワールドカップでのトルコ戦を思い出した方も多いと思います。ディフェンスラインの不用意な対応で相手にコーナーキックを与え、それをズドン。身体能力で劣る日本には、ゴール前のセットプレーからの力づくでのシュートには何ともしがたいところがあるのですが、その前にセットプレーを不用意に与えるほうが、なお問題でしょう。 これ以外は、日本の出来はよかったという声もあるようですが、皆さんはどう思われましたか? 私は、確かに日本の出来は悪くはなかったとは思います。もちろん、決定的な場面ですべてシュートミスはさすがに萎えますが、シンプルな意味での<パス回し(パスワーク)>自体は、決してよいリズムと言えるほどだったとも思いませんが、確かに悪い出来というわけではなかったでしょう。が、それだけに、逆に現在の日本のひ弱さが露呈されることになった、とも言えるのではないでしょうか。誰が見ても、日本のゴールが生まれそうな気配は感じられませんでした。先制したことによってセネガルがなお一層ディフェンス重視で試合を運んできたこともあります。とはいえ、まったく「崩し」ができなかったのですから。 唯一、崩せたのは、中田と大久保が右サイドから崩しにかかって、相手のクリアボールが中央の中田に渡り、中田が左のフリーの柳沢にパスした場面…が、柳沢がナンとシュートを空振りしてしまった、あのシーンです。ただこれも、相手のクリアミスを拾った形で、自分たちで崩したとは正確には言えないかもしれません。特に前半は、1本のパスでディフェンスラインの裏を突こうとする仕掛けが目につくばかりで、サイド攻撃を含めた連動性・流動性が感じられず、もったいない時間を費やしてしまったと思います。 セネガルは、日本チームを研究していました。ですから、日本のウリである中盤に対して、分厚いプレッシャーをかけてきました。とはいえ、決して厳しいプレッシャーというほどでもなさそうなのに、スペースを見出せない感じ。中田も中村俊輔も、遠藤も、なかなかスペースを作れず窮屈そうで、非常に苦労しているように見受けられました。選手同士の距離も空いてしまい、本来の日本の特長である、中盤での素早い細かいパス回しによって相手を振り回すことができませんでした。でも、こうした対応をされることは、これからも多いことは間違いありません。そこでもっと意表を突くイマジネーションあるプレーが出なければ、単に味方同士で<悪くないパス回し>をしているだけで、「引いた相手からゴールを奪えない」展開を、これからも見せられ続けてしまうことでしょう。 それから、やはり日本のフォワードには脅威を感じられない…柳沢も大久保も、ディフェンスラインの裏を突こうとして、またそれによって、セネガルの高い位置どりのディフェンスラインを下げさせて中盤にスペースを作ろうとして頑張っていたのはわかるのですが、いかんせん脅威を与えるような動きや威圧感ではないので、その努力はあまり効果があったとは思えません。一度ボールを持った時に、相手を警戒させるような挨拶がわりの一発(際どいシュートとか強烈なシュート)でも飛ばしておけは、状況も変わるのでしょうが。 9月10日(その前の7日も)はインターナショナルマッチデイ。ヨーロッパでは来年のヨーロッパ選手権(ポルトガルで開催)の予選が佳境を迎えており、各地で激しい出場権争いが繰り広げられました。そんな中でも、スペインのラウールにしても、イタリアのインザーギにしても、デンマークのトマソン、ルーマニアのムトゥ、ウクライナのシェフチェンコ等々、各国代表チームのフォワードは逞しい…ゴールを決めるべき人がきちんとゴールを奪ってくれる…羨ましいですね。 そうした中で、鹿島アントラーズの本山雅志を途中から起用したことは、注目すべき点と思います。本山は、巧みなドリブルも武器ですし、シュートのクオリティが高い選手です。フィジカルとコンディションの問題で代表には定着していませんが、1999年のU-20ワールドユース準優勝の時のメンバーで、本来はもっともっと中心的な存在になるべき選手でしょう。この試合でも、途中出場の小野伸二の縦パスをダイレクトでシュートし、際どくゴールマウスをそれる場面を作りました。本山は、本来は中盤、もしくはフォワードと中盤の間の位置を得意とする選手と思いますが、フォワードにゴールが生まれにくい状況の中で、本山をより前(相手ゴールに近いところ)で使い、そのシュート技術を生かそうとすることは、理にかなった判断と思います。 それにしても何しろため息が出るのは、シュートミスの連発です。先の柳沢の場面をはじめ、中田のボテボテのシュート、ペナリティエリアの中で味方にパスをしてしまった黒部の消極的なプレー、終盤の稲本のクロスバーを越えてしまったワントラップシュート等々、スタジアムに駆けつけた大観衆とTVで観戦している人々に対して、もうちょっとは責任感を持ってやって欲しい…それは言い過ぎでしょうか。 ところで、先日のナイジェリア戦でも感じたのですが、中田英寿のパフォーマンスについて、以前のような攻撃の軸という感じではなくなってきているような気がします。もちろん、相変わらず存在感はありますし、言うまでもなくチーム不可欠な選手です。ただ、中田自身のプレースタイルの変化もあるのか、黒子を演じる割合が増えている気がします。とはいえ、中田のネームは国際的に知られていますので、むしろ中田をオトリに他の選手が決定的なプレーをする、あるいは、中田以外の選手が攻撃の中心となる、そんな時期に来ているのかもしれません。そんなことも意識しながら、これからのフル代表の試合もご覧になって下さい。 さて、次のフル代表の国際Aマッチは、11月19日、大分スタジアムでのカメルーン戦です。その前には10月にヨーロッパ遠征も予定していると聞いています。12月には、今年5月に延期された東アジア選手権も日本で開催されます。来年2月スタートと噂されるワールドカップ予選に向けて、いよいよ残された時間は少なくなってきました。アジアゾーンとしては初めて2年越しで行われるワールドカップ予選は、いったいどんなスリルを味わうことになるのでしょうか。 (2003.9.18) |