日本代表の「チームのベース」は出来上がったのか?・・・8月の国際Aマッチ

8月20日に、日本のフル代表(A代表)は「スーパーイーグル」の異名をとるナイジェリアを迎えて、国立競技場で国際Aマッチを行いました。この日は、インターナショナルAマッチデイ。ドイツVSイタリア、イングランドVSクロアチア、アルゼンチンVSウルグアイ等々をはじめ、世界各地で数多くの国際Aマッチが行われました。

ジーコ監督は、「チームのベースを作り上げたい」ということで、イタリアから中田英寿、中村俊輔、柳沢、ドイツから高原、イングランドから稲本を召集し、GKに曽ヶ端、FW(2トップ)を高原と柳沢にした以外は、6月のコンフェデレーションズ・カップとまったく同じメンバーで臨みました。ナイジェリアは世界屈指の強豪とは言え、オコチャもカヌもいないばかりか、今回の来日メンバーからしてみると、3-0ないしは4-0で勝たなくてはならない相手。試合のほうは、高原の2ゴールと、遠藤保仁のゴールで、3-0で勝利をおさめました。

高原の1点めのゴールは、三都主からのボールを胸トラップして豪快に叩き込んだものでした。シュートは豪快でしたが、トラップは大きく、あんなトラップでは普通の国際試合ではシュートを打つことができなかったと思います。2点めの、中村俊輔の左からのクロスをヘディングで決めたゴールは、これは素晴らしいシュートでした。相手ゴールに向いながら曲がって戻ってくる感じのボールに対して、体重を後ろに戻しながらキッチリとゴール隅に決めた、非常に難しいシュートでした。1997年のワールドカップ・アジア最終予選でのイラン戦の、中田英寿のクロスを決めた城のヘッドを思い起こすようなゴールでした。遠藤保仁のゴールは、中盤の底から最前線に走り込んだ遠藤に対して、深い位置から稲本の振り向きざまのロングパスがピタリと届き、相手GKとの1対1を落ち着いてゴール隅にフィニッシュしたものでした。遠藤保仁は、中盤の底の選手ですが、コントロールシュートが非常に上手な選手です。また、8月2日のJリーグの試合でも、ハーフウェイライン手前でボールを受けてドリブルで突進して、相手チームのディフェンダー3人を交わしてGKの頭上をループシュートで破る、スーパーなゴールを見せています。もっと注目すべき選手です。

さて、この試合ですが、ナイジェリアのメンバーからして結果はほとんど参考になりません。重要なのは、ジーコの言う「チームのベース」が見られたのかどうかということです。結論的には、選手間での動きだし、フリーランニングも多くなり、かなり共通意識は高まってきたのかなあと思いました。その意味では、一定の手応えは感じられたと言えるでしょう。ですが、あくまで今回のナイジェリア相手という条件付きであって、スパーリングとしてはまあまあだった、という感じでしょうか。

それでも、いくつか目についた点があります。まず、最終ライン(ディフェンスライン)からボールを展開する場合、判で押したように稲本または遠藤保仁の中盤の底にボールを預けていたことです。真剣勝負の試合や、強豪相手の試合では、間違いなくそのボールを狙われて、危険なシーンを招くことになるでしょう。もう1つは、相手の出来も関係していたのかもしれませんが、攻撃が中央突破に偏っていたことです。サイド攻撃とのブレンド、コンビネーションを望みたいところです。

また、これは不満になりますが、ヨーロッパでの新シーズンを迎えている大事な時期に、どうして4人を召集したのでしょう。国際Aマッチの場合は、確かに所属クラブが難色を示しても、各国協会は召集権利を行使することができるのですが、もう少し配慮が必要です。特に柳沢は、初めての海外移籍でサンプドリアでポジション争いの最中という非常に重要なところ。ましてや、柳沢はここしばらく代表からは外れていて、特に選出する論拠もありません。

それから、この試合でも結局、後半途中に高原を大久保に替えただけで、選手交替はそれっきり。いくら「チームのベース」を固めたいからとはいえ、長旅で疲労の残る選手を休ませたり、ベンチの選手を試してみるなど、選手のコンディションを考慮し、また先を見通したベンチワークが当然です。ワールドカップ予選では、海外の選手を召集できない場合も考えられますし、バックアップメンバーを含めた選手層の厚みを築いておくことが非常に重要なのですが。

それから、中田英寿のこの試合でのパフォーマンスですが、ピッチ内でのコンダクターぶりはわかるのですが、本人のプレー自体は、ミスも目立ちましたしよくない出来だったように思われます。中村俊輔も日本でプレーする時は、時間が経過するにつれて、以前の短所であるボールの持ち過ぎ、次への判断スピードの遅さが顔をのぞかせてくるようです。2人とも、イタリアでの活躍を期待しているからこその不満なのですが。

さて、次の国際Aマッチは9月10日、新潟スタジアムでのセネガル戦です。それまでに、中田英寿、中村俊輔、柳沢、高原、稲本が海外でどんな活躍をしてくれるのか、またオランダで好スタートを切った藤田俊哉、フランスの廣山望、そして小野伸二の回復ぶりにも注目しておきたいと思います。もちろん、日本国内のJリーグでの選手のパフォーマンスも。

(2003.8.23)