「A代表強化月間」を振り返ってみましょう・・・1st half

皆さんご存じのように、フランスで開催されたコンフェデレーションズカップに出場した日本代表は、グループリーグで敗退し、決勝トーナメントに進むことができませんでした。合計5試合を戦うことができたのに3試合しか戦えなかったことが、結果以上に非常に残念です。

さて、5月末からコンフェデにかけての1か月は、J1リーグを長期中断させてまでの「A代表強化月間」となりました(J2リーグは通常どおり行われていますが)。コンフェデだけでなく、この1か月のA代表の試合を振り返ってみましょう。

日本VS韓国

まず、最初の試合は5月31日のホームでの韓国戦でした。元々、東アジア選手権が横浜で開催されることになっていたのですが、やむなく延期され、その代替試合として急遽決まったものです。4月16日にはアウェイで韓国戦を行っていますから、リマッチということになります。

日本のスタメンは、GKが楢崎、右サイドバックが名良橋、左サイドバックが服部、センターバックが秋田と森岡、中盤の底に稲本と中田浩二、中盤の前目に小笠原と三都主、ツートップが中山と鈴木という、従来の4-4-2システム。4月の韓国戦と比べると、帰国した稲本と鈴木が入ったことが違うだけ。まったく同じコンセプトで臨んだ形です。

試合のほうですが、正直言って私は、前半の途中から内容の乏しさに失望してしまっていました。結果は終盤に、オーバーラップした名良橋が前線へのパスをモロに相手に渡してしまい、そこからガラ空きの右サイドを突かれて折り返され、ゴール前に3人も詰められての失点で、0-1で敗れました。メディアでも取り上げられましたが、日本のシュートも数えるほどで、せっかく雨の中、国立競技場に駆けつけた満員の観客に対して、非常に不甲斐ない試合をしてしまったと言うべきでしょう。

内容と結果から言うのではなく、私は試合前から、この試合を行う意味があったのか非常に疑問を感じていました。確かに急遽決まった試合で悪天候にもかかわらずスタンドは満員。テレビの視聴率も相変わらず高い数字を記録しています。ですが、最近の国際Aマッチには、どこかしら興行優先のマッチメークの雰囲気が強く、問題を感じてしまいます。興行も重要ですが、あまりにそちらにプライオリティが置かれるのは、いかがなものでしょう。フットボールの世界は、シャレでは通用しないのですが。

それから、後半立ち上がりの、立て続けにモロに韓国選手にボールをプレゼントしてしまう稲本のパスミス連発は、「いったいどうしちゃったの?」というくらいズッコケてしまいました。ああいうプレーは勘弁してもらいたいところです。後半は韓国にほとんどボールを支配されたわけですが、そのリズムを生む大きな要因になったと思います。稲本の攻撃力、得点能力は大いに評価していますし、スケールの大きな国際的プレイヤーに成長してくれることを期待していますが、これでは中盤の底は任せられません。所属するイングランドのフルハムでも、同様の考え方をされているのではないでしょうか。

また、4月の試合では存在感を示した小笠原も、今回は韓国側に警戒されていたこともあってか、ほとんど効果的なプレーができませんでした。もっと創造性を発揮して欲しかったところです。それから、三都主の低調なパフォーマンスについては、もうこれは何とかしてよ、という感じ。もう1つ、ベテランで固定化された感のあるディフェンスラインについては、押し上げもビルドアップも見られず、本当にこの顔ぶれでこれからもやっていこうとしているのなら、それはやはり大きな疑問です。

というわけで、ホームの韓国戦は、近来にない低調な国際Aマッチとなってしまいました。

日本VSアルゼンチン

続いて行われたのは、6月9日の大阪・長居スタジアムでのアルゼンチン戦です。アルゼンチンとは、昨年11月に続いてのホームでの対戦となりますが、今回はいわゆるスター選手たちの多くが来日しておらず、アイマール、サビオラ、リケルメ、コロッチーニなど、若いタレント(彼らも充分国際的なスター選手ですが)を中心としたメンバーとの対戦になりました。とはいえ、むしろこのメンバーのほうが面白くて激しい試合になる予感がありました。また、日本も中田英寿が加わり、結構きわどい試合になるかと思ったのですが…。

日本のスタメンは、GKとディフェンスラインは韓国戦とまったく同じ、中盤の底には稲本、中田浩二、小笠原を並べる3ボランチのような形に見えました。そして中盤の前目に中田英寿を置き、中山と鈴木という韓国戦と同じツートップを起用しました。中田英寿と小笠原のコンビに期待していたのですが、前半に鮮やかな2ゴールを奪われてしまい、後半もコーナキックからの秋田のヘッドで1点を返したものの、さらに2ゴールを奪われて1-4の完敗でした。

試合自体は高視聴率にも見合う、かなり面白いものになったと思います。しかし、日本代表のパフォーマンスに関しては、こんなんではちょっとマズイんじゃない? というのが正直な感想でした。日本のフットボールは、独自のスタイルなり独特の文化を形成しつつあるところとはいえ、すでに伝統的に確立された(手に入れた)と言ってよい部分もあります。その1つが、中盤での組織的なプレスによるボール奪取、そのために欠かせないコンパクトなサッカーでしょう。1993年のラモスや三浦知良(カズ)が中心だった「ドーハの悲劇」のチームから昨年のワールドカップのチームまで、監督や代表メンバーが変わることがあっても脈々と受け継がれてきたのは、そうした日本スタイルであったはずです。ところが、今回のアルゼンチン戦を見て、その日本の良さ、長所が忘れられつつあるように感じられたのです。これは由々しき問題です。

アルゼンチン戦を見ていて、試合結果よりも私はそのことに失望を感じてしまいました。

日本VSパラグアイ

アルゼンチン戦からわずか中2日で、6月11日には今度はパラグアイを迎えての一戦が埼玉スタジアムで行われました。この試合、日本はスタメンをガラリと変えて臨んできました。GKは楢崎で変わりませんが、右サイドバックに浦和レッズの山田、左サイドバックに何と三都主を入れ、センターバックは宮本と、浦和レッズの坪井を起用しました。中盤の底には、福西とガンバ大阪の遠藤保仁、中盤の前目には中田英寿と(チームに合流してきた)中村俊輔、そして(これまた合流してきた)高原とセレッソ大阪の大久保のツートップという顔ぶれです。

三都主のサイドバック起用は噂では聞いていましたが、本当にやっちゃった(!)というわけです。でも、もちろん守備の不安は大きいですが、その分は遠藤がケアするでしょうし、最近のパフォーマンスでは前に突破する勢いを失っている感のある三都主にとっても、よい変化をもたらしてくれる可能性があるとも思われました。

また、ジーコ監督も結構よく見ているんだな(?)と少し感心したのは、遠藤保仁のスタメン起用です。ジーコ監督になって選抜され昨秋すでに途中出場で国際Aマッチデビューを果たしている遠藤保仁ですが、小野伸二や高原や稲本や小笠原らとともに、1999年のU-20ワールドユース選手権で準優勝を果たしたメンバーの1人です。柔らかいテクニックと、素晴らしいミドルシュートを持っている選手で、私ももっと活躍して欲しいと願っている選手の1人です。

試合のほうは、キックオフからフルスロットルで攻撃を仕掛ける日本ですが、結局90分間1点も奪うことができず、0-0のスコアレスドローに終わってしまいました。パラグアイは元々守備の堅いチーム。しかもアウェイでの試合なのですから、より守備を意識して臨んできます。その相手に対して、正直言って決定的なシーンをほとんど作ることができませんでした(大久保のオフサイドの判定となったヘディングシュートがありましたが)。

やはり国際試合では、相手ゴール前、特にペナルティエリア内では、非常に厳しいプレッシャーがかけられてきます。またパラグアイの選手たちは、実に体の入れ方、相手選手に対する体の使い方が上手い。日本のフォワードは、パラグアイのディフェンダーの体の寄せの前に、まったくと言っていいほどよい体勢でボールに触ることができません。高原でさえ。日本のフォワードが国際的に評価され脅威を与えるパフォーマンスを見せられるようになるには、まだまだ時間がかかりそうです。また、日本の選手は、相手ゴール前、ペナルティエリアの中、およびペナルティエリア近辺で前を向いて(=相手ゴールに向かって)ボールを持つシーンが少な過ぎます。これでは、たとえ優れたシュート力の持ち主でもゴールの枠にシュートを飛ばすことはできないでしょう。それを「決定力不足」という言葉で片づける向きが多いようですが、単純にそういうことでもないわけです。


パラグアイ戦で大幅にスターティングメンバーを入れ替えたジーコ・ジャパンですが、一部の選手を除いて単に紅白戦のサブメンバーチーム(控えチーム)をそのまま持って来ただけ、という噂もあります。そんな、いかにも急造のチームでフランスに乗り込んだ日本代表がコンフェデでどのようなパフォーマンスを見せてくれたのでしょうか…。
(2nd halfに続く)

(2003.6.30)