アウェイでの韓国戦を分析してみましょう

4月16日、日本代表(A代表)はソウルで韓国代表との一戦に臨みました。結果は、試合終了間際の永井雄一郎(浦和レッズ)の劇的なラッキーなゴールで勝利をおさめました。

確かに永井のゴールはラッキーでした。でも、ツキを呼び込むことができたのも、それなりに理由があります。ロスタイムも残りわずかという時に、福西(ジュビロ磐田)が中盤で体を張って相手ボールを奪い、奥(横浜F・マリノス)へ繋ぐ、奥はダイレクトで前線の永井へフィード、永井は韓国ディフェンダーに囲まれながらもドリブルで仕掛け、1人を交わしてさらに韓国ゴールに迫ろうとする姿勢が生んだゴールでした。

永井のことをご存じない方も多いと思いますが、実は、1997年のU-20ワールドユース選手権では柳沢や中村俊輔らとともにベスト8進出、1999年のU-20ワールドユース選手権では、小野や稲本や小笠原らとともに準優勝の実績を持っている選手です。私は、1997年のJリーグ開幕戦で、当時の日本代表のディフェンダーが揃っていた横浜マリノスのディフェンスを振り回した永井のドリブルに、スケールの大きい柔らかいドリブルができるFW(フォワード)タイプの選手が現れて来たと、たいへん注目させられた記憶があります。Jリーグでも、その才能を発揮してゴールを重ねて欲しいものです。

日本のA代表が韓国のA代表に勝ったのは1998年3月の横浜での一戦以来、アウェイでの勝利となると1997年11月のフランス・ワールドカップ・アジア最終予選以来ということになります。もっとも、1999年9月にシドニー・オリンピック・アジア最終予選前に行われたオリンピック代表によるホーム&アウェイでの2連戦では、東京で4点を奪って快勝、アウェイのソウルでも1-0で勝って連勝しているのですが、従来メディアはそのことをすっかり忘れているようですね。

さて、今回の一戦、皆さんはどのようにご覧になったでしょうか。戦前は海外でプレーする選手たちを召集せずにJリーグの選手だけで臨むこともあって、分が悪いと思っておられた方が多いと思います(韓国も日本のJリーグでプレーする選手を召集しただけで、やはりヨーロッパでプレーする選手は召集しませんでした)。でも私は、決して簡単にやられるとは思っていなかったですよ。もう少しJリーグの選手たちを信頼してあげましょう。(笑)日本のJリーグは、そんなにヤワではありません。

で、試合を見終わってからの印象はいかがでしょうか。終始押されっ放しだったとか、苦戦を強いられたといった記事やレポートが従来メディアを中心に目に付くようですが、それはどうでしょう。全般的なボール支配率では劣っていたと思いますし、確かに3つ4つ危ないシーンがありました。でも、相手が韓国で、アウェイでの戦いなのです。それくらいは当然でしょう。また、試合全体を通しても、決して押されっ放しというわけではなかったと思います。

日本のスタメンは、GKが楢崎(名古屋グランパスエイト)で、ディフェンスラインは先日のウルグアイ戦と同様、右サイドに名良橋(鹿島アントラーズ)、センターに秋田(鹿島アントラーズ)と森岡(清水エスパルス)、左サイドが服部(ジュビロ磐田)。中盤の底に中田浩二(鹿島アントラーズ)と福西、中盤の前目が小笠原(鹿島アントラーズ)と三都主(清水エスパルス)。2トップに中山(ジュビロ磐田)と山下(ベガルタ仙台)という、ジーコ監督のオーソドックスタイルである中盤をスクエア型にした4-4-2システムでした。

試合開始後、まずペースを掴んだのは日本のほうです。序盤から韓国がもっとガンガン日本のゴールに迫って来ると思っていた向きには拍子抜けだったかもしれませんが、それを許さないモノがあったと、日本チームを評価すべきでしょう。

そして、先に決定的なシーンを作り出したのは日本のほうです。オフサイドになりましたが、三都主から中山へのスルーパス、さらには小笠原の実に惜しいシュートと、際どいシーンが続きます。

が、前半の半ば、日本のディフェンスラインが密集したところをアクロバチックなプレーですり抜けられてGKの楢崎と1対1になられたシーンは、あれは決定的にやられた場面です。幸いにもシュートはゴールポストを叩きましたが。ここから徐々に韓国に流れが行ってしまいます。前半終了近くでは日本陣内に釘付けになるシーンもあり、ここは確かに危険な時間帯だったと言えるでしょう。このガマンの時間帯を切り抜け、後半を迎えます。

後半に入ると、日本は山下に替えて奥がin、三都主が2列目からFWの位置に上がり、中山とともに2トップのような形になります。これでバランスはどうかなあと少し心配もしましたし、どうして山下を下げるのか理解できませんでしたが。

後半の立ち上がりは韓国の攻勢が続きますが、危険な感じはしませんでした。おそらく選手たちも、ゴールを奪われる感じはしなかったのではないでしょうか。

日本も決定的なシーンを作ります。右サイドをオーバーラップした名良橋が奥とのワン・ツーで抜けマイナスで折り返し、ペナルティエリア内でまったくのフリーで中山が受けます。完全に韓国ディフェンスを崩した場面です。先制点ゲットと思ったのですが、中山はシュートを大きくフカしてしまいます。あれは正直いただけません。この後、中山に替わって永井がinするのですが、私には、この交替はジーコ監督の中山のシュートミスに対する怒りの表れではないかと思うのですが。

これ以外でも、中盤での組織的な守備で相手ボールを奪い、小笠原のドリブルからのスルーパスがあと一歩というシーンもありました。中盤での細かなボール回しから、左サイドをオーバーラップした服部のクロスが三都主に通ったシーンも、日本の見事な攻撃だったと思います。奥がペナルティエリア辺りでボールをキープしてタメを作り、中田浩二が追い越す形でゴールに迫るシーンもありました。

ともあれ、アウェイでの韓国戦で一応勝利という結果が得られたことに、まずはよしとすべきでしょう。

この試合で気がついた点をいくつか挙げてみましょう。
まずは小笠原です。期待どおり、前半のパフォーマンスは実に堂々として見るべきものがありました。後半は少し消えてしまった感がありましたが。Jリーグでも小笠原のプレーは際立っています。ぜひ、海外へ飛び出して、より高いレベルでプレーして欲しいと思うのですが。

気になったのは三都主です。前半では予想外の(?)守備面での貢献を見せてくれましたが、攻撃面では、その持ち味が発揮されませんでした。以前のような鋭さとスピードが不足しているように感じるのですが、いかがでしょうか。

いつも心配しているディフェンスラインは、全体的に安定していたと思います。ただ、左右のサイドにボールを回された場合、相手チームのサイドアタッカー(サイドに張っているウイングの選手)を割と自由にしてしまっているように感じました。観戦している側からすると、余計に左右に振られている印象が残ってしまうかもしれません。

また、押し込まれた印象になってしまうのも、最終ラインの押し上げがなく(それはジーコ監督の指示なのかもしれませんが)、中盤の底の中田浩二と福西の2人も自軍深く引いてしまった感じになり、相手チームに中盤でボールを拾われて回される時間帯があったことも関係していると思います。中盤の底からの大きな展開、ゲームメイクも、もっと見たい気がします。

アジアの国が相手ならば、この日のような戦い方でも凌ぐことができるかもしれませんが、世界の国々と対戦した時、どうでしょうか。この後に予定されている東アジア選手権(横浜で開催)や、アルゼンチン戦(大阪)、そしてフランスで開催されるコンフェデレーションズ・カップで、こうした点がどのように修正され進化していくのかに、注目したいと思います。

では、また。(2003.4.26)