今シーズンも心配…中田英寿のパルマ

8月13日(日本時間では14日の早朝)に、小野伸二と稲本潤一がヨーロッパ・カップ戦で見事なゴールをあげてくれました。小野は、中盤の底から上がっていってトップのファン・ホーイドンクとワン・ツーを決め、シュートコースを消す相手ディフェンダーを巻いて外側からカーブを描いてゴール隅に吸い込まれる、実にビューティフルなゴール。相手ゴールキーパーの、あのトルコのリュシュトゥのセーブを破る、ファンタスティックなプレーでした。

稲本は、スライディングタックルで相手からボールを奪い、そのまま重戦車ドリブルで突進、チャージに来た相手を吹っ飛ばして、これまた名ゴールキーパーであるパリュウカを破ってゴール隅に決めたファインゴール。2人とも本当に素晴らしいゴールでした。

イタリアのレッジーナに移籍した中村俊輔も、頑張ってくれているようです。もっとも、まだ公式戦でプレーしていないので何とも言えませんが、とにかく最初が肝心なので、期待して見守っていきたいと思います。公式戦になると、激しいボディコンタクトに見舞われます。技術的には充分通用することは間違いありませんから、早々にケガなどしないよう、気をつけて欲しいものです。

さて、イタリアで5シーズンめ、パルマでの2シーズンめを迎える中田英寿ですが、所属するパルマとともに、今シーズンも心配です。

パルマは先日、キャプテンのファビオ・カンナヴァーロをインテル・ミラノに放出(移籍)しました。パルマはここ数年、多くのビッグネームや実績のある選手を放出してきて、最後に残っていたのがイタリア代表のディフェンダーであるカンナヴァーロだったわけです。その「パルマの顔」も、とうとう去っていきました(パルマにはもう1人、カンナヴァーロというディフェンダーがいますが、彼はファビオ・カンナヴァーロの弟、パオロ・カンナヴァーロです)。

カンナヴァーロ移籍の噂は昨シーズンからずっとありましたが、なかなかまとまらず、しかしここにきての急な移籍決定という展開は、パルマとしては、どうしてもここで放出したかったと思われます。おそらく、パルマは大胆な若返りを図っているのだと思います。

しかし、チーム再編成の途上とはいえ、今シーズンのパルマの行方が、私はたいへん心配なのです。カンナヴァーロがいなくなったから心配なのではありません。昨シーズンでも見られた甘い守備網が、今シーズンのプレマッチを観ている限りでは、まったく改善されていないのです。

それから、昨シーズンと同様、全体的に選手の動き出しがまったく不足しているように思われます。これでは、選手同士の有機的なプレーの連続や、創造的なプレー、組織的なプレーは生まれるはずもありません。相手チームからしてみれば、たいへん守りやすいことでしょう。

今シーズンのパルマは、4−4−2システムで、中盤は「トップ下」を置かず、4人がフラットに並ぶシステムを採用するようです。中田は、サイドからのゲームメイクと中央に切れ込んでのシュートを期待されているようですが、相変わらず周りとフィットしていないように思われます。中田だけがよくないわけでもなく、周囲だけが悪いわけでもでもありません。どちらが良い・悪い以前に、双方のプレーイメージがマッチしない、相互のイメージを描き合えていないわけです。これでは、中田ならずとも、活躍は望めそうもありません。

昨シーズンのパルマは、最終的にはリーグ(セリエA)で10位でしたが、一時は降格争いに直面するピンチに見舞われました。正直言って、今シーズンも、その再現になりそうです。堅い守備から速攻を得意としていた、あのパルマはどっかへいってしまいました。どうしてパルマはこんなチームになっちゃったんでしょうか。

セリエAの開幕は9月15日。中田の幸運と奮闘を祈るばかりです。(2002.8.17)