悔いの残る敗戦…2006年、そして未来へ向かってのリスタート

2002ワールドカップKOREA/JAPANのRound 16で日本はトルコに0-1で敗れ、ベスト8進出はなりませんでした。

正直いって、日本のスターティングメンバーには少し驚きました。三都主を使ってくるかも、という気はしていたのですが、西澤を使うとは想像できませんでしたし、スタメンで三都主を使うなら、全体のバランスをどう取るのかについての明確な意図や指示があってしかるべきではなかったかと感じます。ロシア戦・チュニジア戦のベンチワークを賞賛しましたが、この試合については、その後の選手交替も含めて「?」です。

トルコをヨーロッパの「強豪国」と認識している人は少ないでしょう。しかし、クラブチームの活躍は近年目覚しいものがあり、「隠れ強豪」といったところでしょうか。そのトルコに、典型的な「アウェイでの戦い」…試合序盤にセットプレーからゴールを奪い、後はスペースをキッチリ消して守り切る…をやられてしまいました。逆に日本としては、「典型的なホームチームの負けかた」を演じさせられてしまったわけです。

もっと強引に攻めて欲しかった、という感想をお持ちのかたもいらっしゃると思いますが、トルコはさすがに、そういう隙を与えないで90分間逃げ切る熟練した力量を持っていました。こういう展開になると、世界の強豪国でも打開することはなかなか困難なのに、今の日本の場数・経験・力量では苦しくなります。それでも何とかゴールマウスをこじ開ける可能性を感じさせる機会を1度でも2度でも多く作り出すことのできる創造力・技量・力を、もっともっと磨いていって欲しいと思います。

もう1つ、激しい雨も日本には誤算だったと思います。
滑りやすいボールは、日本のベースである細かいパス回しに大なり小なり悪影響を及ぼします。また、日本の選手たちは全体的に、スリッピーなピッチ状態でのボールコントロール(特にファーストタッチ)の精度が相変わらずいま一歩。これでは、ワールドカップの試合では、ことごとく相手選手のチェックを受けてしまいます。ほんの何十センチの誤差と思うのですが、選手たちには課題意識を持って努力を積み重ねていって欲しいものです。

もっと上位に進出できる千載一遇のチャンスであったことは事実です。これから先、自国開催のワールドカップを戦える機会は、二度と訪れない確率が高いのですから。それだけに、あと1つでも勝ち上がって欲しかったというのが、本音です。

「フットボールの神様」は、まあそんなに一度に欲をかくなよ、ということなんでしょう。
一歩一歩着実に本当に力をつけていきなさい、ということなんでしょう。

それは、選手たちだけ、ではありません。日本サッカー協会も、Jリーグ関係者も、全国各地に無数に存在するクラブ関係者も、日本のサッカーに関わるすべての人々も、です。もちろん、サポーターも、私たちも。

私自身、決勝トーナメント進出を果たした後のイメージを、ほとんど持つことができていませんでした。何しろ未知の領域ですから、仕方がないといえば確かにそのとおりなのですが、まだまだ私たちも場数不足、経験不足なのです。私たちも、もっともっと理解と成熟を深めて、世界のフットボールシーンの中で少しずつ成長していくこと、少しずつ上っていくことが求められているのだと思います。そのことを、改めて感じさせられました。

私たちの日本代表チームの2002年ワールドカップは幕を下ろしました。でもすぐに、2006年のドイツ大会への準備に取り掛からなくてはありません。今回ベスト16に進めたのだから次はベスト8、ベスト4…というのは、たいへん甘い期待といわざるを得ません。ワールドカップは、そんな温いものではないことを、心にとめておきたいものです。

それに、2006年のドイツ大会は、もちろんアジア予選を突破しなくてはならないわけです。今回、ワールドカップ本大会でグループリーグを突破したからといって、アジア予選はまったく別物。実に厳しい戦いが待ち受けています。下手すれば、予選敗退もありえます。それくらい私たちも心して、2006年大会への歩みを始めようではありませんか。アジア予選は2005年に行われるはずですから、与えられる時間はわずか3年しかないのです。

リスタート。
世界のフットボールシーンで上り続けていくためには、リスタートの繰り返しです。でも、リセットでもありません。少しずつ少しずつ、足元は高くなっていっているのです。かといって、足元は急に高くなったりはしません。やはり、少しずつ、なのです。

今回のワールドカップは、日本でも大きな反響を呼んでいることは、たいへん喜ばしいことです。地上波TVの視聴率も、日本の試合ではないのに毎日30%を超え続けるという、脅威の数字をはじき出しています。大多数の人々が、こんなに盛り上がるとは想像もしていなかったと思います。ですが、これで日本のサッカー熱が継続的に高まっていくとは思いません。

サッカー文化が一般大衆社会に浸透してきたとも思いません。
そんなものは、一朝一夕に醸成されるものではないのですから。

ワールドカップをご覧になって、少しでもサッカーに関心や魅力をお感じになったかたは、ぜひスタジアムに足を運んでみて欲しいと思います。ワールドカップとJリーグの試合では落差があり過ぎて話にならないんじゃないか、という向きもあるようですが、それでも、スタジアムでは間違いなく、新しい発見や驚きや楽しさを、見出していただけるものと思います。

ワールドカップが終わったらJリーグは衰退することを期待(?)する向きもあるようですが、その期待どおりにはいかないでしょう。なぜなら、Jリーグの各クラブは、それぞれの地域で確実に根を張ってきているからです。その根は、容易には枯れたりしません。

私たちの日本代表チームと日本サッカーの前途が明るいものであることを、心から願いたいと思います。そして、これからも、私たちの日本代表チームと日本サッカーの成長を、見守り続けたいと思います。

最後に、2002ワールドカップKOREA/JAPANに残された試合は、あと8試合。6月30日のファイナルまで、残された試合を存分に楽しみたいと思います。(2002.6.20)