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ワールドカップの話題が世間でも持ち切りです。地上波TVの視聴率も、連日たいへんなことになっています(私はTV観戦する時はスカパーですが)。日本戦以外は視聴率が心配、などといっていた各TV局は、思いがけない嬉しい状況でしょう。 開幕前は、ワールドカップそのものの話題には触れようともせず、ワールドカップ観戦に訪れた外国人はフーリガンと思え、といわんばかりの煽りに執着していた地上波TVも、ようやくワールドクラスの選手たちの素晴らしいプレーの紹介に重心がかかったようで、私の気持ちも少しだけ、おさまっています。 また、普段はサッカーに見向きもしない方々までも、「世界のサッカーは面白い」「サッカーってこんなに興奮するものだったんだ」と、口々にそんな感想をもらしてくれています。なぜこれまで毛嫌いしてサッカーをまったく見ようとしなかったのか理解できませんが、でも、そういう感想を持ってくれただけでも、ワールドカップを開催した意義があったかもしれません。 サッカーは得点シーンが少ないからつまらない、という意見や、得点をした時にあんなに大袈裟に喜ばなくてもいいのではないか、という意見も時々耳にしますが、得点をあげることの難しさと、その面白さと、そこからくる痺れにも似た感覚、そして相手ゴールマウスをこじ開けて得点をもぎ取った時の抑えようのない歓喜を、わかっていただけつつあるのではないかと思います。 さて、日本代表はご存じのとおり、ベルギーと2-2のドロー、勝ち点1ポイント獲得で初戦を終えました。勝ち点3ポイントを奪いたかったところですが、最低限の成果は残したということで、まずはよしとしましょう。 もうよくおわかりのように、ワールドカップは、通常の親善試合や、「キリンカップ」や、昨年の「コンフェデレーションズ・カップ」とは、全然全然違う大会です。どんな相手であっても、なかなか勝たせてはくれません。どのチームも実にしぶとい、そして最後の最後まで鋭いツメを繰り出してきます。まったく洒落の効かない、超・ガチンコの世界です。百戦錬磨のベルギーに対して日本の選手たちは果敢に挑み、よく頑張ってくれたと思います。 そして、ベルギーの監督や選手から、地球の裏側でこんな素晴らしいサポーターがいたのか、と驚きと称賛の声があがったという日本のサポーターの力も、忘れてはなりません。「12番目の選手」としての日本のサポーターの懸命の声援を思う時、私はいつも熱いものがこみ上げてきます。 さて、次の日本の試合は9日のロシア戦です。ベルギー戦は勝ち点1ポイント獲得でまずはよし、と書きましたが、同時に2ポイント失ったことも事実です。チュニジアを降して幸先よく勝ち点3ポイントを獲得したロシアとの一戦は、ベルギー戦以上に、厳しい、重要な戦いになります。 フットボールは、贔屓のチームが勝つことや、贔屓の選手が活躍することだけで、私たちに多くのモノを与えてくれるものではありません。時には奈落の底に突き落とされたり、大きな失望を味わわされたり、そういう体験もしながら、否応なくその魅力と魔力に引き寄せられていく、そんなものだと思います。フットボールは、ガチンコの戦いであればあるほど、世界中の人々に実に多くのモノを与え、残していきます。一度きちんと眼を向けたならば、その人はフットボールに心を揺さぶられずにはいられなくなる、そんなものだと思います。 最後にチケット問題ですが、私はJAWOC(ワールドカップ日本組織委員会)に最大限の誠意ある行動を望みたいと思っています。確かに、スタジアム空席部分のチケットはJAWOCの管轄外のことでしょう。ですが、ワールドカップ開催準備を通じて、観戦者に対してできる限りのサービスを提供するのだという姿勢が、JAWOCには元々希薄であったと感じています。チケットの売れ残りによってJAWOCも損害を被るというのであればなおさら、あたかも他人事のような、自らも被害者であるかのような、そんな官僚的な態度は捨てて、チケット問題を、これまでのお粗末な運営に対するせめてもの挽回の機会としていただきたいものです。(2002.6.5) |