日本には専用サッカースタジアムが少ないと、よく言われます。よく調べてみるとけっしてそうでもないのですが、Jリーグの試合が行われる(Jリーグの規格を満たした)スタジアムや、ワールドカップの試合が行われる(ワールドカップの規格を満たした)スタジアムには、サッカー専用のほうが少ないのは事実です。
*ワールドカップで使われる日本の10のスタジアムでサッカー専用なのは、カシマスタジアム、埼玉スタジアム、神戸ウイングスタジアムの3つだけです。札幌ドームは、サッカーの開催時にはドーム外から天然芝のピッチをスライドさせるという仕組みになっていて、陸上トラックがない(陸上競技場ではない)という点では、「擬似専用」に加えてもよいかもしれません。それでも、残る6つのスタジアムは、本来は陸上競技場なのです。
ただし、イタリアのセリエAを見ていても、海外でも結構、陸上トラックを併設したスタジアムが少なくありません。だから、日本だけが、陸上トラック付きが多い、というわけでもないのです。 ただ、日本の陸上トラック付きスタジアムは、諸外国と比較して、ピッチ(芝生)の面積(広さ)が狭いことが、私は残念でなりません。どういう意味かと言いますと、ワールドカップの規格では、ゴールラインからゴールラインまでの距離は105メートル、タッチラインからタッチラインまでの距離は68メートルとされていますが、日本のスタジアムでは、ゴールラインの外、およびタッチラインの外で、すぐにピッチがなくなってしまうのが大半なのです。国際試合開催の規格上、それでも一応問題はないのですが、いくらなんでも選手たちのプレーに影響します(第一、危険ですよね)ので、ピッチの外にグリーンベルト(人工芝)を敷いています。 その点、諸外国のスタジアムは、タッチラインの外にも充分にピッチがあります。タッチラインの外は、陸上トラックまでピッチがあるのが一般的のようです。また、ゴールラインの外にも、充分ピッチがあります。
この写真は、3月21日の日本代表VSウクライナ代表の国際Aマッチが行われた大阪・長居スタジアムなのですが、ご覧のように、グリーンベルトをピッチの周囲に敷いています。グリーンベルトの下は、もちろん芝生はありません。このような対処方法は、数々のビッグマッチが行われてきた東京・国立霞ヶ丘競技場をはじめ、日本全国で一般的なものです
一方、名誉あるワールドカップのファイナル(決勝戦)会場となる横浜国際スタジアムでは、タッチラインの外には充分ピッチが確保されていたのですが(それでも、諸外国のように陸上トラックまでは長くありませんが)、ゴールラインの外は、すぐにピッチがなくなってしまっていました。GK(ゴールキーパー)がジャンプいちばん、相手シュートを間一髪セーブをして、ゴールの中に落ちた時、下にピッチがなくて(グリーンベルトは敷いてありますが。)悶絶している光景を、何度も目にしています。そこで、ワールドカップ開催を控えて、この写真のように、ゴールライン外のピッチも長く整備されました。これでようやく国際標準、全世界に対して恥ずかしくないピッチとなったわけです。(タッチラインの外は、従前のままのようですが。) ただ、ワールドカップが終了すると、横浜国際スタジアムのピッチも、元の長さ(広さ)に戻してしまうと聞いています。日本の陸連の規格がそのような規格になっているので、それに準拠しないことには、第1種陸上競技大会が開催できないからです。 世界陸上選手権などで諸外国の陸上競技場を見ていると、日本の陸連の規格が国際標準ではないように、私たちには思えます。サッカー専用スタジアムを作ればいいじゃないか、と言われればそれまでなのですが、アビスパ福岡のホームである博多の森球技場、ベガルタ仙台のホームである仙台スタジアム、サガン鳥栖のホームである鳥栖スタジアム(佐賀県)、愛知県の豊田スタジアムなど、屋根付きの素晴らしいサッカー専用スタジアムも段々増えてきています。ですが、全国各地の新しいスタジアムが国体開催に合わせて整備されることが多い日本では、陸上競技場であっても、諸外国と同様に、国際標準のピッチの広さを持つようになって欲しいというのが、私たちの願いなのです。(2002.4.12)
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