天皇杯、高校サッカー…そしてワールドカップ予選が決着する2009年のスタート

年末から元日にかけて、クラブワールドカップから元日ファイナルの天皇杯まで、なんだかガンバ大阪の試合ばっかし観てきた気がするぞ。

それそれで非常に興味深く観ることができたけどね。日本サッカーの水準や立ち位置をあらためて考えたりする良い機会、材料となった。

ガンバ大阪


アジアチャンピオンズリーグで、浦和レッズに続いてJリーグ勢による2連覇はOK〜!! だったな。

それもアウェイで全勝なんだよね。
そりゃ大したもんだわ


そしてクラブワールドカップでは、マンチェスター・ユナイテッドと対戦。実に派手な点の奪い合いで3-5で敗れたが、ガンバの戦いに賞賛の声は多かった。もちろん皆気づいているようにマンUは(ハードスケジュールと次の試合を見通しての)流し気味のプレーだったので、地力の差は明白だった。前半でセットプレーから2点をリードしたのだから、後半は流し気味になるのは当然。

それでもガンバが1点を奪って1-2とした直後の3連続ゴールの時は本気(マジ)だったかね。

しかしまぁ、いくら本気出したからといっても、わずか4分か5分で3ゴール…あ、という間に5-1だからな〜。

でもね、そこが日本チームの、クラブチームでも代表チームでも、日本のチームのモロさなんだと思う。

ガンバとマンUにあんな風に3連続ゴールも奪われるような差はないはずで、1点を返した後わずか30秒くらいでゴール(マンUの3点め)を奪われてからボーッとしているうちに翻弄されてしまった。マンUの4点め(3連続ゴールの2ゴールめ)は、最終ラインの前、中盤の守備のサボリだし、平静だったらあんなやられ方はしない。マンUの5点め(3連続ゴールの3ゴールめ)は、ルーニーにガンバのセンターバックの中澤聡太が場数と顔(格)の違いでぶっちぎられた。

もっと言えば、前半のセットプレーからの2ゴールだって、国際標準、世界規格の戦いに慣れていない場数不足がモロに出たようなもの。

1点めはガンバのセンターバックの山口にのしかかられるようにビディッチ(セルビア・モンテネグロ代表)にヘッドを叩き込まれたのだが、Jリーグの審判だったらファウルの判定かもしれない。2ゴールめも、明神を手で突き飛ばしてヘッドを叩きつけたクリスティアーノ・ロナウドは、Jリーグの審判だったらファウルだろうな。

だからね、選手たちの場数だけでなく、通常の試合(国内リーグやカップ戦)のクラスというか環境の問題なんだよな、レフェリーも含めて。

国際標準、世界規格の戦場では、ゴール前の攻防では余程のことがなければファウルにはならないってことだ。

そういう普段の環境の違いがあるならば、永遠にJリーグやJリーグのチームはヨーロッパの一流チームに追いつけないことになる…そこをどう埋めていくか、アジアの魑魅魍魎(ちみもうりょう)としたレベルに付き合わず足を引っ張られずに、ヨーロッパや南米のチームと真剣勝負にできるだけ近い戦いの場での経験を積み上げていくしかないだろう。

それでも、5-1もの大差になったのにガンバが2点を奪い返したのは見事だったよ。ガンバのゴールはどれもファインゴールだった。

ま、前半にマンUに先制される前に、遠藤のパスを播戸が決めていればね、マンUのゴールキーパーのファンデルサールに余裕で止められちゃって。あれも格の違いだよな。

でもね、マンU監督のファーガソンに、社交辞令を含んでいるであろうとはいえ、公式プレス会見で「日本サッカーの進化を目の当たりにして感銘を受けた」と言ってもらえたのは喜ぼうじゃないか。

社交辞令を含んでいたとしても、そこまでの表現はなかなか聞けるものじゃない。

あと感じたのは、日本人選手のもう一歩のレベルアップだよな。

遠藤と、ブラジル人のルーカスの2人だけだったように感じる、マンUのプレスの中でも余裕を持って、自分の間合いと技術を普段どおりに出せていたのは(ルーカスはミスも多かったが、ボールを受けた時はまあまあだったと思うよ。シドニー・オリンピックのブラジル代表選手だもんな)。他の選手はバタバタしていたよね。

でもそれは決定的に技術やスキルが劣っているほどではなく、場数と経験という要素の占める割合が大部分に思われた。

いかにそういう「場」の経験が重要か…ということだよね。

それから、ルーニーにしてもクリスティアーノ・ロナウドにしても「手」の使い方が非常に上手い(あるいはズッコイ)ことに気づかれた人も多いだろう。

フットボールは手でボールを扱ってはいけないが、手を使ったことによってファウルをとられるが、ファウルをとられない範囲での「手の使い方」だ。

フットボールは格闘技なのであって、直接相手選手と接触もするし激しくボディコンタクトもする。その中でいかに巧く「手」を使うのか。その辺の加減というか使い方も場数の問題が大きいだろう。

たとえば日本のクラブチームがUEFA(ヨーロッパサッカー連盟)の大会なり、ヨーロッパのどこかの国のリーグ戦でもまれれば、相当、急速にヴァージョンアップすると思うのだ。代表チームだって、日本代表がワールドカップにしばらく出られないことを(商業的な意味も含めて)ガマンできるなら、ワールドカップのヨーロッパ予選とか、ヨーロッパ選手権とかに出場して「場」に慣れれば、ワールドカップでグループリーグ突破レベルではなくさらに上位への進出も期待できるようになるかもしれない。

いっそのこと、AFC(アジアサッカー連盟)からUEFAに転籍するかい??

そのほうが私は面白いけどね。

ガンバは、クラブワールドカップが終わってからもさらに3試合を戦って(うち2試合は延長戦)天皇杯で優勝した。ほんと、お疲れさま、だよ。

これでガンバは2008年に61試合もこなしたことになるわけで、そりゃ凄いわ。

クラブワールドカップでの経験が天皇杯全日本選手権でのJリーグのチームとの対戦でどう生きるのか見ていたが、うん、やっぱり何か違ったものがあったよね。

まず、名古屋グランパスとのクオーターファイナルでは、コンディションが良いほうのはずのグランパスを寄せ付けないパスワークで翻弄していたし(後半はさすがに燃料切れだったが)、セミファイナルの横浜F・マリノス戦では、マリノスにボールを支配されながらもゴールを許さず、PK戦に持ち込まれずに延長戦終盤にキッチリ決勝ゴールを奪った。そしてファイナルでも柏レイソルの戦術をどっしりと受け止め、しっかりとした明解な選手交替で、そして選手たちもそれにキッチリ応える働きで延長戦終盤に(レイソルの最終ラインもよく体を張り、そして守備ブロックを堅持して奮戦していたが、それをこじ開けて)決勝ゴールを奪った。

内容はさすがにクタクタな感じだったが、それでも(それはそれとして)実に見応えのある試合で素晴らしい戦いぶりだった。

ガンバは、シーズン途中でブラジル人のバレーが中東に引き抜かれ、前線でのポイントゲッターを失ったことと、また、それまでもポゼッションサッカーでありパスワークで相手を崩していく戦い方ではあったものの、それでもバレーにとりあえず預けてバレーが強引にシュート(決まらないことが多かったが)ということでリズムをつかむというか、チームが一息つくというか、そういう部分もあった。

そのバレーが急にいなくなってチームバランスを立て直すのに苦労した時期もあった(何試合も勝てなかった)が、逆にバレーがいなくなったことで、ルーカス以外は日本人選手という選手構成によって、さらにポゼッション能力・スキルとパスワークが磨けていった感じだね。

それが結実して、ACLセミファイナルでレッズをアウェイで倒した試合、オーストラリアのアデレードを相手に圧倒的なフットボールの質としての差を見せつけたACLファイナルの2試合、そしてクラブワールドカップ、ヘロヘロになりながらの天皇杯優勝へと繋がった感じだ。

そうそう、ガンバがクラブワールドカップでマンUと戦った1年前、浦和レッズがクラブワールドカップでACミランと戦ったよね。

スコアは0-1だったけど、内容はほとんど通用していない感じで、先日のガンバの戦いぶりのようにはレッズは称賛されなかった。

その試合の後、ACミランのガットゥーゾ(今シーズンはケガでリタイア中)が興味深いコメントをしていた。

いわく、レッズは「サンプドリアと同じレベルくらいか…」みたいな内容だったと伝えられている。

サンプドリアはACミランと同じくイタリアのセリエAのチーム。かつてはリーグ優勝経験もカップ戦優勝経験もあるし、名選手も多数輩出している古豪だ。そのサンプドリアだが、数シーズンをセリエB(2部)で過ごしたが復帰してきて、2006-2007シーズンは9位、2007-2008シーズン(昨シーズン)は6位(ちなみに今シーズンは現在10位前後をウロウロ)といったところで、そのガットゥーゾのコメントについて日本のサッカーファンの間で一時期議論が盛り上がっていたけれども、遅ればせながら私の感想を言わせてもらうと、

「サンプドリアと同じレベルくらい」だなんて、結構高い評価だと思うゾ。


高校サッカー


鹿島アントラーズ入団の決まっている鹿児島城西高校の大迫勇也にほとんど焦点を当てた感じのTV中継(いつものスターシステム発動?)で、それなりに注目も集めたようだが、ファイナルの広島皆実高校との試合はもちろん、セミファイナルの前橋育英高校との試合でも、大迫勇也をはじめとする数人のキープレイヤーが明確な鹿児島城西が、ピッチにいる選手全員が平準的にレベルやクオリティを保持していて組織的なプレーができる広島皆実や前橋育英に対して不利なことは、試合前から気づいていた人も少なくなかったのではないかな?

確かにセミファイナルの前橋育英高校戦は、5-3という派手な逆転勝ちをモノにした鹿児島城西だけれども、3-1とした後の前橋育英高校のミスがなければ、そのまま終わったか、3-2か4-2で前橋育英高校が勝っていたのではないかな、と思う。

また、今大会は結構ゴールの多い試合が多かったけれども、全体的に守備面で脆いチーム(というか、ゆるゆるの守備のチーム)が多いんじゃないか、と思いながら大会を観ていた。

もう一方で、広島皆実や前橋育英のように全員が一定のレベルにあり、組織的なチームパフォーマンスを見せるチームでも、それが持続しないのが見受けられたし、ペース配分というと表現が相応しくないけれども、持続しなくなってからの立て直しというか、そういうのが難しそうだった。

ま、ともあれ、広島皆実や前橋育英の戦いぶりというのは、ある意味で日本的なフットボールの体現でもあるし、それには、選手全員が一定以上のクオリティをクリアしていなくてはダメだということ。

それもまた、日本サッカーの現状と課題をよく物語っているような気がする。

高校サッカーも、その果たしてきて役割と意義は大きいけれども、夏のインターハイ(高校総体)、そしてU-18高円宮杯、そして高校サッカーが「3冠」と言われるが、U-18高円宮杯には高校とクラブチームを一緒くたにした(きわめて意義の大きい)「プリンスリーグ」が2003年から開催されるようになった状況の中で、「冬の選手権」(=高校サッカー)も高校だけによるトーナメントではなく、例えば高円宮杯上位のクラブチームも参加させるような展開(改革)が欲しい。

サッカーは高校だけ(高校メインで)で行われているのでなく、クラブチームという存在が大きいのだから。

高校サッカーで優勝した広島皆実には、サンフレッチェ広島の下部組織(ジュニアユース)で育った選手が数多くいた。Jリーグのクラブの下部組織であるクラブユースチーム、Jリーグのクラブではないけれどもクラブチーム、そして高校と、それらが一体となってユース世代の選手たちを育てていく環境をもっと充実させる必要があろう。

あ、それから高校サッカーについてはTV中継について文句がある。

地元の高校の試合しか見られないのはおかしいし、中継するなら全試合見られるようにして欲しい。民放地上波TVではスポンサーがつかないとかいうのなら、CSへサブラインセンスでもして欲しい。

観たいのに見られない試合ばっかしじゃないか。

それから、試合会場だよ。セミファイナル以前の試合について、横浜の三ッ沢でもやり〜、東京の駒沢や西が丘でもやり〜、千葉の市原でもやり〜、川崎の等々力でもやり〜、というのじゃなく、もっと集中開催して欲しい。

今日は三ッ沢、明日は市原、なんて行けねえよ。
もっと観客が観に行きやすい運営をしろや。



日本代表(フル代表)について


2月11日にワールドカップ・アジア最終予選のオーストラリア戦が横浜国際で行われるが、その前に「アジアカップ」の最終予選が2試合入っている。1月20日は熊本でイエメン戦、1月28日はアウェイでバーレーン戦だ。選手たちには実に御苦労さんなことだが、ちょうど日本サッカーはオフの期間なので、2月のワールドカップ予選の試合はいつもパフォーマンスが悪いので、今年は申し訳ないけれども、「アジアカップ」最終予選をこなすことでコンディションと感を取り戻してくれたら。。。

ヨーロッパや南米のナショナルチーム(代表チーム)を呼んでも興行にはなるがテストマッチにはならないので、逆に「アジアカップ」最終予選が入っていてよかったかもしれない。

なんで日本が「アジアカップ」の予選を戦っているかというと、2007年大会で3位以内なら予選免除だったのに4位になってしまったから。ただ、その前は優勝チームも予選免除はしないことになったのに、今度は3位までを予選免除にしたり、他の大会での優勝チームに出場権を与えたり(←つまり予選免除です)相変わらずAFC(アジアサッカー連盟)のやることは意味不明だ。

ぶっちゃけ言わせてもらうと、「アジアカップ」の予選なんか、普段起用しない選手たちだけで臨んでいいくらいだ。

いや、ホントに。それでもしアジアカップ本大会の出場権を逃しても構わん。本当に構わん。

だから1月20日のイエメン戦も1月28日のバーレーン戦も、フレッシュな顔ぶれのスタメンが見たい。

そういう風に豪快にやることが選手層の底上げになる、選手たちのモチベーションや経験になるのだよ。いつもいつも同じようなメンバーでの日本代表チームは見たくないよ。思い切って新しい顔ぶれの選手でいこうぜ。


最後にもう1つ


横浜F・マリノスの狩野健太だが、2008年は狩野がようやくモノになってきた年として記憶されるかもしれない。いかにもマリノスが期待している風であった狩野だが(2005年加入)デビュー時からなよっとした感じと、(申し訳ないが)一見チャラチャラした雰囲気で、技術やテクニックは素晴らしいんだけど消えて行く選手かよ〜なんて思ったこともあったが、2008年シーズン序盤はケガで出遅れて途中から戦列に加わるとすぐに中心的存在となった。一時的な確変(かくへん)?とも思ったりしたが、どうしてどうして、スタミナもあるし、労を惜しまず動くし、年末までしっかり存在感を維持していたのだ。

その狩野が2009年はどこまでやるか、さらに伸びるか、秘かな注目であります。

ゴールも奪えるゲームメイカーとしてそんな選手がいるのに、マリノスは本当に中村俊輔を戻すのか? ポジションや役割がかぶるので、せっかくの新しい伸び盛りの選手の芽を摘むことになるぞ。そういう各クラブの経営手腕も拝見しましょ。

(2009/1/17)