勝点3獲得はOKだが、3点リードで試合を終わらせられないとは…

9月6日、日本時間7日早朝、遂にワールドカップ・アジア最終予選がスタートしました。日本の初戦はアウェイでのバーレーン戦。

普通にやれば負けるはずはない相手だが、ある種“国と国との戦争”であるワールドカップ予選では何が起こるかわからない、だから1つずつ勝点を積み上げていくしかないわけで。

キックオフは早朝の3:30だったけれど、眠い目をこすりながらTVの前に陣取った方も多いでしょう。

日本は、ゴールキーパーは楢崎。センターバックが中澤と闘莉王、サイドバックは右に内田、左に阿部勇樹を起用。左サイドの守備意識を高めた布陣か。中盤はセンター(底)に遠藤と長谷部、前目に中村俊輔と松井。2トップは玉田と田中達也。長谷部を中盤センターに使うのは中盤守備が心配なので稲本を起用するかと思ったが、3次予選終盤の顔ぶれを重視したのだろうか(稲本はベンチにも入れていなかった)。

玉田がゴールをもたらしてくれるとは思えないが、田中達也の裏に抜けるスピードと遠目からでも打てるシュート力は期待を持たせた。

立ち上がりから日本は前から積極的なプレスをかけ、前半のうちに中村俊輔のフリーキックと遠藤のペナルティキック(PK)で2点のアヘッドに成功。

またセットプレーかよ、という声もわかるが、そもそもセットプレーを獲得するまでのプロセスがなければセットプレーからのゴールも生まれないわけで、

そういう点では、前半の日本チームの積極的なパフォーマンスがバーレーンを追い詰めたといえるだろうな。

それと、何と言っても中村俊輔と遠藤保仁という2人の「職人芸」だ。こればっかりは素晴らしいとしか言いようがない。

この2人が代表からいなくなったらどうするんだろう?

問題は後半だ、2点リードしているのだから、ある意味でマッタリ時計を進めていけばよい。

それはまぁ何とかできていなくもなかったのだが、シュートチャンスに打たない悪癖がまた顔を出してくる。

そうすると長谷部が決定的なチャンスにゴールポストにぶつけてしまったように、得点機を逃したりもする。それでも残り5分くらいで途中出場の中村憲剛が追加点をあげて3-0。時間がかかり過ぎたが、これで安全圏だ。

ところがその後、3分くらいの間に2点を失ってしまう。リードはわずか1点に。ま、さすがに緊張はしたがヤバイとまでは思わなかった。もちろん、思わずTVの真ん前ににじり寄ったがね。

なんでこういうことが起きたか、考えてみよう。「サッカーは怖いものだ」とみんな言うと思っていたが、試合直後のTVインタビューで岡田監督が早速言ってしまった。それは違うだろう、というのが私の意見だ。起こるべくして起こったことだということ。

原因は長谷部を今野に交替したことにある。

長谷部は守備に不安(特にファウルがとられやすいことへの不安)があって、先の述べたようにこの試合でスタメンで起用するのはどうかと思っていた。

この試合ではよかったとまでは言わないが、試合が進み周りが疲れてきた中で、長谷部の身体の強さというものが効果をもたらしていた。

そうだなぁ…かつてU-20代表やフル代表で、いちばん年齢が若い中田英寿が身体の強さで試合の中で頼りになっていっていた(周囲も苦しい時に中田英寿にボールを預けていた)ように…(そういう意味でも、中田英寿は決定的な仕事をするタイプというより労働者型だったわけだ)。

だから長谷部は交替すべきではないと思ったのに、今野に替えてしまった。確かに今野は中盤センターでのディフェンスには定評があるし、私も評価の高い選手。でもゲームじゃないんだから、そういう方程式は当てはまらないんだよ。

今野は交替でピッチに入ってから試合に入れていなかった。そういうことってあるんです。

まず1点めの失点のシーン。

日本の中盤左サイドがら逆サイドに向かって低く速いクロスボールが入ってきた…これを今野が見送ってしまう! それが相手選手にわたり、右サイドバックの内田のポジショニング(妙に中央に絞っていた)と、ボールが相手選手に渡った瞬間に、一瞬何したいの? というような妙な動き出しも大きな問題だったが、内田も暑さと疲労で思考・判断がマヒしてきていたのだろう。

だから内田よりも明らかに今野だ。

ゴールを許した直後、中澤あたりが物凄い形相でにらめつけていたと思うが。これと全く似たような失点が最近もあったことに気づかれだろうか。北京オリンピックの「なでしこJAPAN」の初戦のニュージーランド戦(どうしても勝っておきたかったのに誤算となった試合)で先制ゴールを許したシーン。あれも同じように逆サイドからのグラウンダーのクロスを中央にいた選手が何を思ったか見送ってしまった。

その後も今野は表情そのものがさえない。こういう選手起用をしてはいけない。

岡田は、まるでベースボールのクローザーのようなつもりで今野を投入したのだろう。日本人らしいセンスだ。

2失点め。これはもちろん闘莉王のオウンゴールというマヌケな失点だが3つのチョンボが重なった。

まず、後方からのロングボールを蹴った選手にプレッシャーに行かなかった。誰かはわからない。日本の左サイドだったから中村憲剛だったかもしれない。そのアバウトなロングボールに闘莉王が頭を当ててしまう。キーパーへのバックパスのつもりだったのかもしれないが、バックパスはゴールマウスを外すのが鉄則だ(闘莉王はどうも中東での酷暑の中での試合では思考回路が支障をきたすみたいだ。3次予選のオマーン戦でもそうだった)。そして楢崎、声を出したのかどうかわからないが、何を慌てて飛び出そうとしたのか。

しかし、1失点めがなければこんな失点はなかった。

もっと言えば、3点めの追加点がなければ、2-0で終わったかもしれない。3-0になって確かに緩んだ。いや、実は私も。それはイカン。

選手やベンチだけでなく、見守っている私たちも含めてタイムアップまで揺るんじゃイカン。反省。

玉田。やっぱしシュートはほとんど打てずに(後半の1本だけか?)途中交替でベンチに下がった。それでも非常に貢献はしていた。

何で貢献していたかというとファウルゲッターとして。

かつては鈴木隆行(現在はアメリカでプレー)というファウルゲッターが貢献してくれたが、現在は玉田がその役割か? 後半、相手ペナルティエリア内で初めて勝負に出てシュートを放ったが、力なくゴールマウスを左から右へ流れて行った。あれはシュートにカウントされないかもしれん。玉田のもっとも輝いていたのは2004年。あの頃は、スピードとキレのあるドリブルで相手ゴール前に迫ってシュートも安定感があった。

今回バーレーンと対戦するので2004年のアジアカップでのバーレーン戦のビデオが繰り返し流されていたが、あれはいい時の玉田です。

私もよく記憶している印象深い試合がある。Jリーグの横浜F・マリノスと柏レイソルの試合。当時は玉田は柏レイソルに所属。秋雨の激しく降る横浜国際で、押されっぱなしの試合展開の中で玉田が相手ディフェンダーに囲まれながら一人で見事なゴールをあげ、レイソルが1-0でアウェイマッチをモノにした。

あの時思ったもんだ…玉田、エースだね、って。もう見る影もないけどね。

さて、そういうわけでなんとも後味の悪い結末となったが、アウェイで勝点3を獲得したことはもちろん大きいことなので、ま、よいスタートを切ったということにしておこう。

ただ、多くの人も思い起こしていないだろうか、1997年9月7日のフランス・ワールドカップの最終予選の初戦を。

あの日、ウズベキスタンをホームに迎えた日本は、それまでの決定力不足がウソのように前半に4点を奪う大量リード。それなのに、後半は攻撃的に出てきた(得失点差を少しでも挽回しておくために当然の策)ウズベキスタンと打ち合いをしてしまい、連続失点、追加点、また失点、という展開で後半は「2-3」(試合は6-3の勝利)という不安を残す試合となったのだった。

あの試合も、いかにも選手の集中力の問題や試合運びの未熟さと、(さらにゴールを奪おうとしたのか?)余計な選手交替をしてしまったりしたベンチワークの稚拙さも露呈した。

そして、その後の最終予選ではほんとに苦労して、実にタイヘンな思いの末にワールドカップ出場権を獲得したのだった。今回の最終予選はあのような展開にならないことを願いたい。

そういえば、あの時も同じグループだった韓国がホームで3-0で初戦勝利を収めた。今回、日本と同じグループではカタールVSウズベキスタンが行われ、カタールが3-0で勝利したようだ。

ダイジェスト映像を見た限りでは、カタールの3ゴールはいずれもパワフル。

ウズベキスタンは前評判は高かったのだが、どうしたのだろう。

カタールについては、日本はまだカタールに1勝もしていないと時々指摘されるが、確かにそうです。だが、アジアカップなどで対戦した時にはグループリーグで日本が勝たなくてもよい試合で対戦することが多く、それで引き分けている。だから大丈夫、と思っていたが、ウズベキスタン戦のダイジェスト映像から感じるに、しっかりとした準備をして臨まなくてはならないだろうな。

日本と同じグループのもう1つ、オーストラリアはこの日は試合がなく、オランダに遠征してオランダ代表とテストマッチを行ったらしい。しかも、1点先制されたけれども2-1で引っくり返して勝っちゃったとか。

最終予選の試合は9月10日にも行われるが、日本はこの日は試合がない
(そもそも5か国でのリーグ戦というのはヘンだ。試合をしないチームが出てしまう)

日本の次の試合は10月15日、ホームでのウズベキスタン戦だ。その直前の10月9日に、日本とは別のグループのUAEを招いてテストマッチを行うことが決定している。だがUAEは最終予選前にバーレーンとホームでテストマッチを行い2-3で負け、最終予選初戦でもホームで北朝鮮に1-2で負けている。

そんなのを相手にテストマッチかよー、というのが正直なところだ。

(アジア最終予選のA・B両グループをチャンポンにした日程表)

http://www.fuoriclasse2.com/cgi-bin/vp.cgi?wq_as2&2010

(2008/9/7)